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第六話「出家騒動 後編」

余談から入って恐縮だが、第二話の「出家騒動 前編」はM君から「note面白かったっすよ。と言ってもらえた。気に入ってもらえたようでなによりである。

M君が大使館に来た経緯

そういばM君が大使館に住むことになった経緯を話していなかったので、字数稼ぎついでに書いておく。一言で説明すると、とある人物から命を狙われていてガラをかわすために大使館に来たのである。

まだM君がこの界隈と接続する以前にスタンドアロンの異常者をしていた頃、Twitterで異常者を見つけてはスペースで話すという狂ったことをしていた時期があった。異常者たちと仲良くなって友情の印としてよくわかんない薬(違法じゃないけど陰謀論者とかが好きな感じの薬)を貰って気に入られていたそんなある日、異常者がTwitterでよくレスバしている若い女の人がスペースに上がってきた。M君は中立の立場(本人談)でそのスペースでは話していたらしいのだが異常者の味方だと思われてしまったらしい。

それだけで話が済めば良かったのだが、相手は異常者とレスバを続けていられる狂人である。くだらないレスバから発展して某地方にある異常者の実家を特定、訪問して警察沙汰にまでなったらしい。その後怒りの矛先はM君に向き、某県にあるM君と同じ姓の家の電話に全てかけたとか怖い人たちと一緒に訪問するとか物騒なツイートが増えていた。最初M君自身は「キチガイが意味不明なこと言ってるだけっすよ〜」みたいな態度だったのだが、だんだんワンチャン殺されると思ったのかちょっとずつビビりだしていた。

M君自身からこうした説明を受けて言葉としての意味はわかっても、論理的には全く理解ができなかった。そういう理解不能な低い人たちが我々の知らないところには沢山いるらしい。大人達のトー横という感じである。余談なのだが、そのM君の命を狙っていた人は先月彼氏と一緒に死んだらしい。さらに別の矛先に向いたインターネットバトルが過熱してなんか辛くなったようだ。これも低さバトルの犠牲者なのだろうか。全然わからないが、もう少し文章力があればこんなしょうもない話も面白く書けるのだろうか。教えてくれ五飛。

断髪式

話は断髪式に戻る。すごいひとの追い込みによって断髪式が執り行われた。肉を焼いて木やダンボール、髪の毛を燃やして内輪で盛り上がった。M君本人からも決意表明があって、断髪が執り行われたのだが、髪の毛の密度が高かったからなのかバリカンが安物で微妙な性能だったからなのか全然刈り取れずバリカンが負けてしまった。結局ハサミで出来るだけ短くしヤバい髪型になってグダってしまったのだった。まぁ剃髪しようという気概を見せた事自体は本物の覚悟だったのでそれだけでも良しとしよう。どうでも良いが、もうみんなM君が「ムスリム」だったことなどとっくに忘れていた。もしかしたら本人も。これが現代日本におけるイスラームのサブカル的受容なのだろう。

日本宗教史に残る名シーン

ラスト査問会

覚悟が決まり髪も切って、これで後は修行先の寺に行くだけになった。なったのだが数日経っても修行先の寺にメールを送ったとか手続きをしたとかの続報が一切ない。またしても痺れを切らしたすごいひとと中田先生は緊急査問会を招集するのであった。

「お父さん」

査問会の議題は主に二つである
・修行に行くだけの金あんの?
・てか修行行くの?なんでメール送らないの

そして、査問会はM君の一言から始まった。

江ノ島に遊びに行った時に財布落としちゃいました

ひとまず修行に行く金は無いようだ。時間と金だけが消えた江ノ島旅行はM君の中では絶対にやっておかないといけない最重要タスクだったらしい。ていうかそもそも皆忘れているがM君は一応受験生らしい。本当になにやってんだこいつ。

