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【詩】潮騒の部屋から君へ

夏の家のベッドで
潮騒に満たされる朝、
僕は一人膝を抱えて考えた。

海の向こうにあるものを。
海の奥底にあるものを。
その場所にいる君のことを。

夢のようだねとパパは言ったよ。
幻みたいねとママは言ったよ。

だけどそうじゃない。
何が真実なのか、誰が知るというの。

僕は生きていて
君の鼓動を聞きながら
潮騒はいつも以上にざわめいて
夏の日の秘密は焼けつく日射しの向こう、
濃く深い陰の中に溶け込むだろう。

求める手は握り返される。
焦がれる心は包み込まれるんだ。
想像と創造の曖昧な境界線が
世界の大きさを左右する。

夏の家のベッドで
潮騒に満たされる朝、
僕は始まりの予感に打ち震えた。
とんでもなく特別な夏が
足音を忍ばせてやってくるのを感じながら。

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