エッセイ|第19話 めくるめく異世界は私のすぐ隣にあった
帰国当日朝、空港へ出発する前に急ぎ友人とスークを目指した。買い忘れたものがある、と友人は狭い通路をかき分けるように進む。私はというと、必要な買い物は済ませていて正直用はなかった。けれどスークの雰囲気は大好きだから、最後の時間をそこで過ごせるなら悪くはないと思ったのだ。
スーク。それは不思議な場所。光と陰が絶妙なバランスで存在し、奥へ行けば行くほど何もかもが深まる。濃縮された気配の中、水タバコ、金細工、香水瓶、ランプ、香辛料の山……あふれんばかりの物が四方八方から私たちを覗き