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園芸初心者はプラスチック鉢を避けた方がいいと思ってるが断言しきれない

園芸初心者が悩む点の一つに「どんな植木鉢を買えばいいか分からない」がある。
大きさ、深さ、形状はもちろんのこと、材質とか見た目のデザイン性とか評価軸にも色々あるが、ネットに転がる園芸サイトでそういうのを詳しく説明してくれているものは滅多に無い。
植木鉢の話に絞って調べても、基本的にはデザイン性や見栄えの観点での植木鉢選びの話が多く、育てやすさや生育効率の観点が少ない。

なので、おれは初心者向けに植木鉢の話をはっきりさせたいとおもった。

先に結論を書く。

プラスチック鉢はできればやめた方がいい。
でもプラスチック鉢は初心者にとって一番安価で手軽に入手できるものなので「絶対やめろ」とも言いにくい。

なぜプラスチック鉢はやめた方がいいのか

プラスチックは水と空気を一切通さない
なので鉢の中の土がとにかく乾きにくい。

園芸初心者向けによくなされる説明として、「毎日水やりしましょう」とか「土の表面が乾いたら水やりしましょう」みたいなことがある。
大間違いではないのだが、プラスチック鉢でそれをやると土が過湿になりやすい。

土が乾きすぎてしまうと植物はマジで一瞬で枯れるので、水切れ(鉢内の水不足のこと)だけは何がなんでも絶対に起こしてはならないのだけど、さりとて常に土が全部べっちゃべちゃの状態というのも問題がある。
常に水がべちゃべちゃの土、それはいわば湿地帯の泥のようなものだ。普通の土ではない。湿地帯には湿地帯に適応した植物しか生育できない。

理想を言えば、植物が利用したいだけの量の水が常に土にある状態が一番良いということになる。
そこを目指す際に、庭の土であれば降雨に任せるだけでも十分な場合が多い(雨が降るたびに土の奥深くまで水が浸透し、その後は毛細管現象により庭の土全体に常にちょうどよく水が行き渡り続ける)のだが、
植木鉢は庭に比べて容積があまりに小さすぎる閉鎖環境なので加減が利かないのだ。

そこでプラスチック鉢以外の選択肢

乾きすぎは絶対ダメなので水はなるべく多めにあげたい…でも常にべちゃべちゃも困る…
ならば、あげすぎてしまった分が速やかに減って自動的にいい感じの水分量に調整くれる機能が、植木鉢にあれば良いのでは?

実際それをいい感じにしてくれるのが、水や空気を通す材質の植木鉢だ。

水を通す材質であれば、あげすぎた水は鉢そのものにも広く浸透していく。
そして鉢の表面から空気中へ蒸発することができる。
鉢が空気を通し、風がよく当たるようになれば蒸発もより速まる。

ここからは代表的な鉢を紹介してやる。

①素焼き鉢(テラコッタ)

古くからある伝統的な植木鉢だ。粘土を焼いて作ったものなので、目に見えないが粘土の粒子間に非常に小さな隙間はあり、水と空気を通す。

素焼き鉢

より高温で焼いたものは「駄温鉢」と呼ばれる。土粒子の密度がより高く、丈夫である代わりに通気性・透水性は素焼き鉢より低い。普通は素焼き鉢の方を選んだ方が無難。

注意してほしいのだが、鉢の表面が塗料などで塗られている場合は通気性・透水性がほぼゼロになっている可能性がある。
ごく小さな孔が塗料で塞がってしまっているわけだ。オシャレである代わりに素焼き鉢のメリットである通気性・透水性を大きく失っていることは留意しておけ。

一応デメリットも挙げておく。

  • 割れる恐れがある(プラスチック鉢はよほどじゃないと割れない)

  • 高くはないけどさすがに100円では買えない、100均に売ってない

  • 重い

②フェルト鉢(布製の鉢)

文字通りフェルトでできた鉢だ。あまり馴染みが無いかもしれないが、おしゃれな花屋さんとかに行くと布製のカバンみたいなやつに花を植えているパターンは実際ある。
布なので当然水と空気を通す。

フェルト鉢に植えたイングリッシュラベンダー

布なので、あげすぎた水は速やかに布が吸いまくり、洗濯物を乾かすような感覚で風に当たってどんどん乾く。土が過湿になることはほとんど無いと思う。

個人的には生育面で最強に近い鉢だと思っているが、やはりデメリットもある。

  • 布なので耐久性が低い(プラスチック鉢は半永久的に使えるが、フェルト鉢はどれぐらい保つか分からん。5年ぐらいは持つか…?)

