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中国人TikTokerたちがアメリカ向けのライブコマースに力を入れ始めている背景

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2023年8月7日配信 Vol.126より

Briefing

中国人Tiktokerが国外の消費者向けにライブコマースを配信し始めている。ライブコマース大国と呼ばれる中国は国内の市場が今年の末に6760億ドルに達すると見込まれているほど巨大な市場だが、アメリカでも2026年までに680億ドルの規模になると予想されるなど、成長が期待されてきた。しかしそんな期待に反して、中国以外の国ではまだライブコマースがそれほど普及していない現実がある。2019年にはAmazonとFacebookがライブコマース事業から撤退するなど、機能自体をシャットダウンするサービスも出てきた。

 そんななか、TikTokは2022年からライブコマース機能のテストを開始し、アメリカやインドネシア、ベトナム、シンガポールといった国で、配信者自身がマーチャント登録をすればライブコマース機能を使えるようになった。これによって増加しているのが、アメリカ向けにライブコマースを行う中国人TikTokerだ。

 米中の政治的な緊張からTikTokがアメリカ国内で使用禁止となるリスクを孕んでいるものの、アメリカでTikTokの人気が高まっているだけでなく、中国のライブコマース市場が飽和していることもあり、ブルーオーシャンであるアメリカ市場を開拓する中国人配信者たちが増加している。さらにアメリカの方が中国国内よりも高い値段で販売でき、マージンを多くとれるのも中国人配信者にとっては魅力のようだ。

 しかも競争の激しい市場にいる中国人配信者は、ライブコマースでモノを売るためのテクニックを熟知している。例えば「lucky scoop」と呼ばれる手法は、ライブ配信中に消費者が商品を注文すると、大量のカラーストーンのなかからリアルタイムで容器1杯分のストーンを掬い、その内容を紹介するもので、このパフォーマンスの際に配信者が購入者の名前を呼んだり、掬ったストーンの中身を紹介したりする。この手法は中国の消費者に限らず、アメリカの30代の女性消費者もハマったという。彼女によると「配信者とのコミュニケーションや自分にあったものに出会う可能性に楽しみを感じる」そうだ。この手法は視聴者の射倖心を煽るという理由で今年のはじめにTikTokによって禁止されたが、いまだに使っている配信者も多い。中国の配信者の多くは具体的な手法を開示していないものの、このように思わず買いたくなるライブコマースのTipsをそれぞれが持っている。

 FacebookやAmazonのライブコマース機能の失敗は、まだあまりライブコマースに慣れていないアメリカの配信者が配信する前提で設計されていたのも理由のひとつだと考えると、今回ライブコマースを熟知した中国人配信者がTikTokを通してアメリカ市場に進出してくることで、アメリカにおけるライブコマース市場が活性化される可能性もありそうだ。

China TikTokers are focusing on American consumers

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