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僕の卵焼き


卵焼きを初めて焼いてみた僕は十二歳で
いつもいつも甘いのだったのだから僕も同じに砂糖をたっぷりと入れ
しょっぱい味もしていたのだからモチロン醤油も入れ
お腹空いた兄ちゃん、はよなんか作れとチビなくせに偉そうな妹の為にフライパンで、初めてのフライパンで危なっかしげに。

甘甘しくていい匂いが狭い台所いっぱいに。出来上がったのは焦げ焦げの黄色い物体。フライパンにくっついてジョリジョリ。
お母さんのいつものは艶々で目の前にあるのはパサパサで。油を引くという行為を知る由もない僕だったのだ。お腹空いたよ兄ちゃん、はよ食べさせろと妹。仕方がないのでジョリジョリを引っ剥がし白いお皿に乗せハイ出来たよと。

うわー、美味しい!甘くってすっごく美味しい!
はよおかわり、もっと作れと食いしん坊の妹。
おやと驚き、そうなのか美味しいのかと台所へ。油を引くという行為を再び知る由もない僕だったのだから同じに黄色いジョリジョリを。

その後、美味しいお母さんと同じ艶々のを作れるようになろうと僕は妹の為に料理を一生懸命に、、、
のようになるはずもなく今年で五十六歳。


そろそろ作れるようになろうかな。
そんで、嫁と子供達を驚かそうかな。
あの美味しい艶っぽいの。
大人も子供もひとくちで幸福の味の。









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