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【詩】その名を僕らは愛と呼ぶ

かすかに何かがあった。
儚い香りのような
夢のあとの気だるさのような。

薄れゆく記憶の断片みたいに漂うそれを
僕はふと、手を伸ばして掴み取った。

明日など信じていなかったし、
未来など見えるはずもない。
手の中のものは脆く崩れ去ると思った。

けれどそれは輝いた。
目を覚まし微笑み
僕に生きろと言ったのだ。
生きるとは何かを知るべきと。
あなたが生きるから私も生きるとそう囁いた。
それは今まで見たもので一番美しいものだった。

君という存在。
僕の時間を照らし出す輝き。
そっとその名を呼べば、
まだ見ぬ世界への扉が開かれる。

今をただ、抱きとめるだけ。
二人の吐息が作り出す瞬間の重なりが
永遠と言う名の喜びを教えてくれるだろう。

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