見出し画像

ロシア連邦国家安全保障戦略(2015年版)

ロシア連邦国家安全保障戦略

(2015年12月31日、大統領令683号により承認)


第 1 章 総則

1 本戦略は、ロシア連邦の国益及び戦略上の国家的優先課題、ロシア連邦の国家安全保障を強化し長期的将来にわたって国家の安定的成長を確保するための対内・対外政策上の目的・課題・施策を規定する戦略的計画の基本文書である。

2 本戦略の法的基礎を構成するのは、ロシア連邦憲法、2010年12月28日連邦法第390号「安全保障について」、2014年6月28日連邦法第172号「ロシア連邦における戦略的計画について」、その他の連邦法、ロシア連邦大統領の発出する法規範的アクトである。

3 本戦略は、ロシア連邦政府機関、その他の政府機関及びロシア連邦構成主体の政府機関(以下、「政府機関」という)、地方自治体の機関、市民社会の組織の努力を糾合し、ロシア連邦の国益及び戦略上の国家的優先課題を実現する上で好適な対内的・対外的環境を実現することを目的とする。

4 本戦略は、ロシア連邦の国家安全保障の確保に関する国家的政策を策定し、実現する際の基礎となる。

5 本戦略は、ロシア連邦の国家安全保障と国家の社会・経済的発展との間の分かち難い相互作用及び相互依存性を基礎とする。

6 本戦略で用いる基礎的な用語は次の通りである。
 ロシア連邦の国家安全保障(以下、「国家安全保障」という)とは、個人、社会及び国家が、内部及び外部の脅威から保護されている状態をいう。この際、ロシア 連邦市民(以下、「市民」という)が有する憲法上の権利及び自由の実現、その生活の十分な質及び水準、主権、独立、国家的・地域的な領土的一体性、ロシア連邦の安定的な社会・経済的発展が確保されていなければならない。国家安全保障には、国防に加え、ロシア連邦憲法及びロシア連邦の法令が規定するあらゆる種類の安全保障が含まれる。特に、国家、社会、情報、環境、経済、輸送、エネルギー、人間 の安全保障が中心的となる。
 ロシア連邦の国益(以下、「国益」という)とは、人、社会及び国家が保護され、安定的に発展するために、客観的な必要性が極めて高いものをいう。
国家安全保障上の脅威とは、国益に障害をもたらす直接または間接の能力を形成する条件及び要因の総体をいう。
 国家安全保障の確保とは、政府機関及び地方自治体の機関が市民社会の組織と連携し、政治的、軍事的、組織的、社会・経済的、情報、法、その他の分野において国家安全保障上の脅威に対抗し、国益を充足するための施策を実現することをいう。
 ロシア連邦の戦略上の国家的優先課題(以下、「戦略上の国家的優先課題」という)とは、国家安全保障の確保に関する最重要の分野をいう。
 国家安全保障の確保のためのシステムとは、国家安全保障の確保の分野において国家政策を実施する政府機関、地方自治体の機関及びそれらの付属機関の集合体をいう。


第 2 章 現代の世界におけるロシア

7 国家安全保障の確保及びロシア連邦の社会・経済的発展の分野における国家政策は、 戦略上の国家的優先課題の実現及び国益の効率的な保護を可能とする。現在、ロシア連邦には、経済的・軍事的・精神的ポテンシャルをさらに強化し、形成されつつある多極世界においてその役割を高めるための安定的な基礎ができている。

8 ロシアは主権、独立、国家的・地域的な領土的一体性、在外同胞の権利保護を行う能力を実証した。最重要の国際問題の解決、軍事紛争の規制並びに戦略的安定性及び国際関係における国際法の支配の確保におけるロシア連邦の役割が高まった。

9 ロシア経済は、世界の不安定な経済状況及び隣国がロシアに対して導入した経済的制限手段の中にあって、そのポテンシャルを保持・強化する能力を示した。

10 国民の健康増進に関する課題の解決については、肯定的な傾向が見られる。人口が自然増に転じ、平均寿命が増加した。

11 伝統的なロシアの精神的・道徳的価値観が復活しつつある。新たな世代の人々の間には、ロシアの歴史に対する正しい態度が生まれている。ロシアの自由と独立、人道主義、人種間の平和と協調、ロシア連邦の多民族的文化の統合、家族的・宗教 的伝統の尊重、愛国心など、国家体制の基礎を成す一般的価値を中心として、市民社会の結束が起こっている。

12 ロシアの強化は、複合的な相互作用の性格を有する、国家安全保障上の新たな脅威を前にして進んでいるものである。ロシア連邦が自律的な対内的・対外的政策を進めることにより、世界情勢における自らの支配を保持せんとする米国及びその同盟国との対立が生じている。彼らが進めているロシア抑止政策は、政治的、経済的、軍事的及び情報上の圧力をかけることを想定したものである。

