能登半島地震の1次避難所、集約や閉鎖で最大時の3割に…専門家「無理に急げば避難者に負担」読売新聞 / 2024年4月30日 23時30分.能登の仮設住宅、1割未着工 続く避難、なお4606人共同通信 / 2024年5月1日 10時14分.社説:能登地震3カ月 復旧へ国がてこ入れを京都新聞 / 2024年4月3日 16時5分等PDF魚拓



能登半島地震の被災地で1次避難所の集約や閉鎖が進んでいる。30日で126か所となり、最大時の3割まで減った。地域の復興や生活再建に向け、自治体が統合したことなどが大きい。一方、1次避難所には今も約2400人が身を寄せる。閉鎖で移動を強いられ、環境の変化に悩まされる高齢者も出ており、細やかな支援が求められている。(赤沢由梨佳、橋爪悦子)

 石川県が定期的に公表している避難所数を集計したところ、最大15市町で計404か所あった1次避難所は、8市町の計126か所に減った。3万人を超えた避難者は2420人(2次避難除く)となった。

 内閣府の指針では、避難所運営について「ライフラインの復旧を目安に解消に努める」としており、避難所となった公共施設は早めに機能を戻す必要がある。集約が進むと、物資配布や保健師巡回もしやすくなるという利点もある。

 3月上旬に200か所を下回った1次避難所は、4月にかけて集約が本格化した。七尾市では最大時の約2割に。避難所ごとに職員5人を配置していたが、生活再建業務の準備のため、早くから集約に取り組んできた。

 職員が避難者に避難所を出る条件を聞き、仮設住宅の案内などを支援。年度末には数日で18か所から半数にした。市は「人手をかけるべき所を整理できた。避難者自身も必要な申請を把握し、再建の一歩につながっている」と効果を語る。

移動が負担、体調不良も



 一方、避難所の移動を強いられた被災者の負担は軽くない。

 能登町では新学期に合わせて体育館などの学校施設を優先的に閉鎖・集約した。女性(79)は上下水道が復旧していない自宅に戻れず、3か月いた小学校から集約先の観光交流施設に夫(80)と移った。小学校の3倍近くの避難者がおり、いびきなどが気になって寝不足が続く。「日中気分が悪くなることもある。どのぐらいで仮設住宅に入れるだろうか」と話す。

珠洲 ( すず ) 市では作業員の宿泊所設置のため、自主避難所だった旧温泉施設が閉鎖。男性(68)は顔見知りもいて、精神的に助けられたという。閉鎖後、避難所に行かず、被災した自宅に戻った。「余震が来たらつぶれる恐怖はあるが、自宅の方が落ち着く」と語る。

 避難所閉鎖は進むが、全てがなくなるには時間がかかる。東日本大震災で10か月、熊本地震で7か月を要した。石川県は保健師による健康チェックの強化など市町と連携していく考えで、災害関連死の防止などにつなげるという。

 兵庫県立大の阪本真由美教授(被災者支援論)は「閉鎖を無理に急ぐのは避難者の負担になる。自治体は当面、運営を民間に任せるなどして、職員不足を補う工夫が求められる。退去に向け、個別の悩みや次の生活の相談に乗るなどきめ細かく支援するべきだ」と指摘する。

 ◆1次避難所=災害時、一時的に避難する施設。災害対策基本法に基づき、自治体が事前に定めた体育館などの「指定避難所」のほか、被災者らが自宅近くの公民館などに設けた「自主避難所」がある。生活環境が整ったホテルなどは「2次避難所」となる。

能登半島地震の1次避難所、集約や閉鎖で最大時の3割に…専門家「無理に急げば避難者に負担」

読売新聞 / 2024年4月30日 23時30分



 石川県で死者245人の被害を出した能登半島地震は1日、発生から4カ月となった。県が建設する仮設住宅は4月末時点で3368戸が完成。県は8月中に約6400戸の完成を目指すが、うち1割強は着工していない。4月30日時点で4606人が学校や、被災地から離れたホテルなどでの避難を余儀なくされている。

 被災地では大型連休中に観光施設が再開し、なりわい再建に向けた動きも出てきた。七尾市の道の駅「能登食祭市場」は水道管が破損するなどし、全面復旧には時間がかかる見込みだが、大型連休限定で営業。

 津波に襲われた能登町・四方山地区の「能登塩業組合」は4月下旬、伝統の揚げ浜式による塩作りを再開した。

 石川県によると4月30日時点の住宅被害は計7万8568棟に上る。このうち全壊8142棟、半壊1万5650棟。仮設住宅は、自宅が全壊したか、半壊で解体する場合に入居できる。4月末時点で9市町で計5687戸の建設に着手した。

