見出し画像

『子は親を救うために心の病になる』に救われる人は多いはず(前編)

この世界に生まれて、大切な親に認めてもらうために頑張る、その最初の頑張りが、そのまま、人生の最後まで続く頑張りである。多くの人々にとって、これは変わらぬ真実だ。(p.19-20)

「ウソはドロボウのはじまり」
「よそはよそ。うちはうち」
「人生はべんきょう」

そう言って聞かされて育った私は、大人になった今も嘘はつかないよう頑張るし、本もたくさん読んでいる。『勉強』という言葉でイメージするような、しかめっ面をして読んでるわけではなく、好きで続けていることだから良いのだけれど、少なからぬ人が我慢をして頑張り続け、無理が生じてしまっている。そんな、かつて子どもだった大人たちと、心の病を抱えるように見える子どもたちのために本書はあるのだと思う。

スライド2

心の発達は『親との関係』が基礎になる。親との関係の中でつくられた「人とのつながり方」は、成長に応じて増えてくる周囲の人々とのやりとりへと広がっていき、本人にとっての世界の見え方が確かなものになっていく。

あまり耳慣れない『宇宙期』とは何なのだろうか。それは末尾にとっておいて、まずは1章から心の発達と悩み、親と子の関わり方をみていきたい。


親が何かを与えると、子は何かを失ってしまう

スライド3

就職して六年目に、突然会社を退職してしまい、「家事手伝い」になってしまった息子と、その両親。何度かカウンセリングをしていくなかで、母親が意を決して話をします。

息子が自立できなかったのは、小さい頃から彼の出る幕がなかったからだと思います。なんでも主人が出てしまった。『こうしたほうがいい』とか『こうしよう!』と言って決めてしまいました。あの子の正確だと、そうされると合わせてしまいます。いつも大切な時に、主人が関わっている、それで、息子は・・。」(p.79)

親は、自分が子供の頃に親にして欲しかったことを、良かれと思って自分の子どもに与えたがります。父親に冷たくされて育つと、「自分は息子の面倒をきちんと見てやろう」と思い、頑張る。そして、かえって子どもが「自分一人でもやってみたい」という気持ちやチャンスを奪ってしまう。。。

塾を与えると、自分の好奇心で学ぶ意欲や時間が失われ、自由に好きにさせると「親は自分に関心をもってくれていない」という不安にかられる。親が子どもに「こうなってほしい」「こんな人生を生きてほしい」と希望をもつことは大切ですが、それに過度に囚われて子どもの反応を見ないでいると、子どもは素直に「親から与えられた人生」を生きようと頑張り、苦しむ。

「与えることで、失われる何かがある」と気がつくためには、夫婦の一方がもつ頑なさをやわらげる、力を緩める関わり方が必要なのかもしれません。


甘えない生き方が、怒りを大きくしてしまう

スライド4

拒食症や過食症といった「食べる」問題は、女性に多くみられます。それは見た目を気にして無理なダイエットを繰り返すことだけでなく、毎日顔を合わせる母親の『我慢強さ』が大きな原因となっているのかもしれません。

父親はいつも家にはおらず、会社という場所で家族とは別に人間関係をもっており、家庭の問題から頭も体も解放される時間を、意図せずに過ごせる。一方で、母親はパートで外に出ることはあっても、多くの時間を子どもたちと過ごし、大人との会話は限定され、イライラが高まってしまう。

なんとか「いい母親でいよう」とするほどに、怒りや辛さの感情は大きくなっていき、つい子どもたちに強くあたってしまう。そんな母親から『我慢強さ』を学んだ娘は、毎日続けられる「食べることの我慢」を選んでしまう

「いい母親」を目指して頑張り続ける努力家だからこそ、真面目に娘をしかり、甘えを許さず、朝も夜も気が休まらない家になってしまう。「旦那は何をやってるんだよ!」と言いたくなるが、おそらく旦那もいい加減なふるまいをすることで、リラックスできる家庭にしようとして、かえって火に油をそそいでしまう。。


我慢させてしまってごめんね、じゃなくて

母親も父親も、まだまだ気がついていないことがありそうです。

多くの親は、子が親を頼り、親が子どもを育ててきた側面だけを見ている。しかし、一緒に生活している家族なのだから、たとえ子どもがまだ言葉を話せない赤ちゃんであったとしても、親は子どもに頼り、子どもに助けられている。おっぱいをもらって満足している赤ちゃんの顔を見て救われるのは母親だ。赤ちゃんほど母親の存在を全身で認めてくれる存在はないだろう。だから、親子が頼り、頼られているのはとても自然な家族の関係だ。(p.116)

だから子どもが親から伝えてほしいのは、我慢させてしまったことへの謝罪ではなく「いっしょに頑張ってくれて、ありがとう」という感謝の言葉。親が頑張りを認めてくれたら、ふっと一休みして、力を抜くことができるようになります。

「生きなければ、頑張らなければ」という必死さや真面目さが、これまでの日本の社会を支えてきた側面も大いにあるのだと思います。当時は確実な経済成長の兆しを背景に「いまだけ我慢して、努力していれば報われる」と信じられました。

しかし現代の日本はそうではありません。家族で食事をして、お風呂に入り、穏やかに眠りにつける。そんなささやかで穏やかな日々を大切にする。過去でも未来でもない、今日という時間を生きる心と体を感じながら、いたわり、癒やし、感謝する。

親が社会に適応する中で、隠して閉じ込めてしまった温かい気持ちを、日々のふれあいで引き出し、思い出させてくれる子どもたち。

本当にいつも有難う。(今日は雨だから外で遊べなくてごめんね。。)

3章からのお話は、後編で。ここまで読んでくださり有難うございました!


【21/06/20】後編、追加しました。