お前の知らないサンプリングの世界
君たちは「サンプリング」という手法をご存知だろうか?専門学校内では、少なくとも俺しかやってない手法になる。手短に言えば、「引用」だ。「パロディ」や「オマージュ」も似た意味合いだが厳密に言えば違う。「サンプリング」はどちらかというと、「抜き出す」行為に近い。
絵画の技法では「コラージュ」が一番近い。コラージュでは新聞や雑誌を切り抜き、組み合わせることで新たな作品とする。サンプリングはこれらを歌詞や音声で行うと思ってもらった方が分かりやすいか。
その1:音源におけるサンプリング
サンプリングといえば、自分の中では真っ先にDaft punkが思い浮かぶ。まずは聞けば誰でも知ってるような「One More Time」を聞いていただきたい。
次に聞いていただきたいのはEddie Johnsの「More Spell On You」だ。
特に冒頭部分、何やら「One More Time」の面影が無いだろうか。
実は「One More Time」の有名なこのフレーズは、「More Spell On You」のピッチを変え、切り刻み並べ替えることで、全く新しいフレーズを生み出している。次の動画を見れば、どのような加工がなされたかがよく分かると思う。
その他にもテレビやラジオの音声を引っ張ってくることもある。次に聞いていただきたいのはアングラ音楽ゲーム「BMS」の名曲、Frumsの「Credits」だ。
何やらラジオ番組のような音声が流れ続けているのが分かると思う。これは、
アメリカ公共放送社(日本で言うところのNHK)の常套句だ。いわゆる「提供読み」にあたる音声をサンプリングし切り刻んでビートに組み込んでいる。
その2:歌詞におけるサンプリング
これは主にヒップホップに見られる。ここで言うサンプリングはどちらかというと「パロディ」や「オマージュ」に近くなってくる。Creepy Nutsは好きか?「教祖誕生」なんていう曲を聴いて欲しい、特に冒頭。
「教祖誕生 無感情な商売繁盛」というフレーズ。実はこれ、
キングギドラ 「スタア誕生」の「スタア誕生 無感情な商売繁盛」というフレーズをサンプリングしていた。
p.s.「スターになる夢見育った」というラインもここから引用されていることを思い出した。
二者は内容も何処か似通っている。どちらも社会派なリリックで、ある人間が転落していく様を描く。前者はインターネットで誹謗中傷を繰り返す堕落者に成り下がっていく男を描き、後者は甘い話に釣られ転落していく少女を描く。
このケースのサンプリングの発想としては、「原作へのリスペクト」と「共通項」が考えられる。
R指定は筋金入りのヒップホップオタクだ。当然リスペクトを持ってサンプリングしている。サンプリング元が本当に好きなのだろう。それが転落を描くとなった時に、形は違えど同じ転落を描いた「スタア誕生」が結びついたのかも知れない。
結局サンプリングの何が面白いのか。
ここまでごちゃごちゃと書いたが、「サンプリングによって新たな意味や解釈」が生まれるのが面白くてしょうがないのだ。「えー!こんなにダサい曲がこんなにカッコいいヒップホップに?」「あー、ここ映画のセリフになぞらえて社会を風刺してて面白い!」とか。引っ張ってきて再構築するだけという手軽さとオシャレさが魅力なのがサンプリングなのだ。ただ権利が………権利関係が………。
どうですか?皆さんもサンプリング。僕は全然アリだと思いますけどね。もし俺の曲をムチャクチャリスペクトしてるとか、俺にマジでケンカを売りたいというのなら、どうぞ俺の曲から容赦なくサンプリングしてあれこれ言うてくれても良い。俺もやり返すし。それか、もしかしたら君たちの曲からもサンプリングするかも知れない。ということで、サンプリングのススメでした。
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