狭霧 織花
読了した本たちについて、いろいろと語ります。
自分の考えたことをつれづれまとめたもの
白いかんばせに、赤い唇、星を散りばめたように艶やかに長い黒髪。 とにかく美しい女。 彼女は、そう評されるに相応しい隣人だった。 小さな村に、女が一人住んでいた。 一人暮らしであるというのに、ゆったりと過ごす彼女は世俗からかけ離れた存在に思えた。事実、生活感がなかった。 いつ見てもしゃんと伸びた背筋にまとう和装は季節ごとの花をあしらったもので、乱れたところなどひとつも見あたらない。 楚々とした所作と同じく声音も優しく、唇の端をほんの少しだけ上げて形作られる微笑み
夢か、幻か。 狂おしいほどに魅了するのは、優しい弧を描く唇、伏せたまつげ、胸の前で組まれた祈りの形。すべてが完璧な位置で整えられた、美しいもの。神々しいと口にすることすらおこがましいと感じながら、その美しさに酔いしれる。 ただ佇む姿のなんと神々しいことか。出会えた幸せに、死んでもいいとさえ思えた。 震える指先が、真白の肌に伸ばされる。 触れたら穢れる。けれど触れずにはいられない。ぎりぎりの距離を見極めながら、その完璧な美しさを求め続けた。 ーーーある朝、白い石を
注:感想を書き連ねる間に重要なネタバレをしている可能性があります。ネタバレNGな方は読み進めることをおすすめしません。苦情については一切受け付けません。また、感想については個人的なものになります。ご理解ご了承の上、読んでいただくことをお願いいたします。 ここから本文 はじめに このお話たちは、一次創作サークル花鳥-あやとり-さんから2013年11月に発刊された、三人の書き手さんから紡がれた一次創作小説合同誌です。 題名の通り、六つの宝石と六つの色をテーマとしてつく
品行方正、謹言実直、堅物、真面目が取り柄。 そんな評判が当たり前で、それが私の名札ですらあったような気がする。名前を聞けば「ああ、あの」の後に続く言葉があげたうちのどれかであるのは間違いなく、そしてその評価は正しいのだ。 成績がいいのは当たり前。学級委員に選ばれるのは当たり前。なぜならば、こつこつ授業を受けてノートをとって課題をこなし、予習復習は日課でテスト前は学んだことを確認するだけにしているから、というだけ。教師の覚えが良いから役割が与えられるのだけど、評判が高い理
私の瞳の色は、他の人と違う。みんなは焦げ茶色。私はみんなと違う色をしていた。 変な色、とばかにされた。みんなと違うから遊ばない、と仲間はずれにされた。そんな幼少時代、私は自分の目が嫌いになったし、憎らしくも思った。この瞳を鋭利ななにかで突いてしまえば、こんな苦しみや悲しみもなくなるのだろうかと思うこともあった。 けれど、この瞳は二十歳を越えた今も私の眼窩に収まっているし、視界は良好、ぱっちりと開かれている。 私のこの瞳を、大切なものだと気づかせてくれたのは、母と、小さ
アンタ、アタシが見えるの!? 城の倉庫で見つけたものに、おネエ口調で騒がれた。己を運べと言わて運んだ場所は、謁見の間。常ならば足を踏み入れる機会などないはずなのに、なぜか阻まれることなく気づけば赤絨毯にて御前にて叩頭せよと声がかかる。 見えているのか。 手に持ったそれに対する問いに是と答えると、今度は腰掛けてみろと言われた。言われた通りにすれば、感嘆の声と拍手に包まれ、祝福された。 アンタは皆の希望なのよ。 それが言う。 アンタは死ぬまで英雄なのよ。アタシのこと
空があんまり青いから。 だから、私は。 憂鬱だ、と顔に書いてある。 鏡をのぞきこんだ私は、向かいに映る自分を睨み付ける。 なんでそんなに不機嫌なの? 己に問うが答えは返らない。 私が口を開かないからだ。眉間によったしわ、への字にまがった唇。そしてどんよりと濁った目。 何がそんなに気に入らないの? わからない。 ますます寄った、眉間のしわに右の人差し指をあてて。ぐりぐりと引き伸ばそうとしてみるものの、あまり意味はなかった。 指との摩擦に痛みを覚える辺りで
if妄想大神SSです。作中の設定その他を本編を参考に作成しておりますが、解釈違いなどがあるかもしれません。 加えて、ネタバレ要素があります。 そのあたりをおおらかに許すことが可能でなければ、できれば回避していただく方向で。 大神発売18周年、おめでとうございます!! 大好きの気持ちを込めたお話しではありますので、読んでくださった方が楽しいと少しでも思えたらいいなと、祈っております。 ぽかぽかと温かい太陽の光が、空から降り注いでいる。ともすればうとうととうたたねでもしてし
