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北朝鮮の美容院事情#49

こんにちは。

小さいお子さんがいるママ共通の悩みはおそらく「自分の時間」がないことではないでしょうか?私も同じで、プライベートの時間が欲しいといつも思っています。

少し時間ができると、子どもが散らかしたおもちゃなどを片付けて、ついでに掃除機を回し(先日直した掃除機がまだ元気に動いています🤭)、洗濯し、前日の乾いた洗濯物を畳み、食器を洗う…それだけで今度はお昼ご飯の準備を始める時間になります😮‍💨

それから慌てて個人事業の仕事をしたり、noteを書き始めたりといつも時間に追われています。

その中で(一番って言っていいほど)困っているのは美容院に行く時間が取れないことです。

とはいえ、髪の毛はどんどん伸びるので放っておくわけにも行かない…😅

そこで私がよく利用しているのはカット専門のお店です。

フルサービスの美容院に行ったら、髪を切ってもらうだけでなく、シャンプーもするし、頭皮マッサージやヘッドスパなどもしたいという「贅沢な」気持ちはありますが、その時間に「これができる」「あれもできる」とか考えるとなかな踏み出せないのが現実です…
思い切って予約を取ったところで、子どもが風邪をひいたら結局キャンセルをするしかないし…

自分のタイミングで、予約なしで、髪の毛だけさっと切れるカット専門店はとても魅力的です。

私がカット専門店を愛用する理由は実は他にもあります。
それは“カットだけして終了!”という潔さが、北朝鮮の美容院と似ていて親しみを感じるからなのです😆

ということで、今回は北朝鮮の美容院事情についてご紹介したいと思います。
(読者さんからも質問があったテーマでもあります)

北朝鮮にも日本と同じく女性向けの美容院と男性向けの床屋さんがあります。
(美容師・理容師の区別は存在しないため、以下では美容師に統一します)
美容院・床屋さんいずれも女性が働いていることが多く、日本とは少しイメージが異なるかもしれません。

私の(北朝鮮の)美容院のイメージは、ドアを開けるとパーマ液の匂いがツーンとするところです。
住んでいた家の近くの美容院(その地域で唯一)は、10畳くらいの部屋の壁に鏡がかかっており、その前には回転する古ーい椅子が3~4個ほど置かれていました。美容師は1人だけ。

10時ごろに店が開くと、お客さんは来た順番に髪を切ってもらいます。

壁には以下のような写真が貼られていますが、あまり参考にならないので(参考にする人もいるのでしょうけど)仕上がりのイメージは口頭で説明していました。

amebaブログからお借りしました。

そのやり取りが終わると、(手作り感溢れる)霧吹きで髪をしっかり濡らして、あっという間に髪を切ってくれます。
ドライヤーは置かれていないのが北朝鮮の常識。あったところでしょっちゅう停電になるのでブローなんてできませんしね😅

日本の美容院のように自分の席でじっと動かないような感じではなく、パーマ中のおばあさんたちが(頭にクリップをしてぼろぼろなタオルで巻かれた状態で)椅子を動かして世間話をする場面も多く見かけます🤭
おばあちゃんたちはそのままの状態で家に帰ることすら珍しくありません。自分でクリップを解いてパーマ液の強烈な匂いとともに髪の毛がクリクリした状態で戻ってきたりします(自由🤪)

洗髪はパーマをした人のみです。
水道も出ない時の方が多いので、大きな盥(たらい)の中の水(これもない時が多いので家で髪を洗ってくることも)を自分で汲みながら一個しかない流し台で髪の毛を洗います。

【豆知識】
主に水を溜める用途に使われる平たい円形の容器、日本でいう盥(たらい)は北朝鮮でも「タライ」という言葉を使います。
今回の記事を書いていて、これが日本語由来の言葉なのだと初めて気づきました🤭
私が知らないだけで、北朝鮮で使われている言葉の中に、日本語がたくさんあるかもしれせんね。