  • 表面にカビが生えたりして見栄えが悪くなるかもしれない

  • 売ってない

特に最後が地味に痛い。100均とかで売ってくれたらいくらでも買うのにな…って思ってる。
裁縫ができる人なら、材料だけ揃えてDIYしてしまうのが最も低コストに植木鉢を量産できる手段になると思う。試したことは無いが別にフェルトじゃなくてもいいと思う。
デニム生地とかでDIYしたら頑丈そうだし見た目もインパクトあるだろうなあ。

あ、処分時は燃えるゴミでいいという点も地味メリットかもしれない。

③ヤシマットの鉢

ヤシの繊維を集めてギュッとして作ったマット、を鉢の形にしたもの。フェルト(不織布)みたいなもの。もちろん水と空気をよく通す。というか結構スカスカで、細かい土の粒が零れ落ちることもある。
ハンギングバスケットとして街中で見る機会が多いかもしれない。よくチェーンとかで上から吊るされてるやつ。半球状のカゴみたいな。

これもフェルト鉢と並んで性能的には強いが、デメリットも多い。

  • フェルトよりさらに耐久性が低い(結構繊維がほつれて取れたりもする)

  • 柔らかい素材なので鉢として自立できず、吊るすなり台座に載せるなり他の道具も要る

  • 他の道具も込みでかなり高い

生育目的だけでこれを選ぶのはさすがにコスパが悪い。前提としてインテリア・飾り方としての機能を求めるべき。

注意してほしいのだが、似たようなものでヤシマットではない普通のバスケット風のデザインの鉢もある。

こういう商品はバスケットの内側にビニールが敷かれてて、実質的にはビニール袋の中に土を入れることになるので、プラスチック鉢とほぼ同じになり通気性・透水性が全く無い。
実物を店頭で見て、鉢の中にビニール素材が見えたらそういうことだと思え。

④スリット鉢

これはちょっと特殊な商品。兼弥産業さんというところが作っている鉢。

材質はプラスチックだが、底面付近の側面にたくさんのスリットが入っている。ここから空気が入りやすく底の土も露出して乾きやすい構造になっているので、ちょっと他とは作用機序が違うが、生育に良い鉢という意味では共通しているので紹介した。

これも残念ながらデメリットはある。

  • 店舗で売ってない(専用のネット通販サイトでしか買えない)

  • 高い(専用のネット通販サイトでしか買えず、その送料も込みで)

  • サイズ展開がまだ途上で選択肢が限られる

これは鉢のジャンルではなく特定いち企業の商品で、しかも元々は業務用だったのを近年になって一般販売しだしたものなので、まだ商品ラインナップとか販路とかが発展途上。入手しにくいのが難点。

ちなみにふるさと納税でもらえる。てかもらった。節税できる植木鉢!

⑤100均で買える布製の袋など

これはちょっと冒険だが…
土を入れることができて、自立できて、水と空気を通すのであれば、なんでも植木鉢にできてしまうような気がする。
なので例えば100均のトートバッグとかでも…網カゴとかでも…子供用の水筒のケースや上靴入れとかでも…その気になれば植木鉢として使える気がする。

ただし、100円で買えないとプラスチック鉢よりコストが上がる。カバンやカゴの類って意外と100円で売ってないんだよな…

おれも実験的に、300円だかで買ったロープ収納で育ててる花がある。

これが立派に育てば、植木鉢として売られているものでなくても十分使えると証明できそう。

なぜ「プラスチック鉢は絶対やめろ」と断言できないのか?

オススメの鉢を紹介しきったところで、2つ目のテーマに行く。

プラスチック鉢には生育上のデメリットが多いわけだが、生育面以外ではメリットがかなりある。

  • 圧倒的に安い

  • 他の追随を許さない品数、サイズ形状、デザインのバリエーション

  • 入手が容易、100均でも買える

  • 半永久的に使える耐久性

  • 軽い

これらのメリットはいずれも「園芸初心者がとりあえず買える植木鉢」として優れすぎている。

性能面では全くお勧めしないんだよ?
でも、今から園芸始めますという人に「じゃまあずは兼弥産業さんのネット通販サイトで適切なサイズのスリット鉢を注文しなさい(メガネクイー」はちょっと言いにくいでしょ。

はっきり言って初心者が買うべきではない…ないのだが…初心者だからこそなんも考えずに自分好みの見た目の植木鉢をフィーリングで選んでほしいというか…
ガチ勢が余計なハードルをあれこれ作って「なんか園芸って考えること多くてめんどくさそうだな。やめよ、帰ってパラッパラッパーしよ」とはなってほしくない…

自分なりの結論を出す

別に100均の100円とかにこだわらないのなら、とりあえず最初は素焼き鉢にしとくのが無難にオススメかな…

でもデザイン的に好みのやつがあるとか、近所にホームセンターが無いとかだったら、100均のプラスチック鉢で全然いいと思います。

とにかく鉢底石は入れるなよ。それさえ守ってくれればおれは鉢についてはそこまでうるさく言わない。

カフェラテかミルクティー買います いや、カフェラテの方がカラテが高まりそうなのでカフェラテにします