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第二話「出家騒動 前編」

出家や改宗、入信と聞くと普通それなりに大事であると感じるだろう。それはそうである。現代日本でその感覚は正しい。しかし末法の世である現代では、それらがサブカルとして成立してしまっている地獄のようなシェアハウスさえ存在している。今回はその中で改宗したゴミみたいな若者の話をしていこう。

そもそもこの周辺で言う改宗とは殆どの場合シャハーダのことである。シャハーダは、一般的には2人以上のムスリムの前で「アッラーの他に神はなし。ムハンマドはアッラーの使徒である。」とアラビア語で言えば良いとされる。前半部分は唯一の神を信じるという意味合いで、後半が預言者ムハンマドがアッラーの使徒であるという意味にあたる。

この周囲では中田先生が居るというのが1番大きな理由なのだろうが改宗する日本人がよく居る。理由は元々関心が有ったから、結婚を機に、なんとなくなど様々であるのだが本人の内心が最も重要かつ尊重されるべきなので、「ムスリムなんだからこうであるべき」みたいな考えは我々にはなく改宗後の振る舞いについてとやかく言うことはない。「悪いムスリム」など日本にも中東にもいくらでも居るのだから。そんな界隈であるが、最近4階に住むM君が改宗した。次章からはその経緯を話そう。

M君の改宗

前回の第一話で軽く触れたようにM君はたまたま捕まっていないだけの犯罪者の受験生で、3股していたクズである。その3股のうちの2人が地方に住んでいたため実質頻繁に会えるのは1人という状況だったのだが、ある日地方に住んでいるうちの1人が遊ぶために上京してくることになった。そこでM君の住む雨漏りしまくりの部屋を提供し宿泊させたのであったが、このビルの一応主である中田先生的には未婚の男女が2人きりになるのは良くないとの意向があった。

その為彼女を宿泊させるにはM君と結婚させるしかないのだが、民法上の結婚はハードルが高い上に3股継続中だったので「イスラーム風に結婚」することになったのである。そもそもイスラームがどこでも実践されていないから末法なのだから、日本で本式のイスラームの結婚ができるわけではない。真似事の「なんちゃってイスラーム風結婚」である。簡単に言えば2人をイスラームに改宗したという形で結婚というか日本人の感覚だと婚約の誓いのようなものをさせるというわけだ。だから改宗といっても、アッラーの他に神はなし、ムハンマドはアッラーの使徒なり、という一般的なモスクなどがやらせる形式ではなく、ただアッラーの他に神はない、と言うだけの3秒で終わる簡単なものだ。(中田先生によると、ハナフィー派の学説の一つらしい)よく知られてはいるが、イスラーム法では一夫多妻というのが可能である。だからといって女性に通知せず3股もできるのかは知らないが(一応、中田先生はM君の3股を知った時にイスラーム法としてというよりも人としてヤバいから重婚するにしても相手の了解をとれ、という立場だった)何が言いたいのかというとこんなノリで改宗する奴がいるということである。

「お母さん怒るわよ」

そんなわけで改宗し彼女を宿泊させた日から1週間が経とうとしていた頃、M君が「あー、今日結婚してぇな」と突然言い出した。「えっ、先週したばっかじゃん」とすごいひとが返答すると、どうやら別の彼女と結婚したいらしい。もちろんイスラーム風に。この時点で「もう勝手にすれば?」以外の言葉が脳内に浮かばなかったのだが、直後に衝撃の一言が飛び出した。

「すごいひとが証人になってくれませんか。今日、彼女呼ぶんで」

すごいひとの心の中で何かが強烈に弾けた。ムカついたのだ。実を言うとすごいひとはムスリムではなかった。理由は別にないのだが、ノリで改宗する奴がいるのだからノリで改宗しない奴も居て良いだろう。改宗したくない理由もない。M君のプランだと大使館に帰宅後にすごいひとに改宗してもらい(中田先生とM君が証人)その後に中田先生とすごいひとに2人目の彼女の改宗&結婚の証人になれと言うのだ。

