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他者の協力や理解を得るための「巻き込み力」はどうすれば身につくのか?

「この指止まれ!」と高々と指を天に向けたものの、誰ひとり来なかった...という経験があるのは私だけだろうか。

例えば、社内で業務改善を進めたいリーダーが、部下に業務の洗い出しを指示しても一向に結果が報告されない。

例えば、社外イベントの推進リーダーを任されたものの、チームメンバーからまったく協力を得られない。

このようなマネジメントの立場にいるあなたが、どうすれば人の心を掴んで率いていけるのか?について、「巻き込み力」と「巻き込まれ力」という2つのスキルを例に考察する。

ちなみに前述の例え話はすべて私の話だ。


ベテラン社員との確執で撃沈

10年ほど前に遡るが、当時「巻き込み力」のなかった私は、前職で大きな挫折を経験した。

10名ほどの社員数の会社で、社長から直々に社内の業務改善を任された私は、意気揚々と改善プランを作成し、他の社員にも展開していった。プロジェクトマネージャーとしてこの業務改善を成功させることしか頭になく、他の社員がどういう状態で、どのように考えているのか、まったく想像することもなかった。

事件勃発はベテラン社員とのやりとり。

依頼したことが締め切りまでにできなかったのを見て、私は激怒した。できなかったことへの怒りよりも、その人のあっけらかんとした態度に腹が立ったのだ。「人を怒る時は個室で」というセオリーも無視し、個室がなくパーテション1枚隔てただけのスペースでのやりとりを他の社員が聞き、その人への同情票が集まることとなった。

翌日から社員が私を見る目が変わり、気づいた時はもう遅かった。業務改善が進まないばかりか、他のプロジェクトについても協力が得られず、数ヶ月後には私の仕事と居場所がなくなったのだ。記事の冒頭で書いた経験もこの時期のこと。完全に信頼を失い、会社に行けなくなった。

信頼されたければ信頼すること

退職して数年間、自分を見つめ直す期間をとった。この出来事は実は氷山の一角でしかないのではないか?私の中のどこか根本的な部分が、人の信頼を得るに不十分なのではないか?もっと他に方法があったのではないか?

まだまだやりたいことはたくさんあった。しかし、人の心を掴むことができなければ、何もできない。

私に足りなかったことは「信頼」だ。自分が信頼されたければ、先に相手を信頼すること。

ベテラン社員に激怒した私は、その人を信頼をしていなかった。私の指示や依頼は一方的で、相手の感情や事情を汲んだコミュニケーションではなかったと、当時の自分を反省した。

「人は、自分の話を聞いてくれる人の話を聞くものだ」と何かの本で読んだことがある。他者の協力や理解を得るためには、自分が信頼される人間でないといけないのだ。巻き込むためには、巻き込まれる人の気持ちを知ること。まずはここから。
 
自分を見つめ直すとともに、私の周りにいる「巻き込み上手」な人と接点を持ち、とにかく面白そうなことには巻き込まれることを実践した。

一般に、労働や活動の対価として金銭的な報酬が支払われるものは取り組みやすいが、対価が無形の場合は損得勘定が生じてしまう。自分がその活動に投じる時間や労力の代わりに何を得られるのか、少なからず計算をして動いてしまうだろう。

「巻き込まれる」といっても無節操に顔を出すわけではない。自分の中で得られるものが何かを考えて、巻き込まれることにしていた。得られるものは「人脈」「経験」だったり、時には「楽しい」という感情という場合もある。きっとお金が欲しいわけじゃなく、その場にいる理由が欲しかったのだと思う。

鹿児島でゼロから起業した私にとっては、無形資産はお金よりもありがたい報酬だった。

巻き込み上手な人が持っているもの

私の周りの巻き込み上手な人の特徴は3つ。

①ビジョンを語ってくれる
②適材適所を理解している
③ねぎらってくれる

①ビジョンを語ってくれる

私が関わるのは一部ではあるが、活動の全体像やビジョンを語って、イメージを共有してくれる。それなら私も関わりたい!と思わせてくれる。

②適材適所を理解している

あなたに○○をお願いしたい、と人を見て依頼をしてくれる。無茶な依頼はしないが、チャレンジングな場は与えてくれる。それならやってみよう!と思わせてくれる。

③ねぎらってくれる

一人ひとりをよく見ていて、頑張ったことを労ってくれる。つまづいている時は声をかけてくれて相談に乗ってくれる。大変だけど頑張ろう!と思わせてくれる。

この3つが揃っている人は、かなりの巻き込み力を持っていると言える。私はたくさんの活動に巻き込まれながら、巻き込まれる人の気持ちを味わい、巻き込み力の極意を学んでいった。

巻き込まれる人の気持ちに立つこと

「この指止まれ!」と高々と指を天に向けたものの誰ひとり来なかった苦い経験を持つ私が、巻き込み力を身につけようともがき、数々のコミュニティを立ち上げて活動してきた10年。

巻き込みたければ、巻き込まれる人の気持ちに立つこと。

人は、自分の話を聴いてくれる人に好感を持つと言われている。理解してくれていると感じれば、話も聴くし、心も動く。逆に、自分の話を聴いてくれない人の言葉は永遠に刺さらない。

なかなか巻き込めずにいる、というマネジメント職にある人は、相手の気持ちに立つことを手始めに、巻き込まれる力をつけることからやってみてほしい。きっと世界の見え方が変わるから。


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