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読書感想31冊目:犬飼いちゃんと猫飼い先生3 たとえばこんなボクらの未来/竹岡葉月著(富士見L文庫)

 注:感想を書き連ねる間に重要なネタバレをしている可能性があります。ネタバレNGな方は読み進めることをおすすめしません。苦情については一切受け付けません。また、感想については個人的なものになります。ご理解ご了承の上、読んでいただくことをお願いいたします。

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小さな一歩に背中をおされて
両片想い両想いへ!!

帯より

 わんこ飼いのJK(のち、DK)と、にゃんこ飼いの高校教師のほのぼのラブストーリー、第三弾。
 感想を述べるうち、前巻までのネタバレも含みますのでご承知の上、読み進めることをおすすめいたします。

 今回は大きな世界から小さな世界、はじまりからおわり、おわりからのはじまりといったお話。
 女子大学生と先生のつながりは、タイトルのとおりわんことにゃんこ。
 もだもだと両片想いなふたりを見守るわんことにゃんこと、さらにそのまわりのひととわんこたち。それぞれの目線で語られる物語の、魅力が高い部分はなんといってもわんこにゃんこの話しぶり。
 その語り口は絶妙、の一言。わんこにもにゃんこにも性格がある、とは言いつつも、こうなのかも、という想像が形になっているのが面白い。
 お話のはじまりは、少し時はさかのぼって。
 にゃんこ飼い先生であるところの心晴さんの、進学後あたり。誇り高い白猫キャロルの語りから。
 1、2巻まではミニチュアダックスフントのフンフンが主に語るイメージがあった分、おお、大御所の登場!な感じがします。
 なんでしょうね、猫って無邪気に遊ぶ姿もあるはずなのに、誇り高いというかツン、と達観した姿をよく目にする気がします。
 もちろん、どっしりと貫禄のあるそぶりの犬もたくさん見かけますが。

 さて。
 キャロルの目線で語られたのは、心晴さんの家族について。
 ちょこちょこと会話に出てきていた心晴さんの妹のことが語られています。
 これがその後のお話の主題に関わってくるので、最初は「なーんだ、番外編の小話か」なんて思っていた私、読み方を改めて学ぶべきだと感じました。
 伏線じゃろがい!と。
 大学生の長男、高校生の長女、中学生の次女。複雑なお年頃。
 それでも、この三兄弟、とても仲が良い。そして彼らを大事に思うキャロルの心象風景。
 1巻での出来事を思うと、そしてあまり語ることも語られることもない存在であったにも関わらず、ここでこの登場かつこのお話は反則でしょ!という展開でした。
 基本的には女王様で傲岸不遜、天上天下唯我独尊、大事にされて当然、だって愛らしくて愛されるべき存在なのだもの、が当たり前な心情のお猫様視点から語られる物語は家族を愛する優しいもの。
 そしてその後のお話に深く深く、このお話は関わって続いていくのです。
 うわぁ、偉大な存在、キャロル。存在感大きすぎる。
 (『当たり前でしょう、だってわたくしですもの』とツンと胸を張って尻尾を振るキャロルの姿が目に浮かびます。もしくは無視されるかな……)

 キャロルのお話から続いて時間軸は現代、前巻からの続きへ。
 灰色の受験生(この表現って、通じるのですかね)だから大学生にレベルアップした藍ちゃんの大学デビュー話から、鴨井家のあれそれこれにつながって。
 このあたりのやりとりのお話は、藍ちゃんの人とのつながりを大事にする心や、そのために行動できること、心晴先生の責任感としんどさと。そういったものから二人の立ち位置や心の動きも大きくて、わんこと暮らした経験のある読者としては、胸が痛い部分もありました。しんどいよね。お別れした思い出がちょっと複雑で、どうしようもないときって。
 そして。穏やかなお姉さんわんこバーニーズ・マウンテンドッグのカイザーのご主人様の汰久くん、ミニチュアダックスフントのフンフン&三毛ハチワレにゃんこのプンプリプイッコ改めプー子の視点からのお話を経て、二人の仲が一歩一歩、進んでいきます。

 最後の最後には、人と人が出会うこと、ふれあうこと、縁を結ぶこと、そして。
 動物と一緒に生きるということ。その意味と、現実。
 そんな小さな奇跡のような出来事の積み重ねで。私たちは生きているんだなと感じて、ほっこりじんわり、心が温かくなるのでした。
 人間たちより、動物たちのほうが大事なことが見えていて、わかっていて、悟っているような。そんな面白さを感じるお話でした。

 そしてそして。
 このお話で一番ありがとうと思うのは。

 ミニチュアダックスフントとバーニーズ・マウンテンドッグを登場させてくれてありがとうございます!!!

 です。(特に大好きな犬種なので)

公式紹介ページはこちら

コミック版はこちら*第一巻のお話

 ここまでお読みいただきありがとうございました!

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