 断水は石川県内の3780戸まで減ったが、家屋内の配管損傷が激しく通水できないケースが多い。

能登の仮設住宅、1割未着工 続く避難、なお4606人

共同通信 / 2024年5月1日 10時14分



245人が亡くなった能登半島地震の発生から、3カ月が過ぎた。遅れが目立つインフラ復旧を急ぎ、被災者の生活再建へ手を尽くさねばならない。

 石川県の避難者は今も約8千人に上る。地震直後の最大約3万4千人からは減ったが、そのペースは鈍いままだ。

 最大の要因は上下水道である。珠洲市のほぼ全域を含む約7800戸で断水が続く。さらに下水道の被害は深刻で、全容が把握できていない。国や県が当初3月末を目指した全面復旧には、3年以上かかるとの見方も出ている。

 自宅に戻った人や事業所でも水道の不便を強いられており、てこ入れが欠かせない。ただ、過疎地域だけに将来の維持も視野に入れ、地下の複雑な配管が不要な浄化槽に切り替えるなど柔軟な対応も必要ではないか。

 仮設住宅は約1600戸が完成したが、申し込みは6千件を超える。希望者全員が入居できるのは8月中になるという。

 3カ月時点での避難者数や水道の復旧、仮設住宅の建設のいずれも、2016年の熊本地震と比べて相当に遅れている。

 狭い半島の地理的な制約の上に道路の寸断が長引き、作業時間の確保が難しい。加えて建設業界も人手不足で、今月からは残業規制が強化された。現場の工夫だけで乗り切れないのは明白だ。

 住まいの再建を巡っては、建物の被害判定や公費での解体の遅れも課題となっている。

 損壊状態の判定では、1次調査約8万件のうち1割で不服申請が出たものの、市町の対応が追いついていない。公費解体は始まったばかりで、空き家の所有者や遠方に避難した住民への確認が難航しているという。

 熊本県などから復旧の経験や専門知識のある職員が支援に入っているが、被災自治体の職員も疲労が蓄積している。

 復旧を加速させるため、国が一段と踏み込むべきだ。

 県は3月下旬、「創造的復興」を目指す計画の骨子案を公表した。長期の復興を見据えつつ、今は復旧に軸足を置き、生活再建を最優先に総力を挙げるときだろう。

 忘れてはならないのは石川を離れた広域避難者である。京都、滋賀でも公営住宅だけで計25世帯が暮らしている。

 ふるさとの支援情報が滞りなく届き、能登の市町には避難先の生活実態が伝わるよう、京滋の自治体もきめ細かく後押ししたい。

社説:能登地震3カ月 復旧へ国がてこ入れを

京都新聞 / 2024年4月3日 16時5分



28日投開票の衆院3補選(東京15区、島根1区、長崎3区)は、岸田文雄政権に有権者が審判を下す機会となる。「政治とカネ」や経済、外交政策に加え、災害対策も見逃せない。17日に愛媛県と高知県で震度6弱を観測する地震があった。元日に発生した能登半島地震では、ボランティアとして被災地入りを重ねているアルピニストの野口健氏は「復興の遅れ」や「東京と現地の温度差」を指摘する。元内閣参事官で嘉悦大教授の高橋洋一氏は、復旧・復興に補正予算ではなく予備費が使われていることや、財務省の審議会が「コスト」の観点を持ち出していることに疑問を呈する。



今月、1カ月ぶりに石川県珠洲(すず)市に入った。冬場に比べ、国道はじめ道路はがれきが取り除かれてきれいになったが、車中からの景色は変わっていない。

特に珠洲市や、輪島市の一部は家屋が崩れたままで「公費解体」が進んでいない。

僕らは七尾市で、部分的にダメージがある家から、壊れた家具を「災害ゴミ」として運び出して解体するボランティアをしている。だが、「全壊」になるとボランティアは手を出せない。

「罹災(りさい)証明」を出す場合、自治体が全壊か半壊かを判断するが、被災者と合意に至らないと解体もできない。高齢者の比率が高く、空き家ばかりで所有者の特定も難しいようだ。職員もマンパワー不足で調査も追い付かない。地元業者は懸命だが、順番待ちでなかなか進まない印象だ。

家屋が住める状況ではない場合、仮設住宅ができるまで避難所に入るのが一般的だが、避難所が徐々に閉鎖されている。一部では仮設住宅ができる前に避難所を出され、ビニールハウスや、車中泊など行き場がなくなるケースもあるようだ。今後、梅雨の時期に不衛生になることも懸念される。

これまでさまざまな被災地でボランティア活動をしてきた。能登半島地震でも1月から毎週のように被災地入りしているが、東京に戻ると温度差を感じる。

2011年の東日本大震災や、16年の熊本地震では、みんなで応援する「オール・ジャパン」の雰囲気があったが、今回、僕はなぜかそれを感じないし、被災者も『見捨てられた』感が強いと思う。

がれきを除去して更地にしない限り、次の方向が見えてこない。発生当初よりも被災者の表情は乾いている。

被災地の復興について「コスト論」が出ている。政治家は「国民の生命と財産を守る」というが、今回の災害対応を見ると、本当にそう考えているのかと疑問だ。

頻繁に被災地入りの野口健氏、能登復興遅れ激白 感じない「オール・ジャパン」の雰囲気、被災者にも「見捨てられた」感が

zakzak by夕刊フジ / 2024年4月19日 6時30分