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【散文】「刺さる」についてのあれこれ

好きか嫌いか、刺さるか刺さらないか。
これはもう、賭けのようなものかもしれない。
あなたと私は違うから。当たり前だ。
当たり前、だからこそ難しい。
万人に刺さるものはきっとない。
だけど不特定多数に刺さるものはある。
極めて少数に刺さって、
その深さに感動悶絶するときだってあるだろう。

例えば、SNSのTLに流れてきた動画。
これを見れば猛烈にパンケーキが食べたくなる!
その見出しにふさわしいパンケーキタワー。
頂上からかけられるメープルシロップ。
滴り落ち、皿にできる黄金の……
「はい、却下!」

まず言っておこう。
私はパンケーキが大好きだ。
パンケーキの出てくるシーンも大好きだ。
なんならそんな短編も書いてあるから
ぜひ読んでほしい。

しかし、そんな私にこのタワーは刺さらなかった。
いや、刺さっていたのだ、最初は。
けれど流れたシロップの行き先が……。

タワーの両脇、皿の左右に配置されたカトラリー。
その位置に不穏な何かを感じた直後、
それが現実となる。
そのハンドル、もう握りたくない……。
それは黄金の湖に半ば水没したナイフ。
どうしてそこに置いたの……。
脳内を満たしていたパンケーキの香りが
オイルやらソースやらによる、
ベタベタしたカトラリーを握ってしまった時の
あの不快感に見事変換されてしまった。
あぁ……テンションだだ下がり……。

もしかしらナイフは汚れなかったかもしれない。
けれど視覚的に「汚れた」と私の脳は判断した。

きっと問題ない人もいるだろう。
なんなら指先をシロップに浸して
手づかみで食べてもいいと思う人だって。
そんな人には刺さりまくったはず。
だからこの動画は失敗したわけではない。
でも私と同じように却下した人もきっと……。
些細なことも人によっては重要だったりする。

目を引く何かはいつだって行き過ぎ一歩手前で、
それは刺激と嫌悪の間で揺らめいている。
かと言って、
当たり障りのないものに逃げれば、
それはそれで物足りないと言われるだろう。

難しい。
けれど、だったら割り切ればいい。
欲張る必要はないということだ。

誰に刺さるのが自分にとっての幸せか、
多分それは結果として自分らしさの追求で
創作なんていうものはきっとそれでいい。

誰のために作るのか、
自分のために作る。
その一言に尽きるはず。

だからこそ。
自分が発信したものに刺さってくれた人は
奇跡が与えてくれた宝物なんだと思う。
そう、
今日ここで♡を押してくれたあなたに
心からの感謝を。


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