国が指定する料金はカットもパーマも数十ウォン!
当時、お米1kgが1000ウォンほどでしたので何人の髪を切ればお米が買えるか想像がつくと思います。

ここまでは一般的な美容院の流れを説明しました。

しかし、北朝鮮はすべてのものには「ヤメ価格(国が指定するものではなく市場の価格という意味)」が存在します。それはイコール賄賂、もしくは別料金のことです。

美容師さんに賄賂を渡すことで家まで出向いて髪を切ってくれたり、時間をかけて要望にしっかり応えてくれたりしますので、この手を使う人は少なくありません。

また、専門学校等での養成課程が確立された上に国家資格を要する日本と異なり、北朝鮮の美容師は現場で見習いをして仕事を覚えるのが一般的です。
逆にいうと腕さえあれば、即商売として成り立ちます。実際に手先が器用でセンスがいい人が勝手に美容師だと名乗り、髪を切ってお金を稼ぐことは珍しくありませんでした。

そういう人は自由に料金を決めます。安くて1000ウォンぐらいなので、国が決めた料金よりだいぶ高くつきます。
私も北朝鮮にいる時は友達の家で髪を切っていましたが、5000ウォンくらい払っていたような記憶があります。

さて、ここからは私が平壌での大学生の頃に関わりのあった、床屋さんの仕事についてのエピソードを書いていきます。

個人の特定を防ぐため、残念ながら大学の専攻はお伝えすることができませんが、床屋さんに1ヶ月ほど実習でお世話になるような学部でした😎

お店に行くと、美容師さんがクシやハサミの使い方について詳しく教えてくれました。
例えば、ハサミには右手の親指と薬指を入れ、しっかり手を固定して親指だけを動かすなど…

日本のような練習用のマネキンなどないので、後はひたすらエアで練習します。エアギターならぬ、エア床屋。イメトレ100%です。

床屋の美容師さんに「OK」をもらえば、それからはお客さんにカットモデルになってもらいます🤭
(もちろんお客さんの承諾が前提です)

北朝鮮の男性はベリーショートで刈り上げるスタイルが多いですが(特に軍人など)、バリカンなどないのでクシとハサミだけで作り上げます。

私が初めて担当したお客さんは優しい軍人さんでした。
今でも思い出すと震えるのですが、極度の緊張状態にあった私はなんと、髪を切るついでに彼の耳まで切ってしまったのです😱
…耳の上部に小さいV字を作ってしまいました(ごめんなさい)相当痛かったと思うのですが、優しい軍人さんは笑って許してくれました🙏
仕上げは美容師さんがやってくれました。

北朝鮮の美容院&床屋さんはほとんど無料に近いのもあって、お客さんはとても優しいのです。しかも、若い女の子が髪を切ってくれるので、喜んでその身を差し出す人(大げさ)も多くいました。

そうやって数をこなしている間に、私もどうにか一人でお客さんの髪を切れるようになりました。

床屋さんに見習いに来る人の中に大学生はほとんどいなかったためか、「大学生は仕事を覚えるのが早い」と美容師さんによく褒めてもらいました❣️

実習を終えた後は、知り合いの髪を切ったりして、お小遣い稼ぎに精を出したものです。
一人あたり1〜5ドル(当時、平壌ではドルが一般的でした)をもらうことができ、貴重な収入源になりました。
私のなんちゃって美容院は意外と好評で、定期的にカットを依頼してくれる常連さんもチラホラと。今やるならヘッドマッサージとかも組み合わせて、単価アップを狙うかな😆

実はこのスキルは現在も生かされていて、私が忙しい時以外は夫と子供たちはほぼ家で切っています。

日本で美容師を目指すという道もあったかもしれません。
その道を選ばなかったのは、私の中にあった使命感…のようなものが影響していると思います。
脱北という命懸けの逃避行から生還した当時の私は、自らの力で“生き抜いた”というより、どこの誰とも知らない存在に“生かされた”感覚を強く持っていました。

「せっく恵んでもらった命、自分を受け入れてくれた日本社会のために活かさなければ」と、半ば思い詰めていた私は、より直接的に人の役に立てそうな医療の道に進むことを決めました。

今思えば、“美容師さんだって日本社会の役に立っていることには変わらないよな”と思うのですが、看護師になったのを後悔したことは一度もありません。

以上、美容院&床屋さんの思い出を書いてみました。

最後にちょっとだけおまけです。
私はカット専門店によく行くと書きましたが、シャンプーとコンディショナーはそれなりに良いものを使っており、そのあたりでバランスをとっています😼

以前、東京で独身貴族時代をしていた時代、代官山のおしゃれな美容院でお薦めしてもらったものを今も使っています❤️

早く、行きたいときに美容院に行けるようになりたいです。

チビたちよ、早く大きくなってくれ!🤭

ではまた。


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