集英社2024.03.19「共同親権は海外で一般的」は本当なのか?「親の権利」から「子の利益」へ移行する、親権にまつわる世界の潮流2024年3月14日から国会で審議入りした「共同親権」導入を含む民法改正案。議論の大前提となる日本と海外の制度の実態を外務省資料に基づいて指摘する。犬飼淳と外務省HPハーグ条約関連資料1 親権・監護権に関する各締約国の法令について概説PDF魚拓




「親の権利」から「子の利益」へと進む世界の潮流

では、なぜ「共同親権は海外で一般的」という誤った認識が日本で広まったのか。大きな原因は、離婚後に両親が共有する概念の範囲が欧米では時代とともに「親の権利」から「子の利益」へと進化したことにある。概念の進化を4段階で整理すると以下のようになる。

親権(Parental Authority):日本で共有の議論対象となっている概念に相当。この概念にとどまる日本は欧米から見れば遅れている



監護(Joint Custody):親の「権利」ではなく、子供を守る意味合いを強化した概念



責任(Shared Parental Responsibility):「監護」では立場が強い親が立場が弱い子を守る考え方のため、親の「責任」の意味合いを強化した概念。あくまでも権利ではなく、責任をシェアする考え方。



養育(Parenting):「責任」よりもさらに中立的な概念

写真/shutterstock

要するに、日本はいまだに「親の権利」を強く意識した「親権」の共有を議論しているのだ。一方、欧米を始めとする諸外国では「子の利益」を尊重する方向で共有すべき概念が「監護」→「責任」→「養育」へと進化している。「共同親権は海外で一般的」という認識は、こうした潮流の変化を見落としたことによる誤解といえる。(*詳細は筆者のtheLetter「共同親権・面会交流に潜むミスリード」(2024年3月3日) 参照)

文/犬飼淳

教養・カルチャー 2024.03.19

「共同親権は海外で一般的」は本当なのか?「親の権利」から「子の利益」へ移行する、親権にまつわる世界の潮流

2024年3月14日から国会で審議入りした「共同親権」導入を含む民法改正案。議論の大前提となる日本と海外の制度の実態を外務省資料に基づいて指摘する。



犬飼淳

https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/ha/page22_001672.html

(interdicted)である若しくは収監されている又は不在者であるといった例外的な場
合には、他方が単独で親権を行使する〔親権を有する〕。)
[Repealed and reenacted by Acts 2015, No. 260, §1, eff. Jan. 1, 2016]



Art. 233. Parents may delegate all or a part of their parental authority to others as provided
by law.
Parents delegate a part of their parental authority to teachers and others to whom they entrust
their child for his education, insofar as may be necessary.
第 233 条:父母は、その親権の一部または全部を法の規定に従い他の者に委嘱する
ことができる。
父母は、子の教育を委ねるため、必要な限りで、教師その他の者に親権の一部を委
嘱することができる。
[Repealed and reenacted by Acts 2015, No. 260, §1, eff. Jan. 1, 2016]



Art. 234. Parental authority continues during marriage, unless modified by a judgment
awarding custody to one parent, by a joint custody implementation order, or by a judgment
awarding custody to a third person.
An ascendant, other than a parent, who is awarded custody has parental authority. The
authority of a third person who is awarded custody, other than an ascendant, is governed by
the rules of tutorship, unless modified by court order.
第 234 条:子の監護に関する権利を父母の 1 人に与える判決、共同監護の履行命令
又は第三者に監護に関する権利を与える判決によらない限り、父母の婚姻中その親
権は継続する。
[Repealed and reenacted by Acts 2015, No. 260, §1, eff. Jan. 1, 2016]



SECTION 6 - TERMINATION OF PARENTAL AUTHORITY
第 6 款「親権の終了」
第 235 条は親権の終
了について規定してい
る。

Art. 235. Parental authority terminates upon the child’s attaining the age of majority, upon
the child’s emancipation, or upon termination of the marriage of the parents of the child.
第 235 条:子の成人年齢到達、成年擬制(emancipation)、又は子の父母の婚姻の解
消により父母の親権は終了する。
[Repealed and reenacted by Acts 2015, No. 260, §1, eff. Jan. 1, 2016]



CHAPTER 6 - OBLIGATIONS OF CHILDREN AND PARENTS AND OTHER ASCENDANTS
第 6 款「(尊属)親族、親および子の義務」
Art. 236. A child regardless of age owes honor and respect to his father and mother.
第 236 条:子は、その年齢を問わず、自分の父母を敬い(honor)、尊敬(respect)し
なければならない。

000545933.pdf
【出典:ルイジアナ民法典 *日本語訳は外務省「親権・監護権に関するルイジアナ州(米国)法令の調査報告書 条文解説」(P17) を引用】


外務省HPのハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)ハーグ条約関連資料の1 親権・監護権に関する各締約国の法令について調査対象19か国の資料は量が多いため、このnoteでは概説のみ扱います。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/ha/page22_001672.html