訳「きっしょ、4ねや」

すごいひと的に何がムカついたかというと別に自分の改宗云々ではない。3股への加担や結婚ごっこへ巻き込まれることにムカついていたのである。1人目の嫁が泊まりに来た時もすごいひとは関わりたくなかったので東京から逃げずっと海を見て心を落ち着けていた。それくらいすごいひとにとっては耐えられないほどきしょかったのである。

結局この重婚未遂は中田先生による「双方の了解を取れ。イスラーム法とかじゃなく、人としてのモラルとかの話」という真っ当過ぎる指摘で終わった。流石に2人の彼女に同時に打ち明けるのはM君レベルの狂人にとっても厳しかったらしい。なにもわからねぇ。

すごいひとが心の平穏のために見ていたS県の海

「彼女が減る」

重婚未遂騒動はすごいひとへの心のダメージだけを残して去っていった。騒動から数日が経ちもうあんなきしょい思いをしたくないと願い忘れかけていたある日、M君が以前泊めた1人目の妻に振られることになった。理由は単純で3股がバレたからである。

すごいひと的には3股してようが振られようが「きっしょ」と思うだけで迷惑さえかけられなければ死ぬほどどうでも良いのだが、その時期はとある人からM君に任せられたとても重要なタスクがあったため振られたダメージで寝込まれたりヘラって暴れられたりするとすごく困る状況だった。そこで振られた直後に1時間弱の通話をしたり、連日長時間対面で相談を聞いたりなどの対応に追われていたのであった。M君自身は1人の彼女に依存すると、それが居なくなったら悲しいからとか欲望を満たしたらいつかカンストしてあまり求めなくなる(欲望カンスト理論)という独自のゴミ理論を持っていたため3股したことは後悔していないと言っていた。相談を聞いていて本当にバカバカしかった。時間を返して欲しい。

そうしてM君の彼女は残り1人になった。「あれもう1人どこいった」と思っただろう、なんかいつの間にかその人は自然消滅していたらしい。よう知らん。

「性根を叩き直したいです。出家でもしようかな」


M君は彼女が減ったことで少ししょんぼりしていたが、意外とシャキッとしていた。後悔していないとはいえなにかしら反省したのかもしれない。そんなM君から章題の通りのセリフを言われたのである。すごいひとは「えっ、マジで?良いじゃん出家行きなよ。てかどの寺にする?宗派は?」とつい前のめりで返答してしまった。M君がこのビルから出ていくというのが嬉しかったのである。

M君は「えっ?」と言って虚をつかれた様な反応をしていたのだが、そこで隙を与えるすごいひとではない。詳しくは自分でも覚えていないが、おそらくM君が冗談のつもりで言ったであろうそのセリフを冗談として受け流さずに出家させる方向に会話を誘導していったのである。しばらくするとM君は「出家 寺 おすすめ」などで検索し始めたので、すごいひとは「大使館ライングループ(住人以外の準レギュラーも居る)」でM君が出家する旨のメッセージを送信したのであった。

ライングループでの追い込み

いざ断髪式

すごいひとのM君出家計画はさらに続く。人を呼んで断髪式を執り行えば更に逃げ道がなくなると考えたのである。ただこれだけは勘違いしないでほしい。M君自身もだんだんと出家する気になったらしく周囲に修行しに行くことを公言していた。余談だがM君の携帯に貼ってある彼女と撮ったプリクラには「出家will」と書いてあった。本当に低い。

ムスリムが出家するから断髪式をやるというのだ。本当に意味がわからないがこれも末法の世、どういう裁きがあるのかは誰にもわからないがM君自身が「断髪式やりましょう」と言った事実だけがそこに残る。出家の逃げ道を潰したすごいひと自身も死後の裁きを待ちたい。

断髪式の前後にはBBQをやることにした。それ目当てでも人が来ると予想したからだ。更に断髪式には東大生や絶対出家させるマンも来てくれることになったのでとうとう逃げられなくなった。

東大生も他にやることあるだろ絶対

さいごに

本当は断髪式本編やその後のことまで書こうと思ったのだが文量が多くなってしまった。記事のクオリティや読み易さの問題ではなくすごいひと自身がM君の悪口(というか事実)を書くことに疲れたのだ。あと現時点でまだ確定していないことなどもあり記事化が難しいところがある。兎に角一旦休ませてもらおう。後編へ続く

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