注:感想を書き連ねる間に重要なネタバレをしている可能性があります。ネタバレNGな方は読み進めることをおすすめしません。苦情については一切受け付けません。また、感想については個人的なものになります。ご理解ご了承の上、読んでいただくことをお願いいたします。 ここから本文 江戸時台が始まる前の京の都で、夜な夜な巫女姿で見回りをしている娘がひとり。 夜というのは通常、若い娘が一人歩きするには向いてないどころか恐ろしいばかりだというのに、彼女は気にしない。それどころか現れた妖怪
その人は、凜と前を向いていた。 だから、横顔しか知らなかったのだ。細いつるが印象的な眼鏡の奥、理知的な瞳は知性と探究心に溢れ、これからの魔法界を第一線で牽引していく存在なのだろうなと感じられた。 憧れのひと。それでしまいの関係のはずだった。 なぜならば、遠い存在の彼女は落ちこぼれの自分などとは比べものにならない実力で、強く美しく、魔法を扱う人だったから。 凜と前を向いて、生きていくひと。 のはずだった。 淡い淡い憧れは、憧れのままでいてほしかったというのは勝手な
注:感想を書き連ねる間に重要なネタバレをしている可能性があります。ネタバレNGな方は読み進めることをおすすめしません。苦情については一切受け付けません。また、感想については個人的なものになります。ご理解ご了承の上、読んでいただくことをお願いいたします。 ここから本文 宮野先生の最新刊。今回はいつもほどはドロドロしていない感じ……?でさらりと読める作品。 リンデンツ王国の北の森に棲んでいた、悪い魔女。しかし十年前に前王妃が亡くなると、魔女は王宮に乗り込んで、新たな王妃の
はじめに ネタバレありまくりです。気持ちのままに吐き出しているのでいろいろと注意です。 書き手は邦ロックとクラシックが浅く好き(っぽい)なのと一次創作をかじっている関係でそのあたりの個人的考察や感想が多くなります。さらに、個人的ファンの関係でゲームの『大神』と結びつけてしまっていたり。そのあたりを広い心で許せない場合は読まないことを推奨します。 面白さの共有、議論的なものに関するお話は受けたいところですが、個人的感想に関してのいろいろなものに責任は持ちきれません。
注:感想を書き連ねる間に重要なネタバレをしている可能性があります。ネタバレNGな方は読み進めることをおすすめしません。苦情については一切受け付けません。また、感想については個人的なものになります。ご理解ご了承の上、読んでいただくことをお願いいたします。 ここから本文 花の女子高生、そんな風に言われる年代の主人公、森住千代里(もりずみ・ちより)ちゃん。 でも、彼女は現在不登校の真っ最中。本人も気にしてはいない、なんてことはなく、家業の旅館でてきぱき働く姿は健気で、苦し
注:感想を書き連ねる間に重要なネタバレをしている可能性があります。ネタバレNGな方は読み進めることをおすすめしません。苦情については一切受け付けません。また、感想については個人的なものになります。ご理解ご了承の上、読んでいただくことをお願いいたします。 ここから本文 感想を述べるうち、前巻までのネタバレも含みますのでご承知の上、読み進めることをおすすめいたします。 暁国には護り神がいる。その神に仕える巫女は、朱華姫(あけひめ)と呼ばれ、そして朱華姫を妻にと望む神に
注:感想を書き連ねる間に重要なネタバレをしている可能性があります。ネタバレNGな方は読み進めることをおすすめしません。苦情については一切受け付けません。また、感想については個人的なものになります。ご理解ご了承の上、読んでいただくことをお願いいたします。 ここから本文 暁国には、護り神がいる。その神は、舞楽を得意とする朱華姫と呼ばれる少女の、その舞楽を気に入り国の護り神となった。 以来、護り神に舞楽を捧げる役目を持つ姫を「朱華姫(あけひめ)」とし、朱華姫は代々神に仕え
(前置き) このお話は、2015年4月30日まで運営されていたSNG『紅炎のソレンティア』にて活動していた自PCのお話です。 誕生日が2月29日のため、その記念を思い出してはぽつぽつと作ったお話です。 続くかもしれないし、続かないかもしれません。機会があれば当時の思い出話や別で上げていたお話も、noteにあがることがあるかもしれません。 雪深い、山の奥。 吹雪く風はすべてのものを拒むように吹き荒んでいた。 誰も足を踏み入れることのかなわぬような山の中にはぽつりと