次に修行自体には行く気があるようだった。あるのだが他の寺がかっこいいとかなんだかで迷っていたらしい。そこですごいひとがまた逃げ道を潰してあげ約束を取り付けたのだった。意味不明がられた中田先生のツイートはそのときのものである。

ツイートすることで退路が絶たれた

修行の際に寺に納める寄付金(実質宿泊費)や交通費については「リアルお母さん」に負担してもらうことになった。前回の第五話でも書いたけど、こんな意味わからんサブカルに納得して金を出す「リアルお母さん」も流石である(全然褒めていない)。

結局「リアルお母さん」から支援があった金は本人に持たせておくとすぐに使っちゃうので、すごいひとが預かり当日に渡すことになった。「金が無かったら最悪、キセルで修行しに行きます」と謎の強い決意表明をしていたが阻止できて良かった。戒律とか自分ルールを守る前に法律を守って欲しい。

修行へ

それからなんやかんやあってとうとう修行に行く日がやってきた。どうしてなのか自分にもよくわからないがすごいひとも一緒に寺まで見送りに行くことになっていた。ちゃんと千円カットで本当の剃髪をしてきたし本人には確固たる決意があったようだが、それを信じている人間は誰も居らず、「お母さん」にとっての最後の逃げ道潰しの役目が一緒に寺まで行くことだったのだ。

「リアルお母さん」から支援はあったもののM君の所持金に余裕はないため、すごいひとが最安の高速バスを予約した。おそらく現在日本で運行されている高速バスの中でも屈指のしょぼさであろう硬い4列シートで8時間の旅をすることになった。

出発から8時間後、京都駅八条口に一睡もしていないすごいひとと眠剤が効いて寝惚けているM君の姿があった。

M君「お腹空いた〜。なか卯いきた〜い」

すごいひとは全然食欲がなかったが、一緒に入り一番量の少ないメニューを注文した。

M君「眠たくなってきちゃった」

こんな台詞、ザコシショウ以外の成人男性が言ってるのを初めて聞いた。まぁ地獄のようなバスに揺られまともに眠れていないのだから無理もない。そう言ったM君は本当に眠ってしまった。そしてM君を放置してすごいひとは店から去った。

店の人ごめんなさい
「京都名物!」

M君が爆睡している間すごいひとは安井金毘羅宮に行っていた。特になんでかという理由はないのだが、自然と足が向いていたのだ。不思議な話だ。

迫力

しばらくして起きたM君と合流し小一時間くらい鴨川で修行に行く前最後の話をした。娑婆での最後の食事はケンタッキーが良いとか、放火魔の悪口を言ったりとかいつもの様にくだらない雑談をした。気負わずにいるのかただ何も考えていないだけなのかはわからないが、もうすぐ感動のフィナーレである。誰も感動はしないだろうが「お母さん」を辞めるすごいひとにだけは達成感が確かにあった。

店の人に迷惑をかけ、修学旅行生から笑われた午前中だったがたまたま捕まっていないだけの犯罪者をここまで持ってきたのだ。よくやった方だと自分でも思うし、取り敢えず自分の目の前で犯罪しなくて良かったくらいの安堵で満たされたのだった。発端はただの冗談や悪ふざけであったが、何にせよ自分で決めたことを一応達成できた(まだスタート地点に立っただけではあるが)。それだけでも「返す」といったカンパをいまだ返さずバックれキメた限界中年男性よりは幾分マシだろう。

すごいひとも別に「お母さん」をやると決めたわけではないし、M君をおもちゃにして遊ぶ様な余裕もないほど苦痛で辛かったがやり切ることができた。他人を出家させるという前代未聞の実績も解除出来たし発達できた様な気がしないでもない。数時間しか眠っていない日の上り新幹線でこの記事を書いているのだが早く後編をあげられて良かった。帰って寝たらもうこんなこと忘れよう。

修行している間「毎日ログインボーナスもらっておいてください」と言われて渡されたスマホ


大使館シーズン1  終

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