13 世界秩序の新たな多極モデルの形成プロセスは、グローバルかつ地域的な不安定性の増大を伴っている。世界の発展の不均衡、諸国間における富の水準の格差拡大、資源を巡る争い、資源市場へのアクセス、主要輸送ルートのコントロールに関する対立が先鋭化している。
 国家間の競合はいずれも、社会的発展の価値及びモデルに関する部分が多くを占める。この過程においては、世界の海洋及び北極における資源開発の主導権が大きな重要性を有している。国際的アリーナにおける影響力を巡る争いにおいては、政治的、社会・経済的、情報に関する全スペクトルの手段が動員される。特殊機関のポテンシャルがこれまでになく活発に活用されるようになっている。

14 国際関係においては、力のファクターが持つ役割は低下していない。攻撃兵器の強化及び近代化、その新型を開発・配備しようとする意図は、グローバル安全保障システム及び軍備管理の領域における条約及び合意のシステムを弱体化させている。欧州・大西洋地域、ユーラシア地域、アジア太平洋地域においては、対等かつ不可分の安全保障原則は見られない。ロシアに隣接する地域では、軍事化と軍備競争の過程が発生している。

15 北大西洋条約機構(NATO)が軍事的ポテンシャルを強化し、国際法の規範に違反する形でそのグローバルな機能を拡大すること、同ブロック加盟国の軍事的活動の活発化、同盟のさらなる拡大、ロシアの国境に向けたその軍事的インフラの接近は、国家安全保障上の脅威となっている。
 欧州、アジア太平洋地域及び中東に米国のミサイル防衛システムのコンポーネントが配備されていること、「グローバル攻撃」概念が実際に実現されていること、 精密誘導兵器による非核戦略システムが配備されていることにより、グローバルかつ地域的な安定性を助長しうる可能性は実質的に低下している。宇宙空間に兵器が 配備される場合も同様である。

16 国際問題の解決に際して残っているブロック的なアプローチでは、現代における事象及び脅威の全スペクトルに対抗することはできない。アフリカ及び中東諸国から欧州への難民流入の活発化は、欧州・大西洋地域において NATO 及び欧州連合を基礎として形成された地域的安全保障システムの無力さを示している。

17 ユーラシア地域における統合過程に反対し、緊張の火種をつくる西側の立場は、 ロシアの国益を実現するうえで否定的な影響力を示している。ウクライナにおける反憲法的な政権転覆に対する米国及び欧州連合の支援は、ウクライナ社会の深い分裂と武力紛争の勃発をもたらした。極右ナショナリストのイデオロギー強化、明らかな目的をもってウクライナ国民の中に作り出されたロシアに対する敵愾心、政府内の対立を力で解決することへのあからさまな期待、深刻な社会・経済危機は、ウクライナを欧州及びロシア国境における長期的な不安定の火種へと変えてしまった。

18 政府内の不安定性及び紛争によって引き起こされる正統な政治体制の転覆という先例は、より広範な領域に適用しうる。近東、中東、アフリア、南アジア、朝鮮半 島に残る緊張の火種に加え、新たな「ホットスポット」が出現しつつあり、いかなる国家にも統制されていない地域が拡大している。紛争地域はテロリズム、国際犯 罪、宗教対立、その他の過激主義の拡大の温床となっている。「イスラム国」と自 称するテロ組織の出現及びその影響力の拡大は、若干の国々がテロとの戦いの領域 で堅持している二重基準政策の結果である。

19 核保有国の増加、化学兵器の拡散・使用、諸外国による生物兵器の保有の事実に関する不確定性及びそれらの兵器の開発・製造ポテンシャルの獲得のリスクが残存している。ロシアの隣接国家において米国の軍事生物研究ネットワークが拡大している。

20 特に内政状態が不安定な国における危険な物質及び材料の物理的な保管体制の危機的な状態及び制御されていない通常兵器の拡散により、それらがテロリストに入手される可能性が高まっている。

21 社会の認識を操作することや歴史を歪曲することを含めて、地政学的な目的を達成するために情報通信技術を用いようとする若干の国々の意図により、グローバルな情報空間において強まる敵対が、これまでになく国際情勢の性質に影響を与えるようになっている。

22 情報通信技術及びハイテク技術の使用を含めて、非合法活動の新たな形態が出現している。制御されない移民及び非合法移民、人身売買、麻薬流通及びその他の国境を越える組織犯罪に関する新たな脅威がさらに深刻化している。

23 世界の人口状況、環境問題、食料安全保障問題が複雑化している。真水の不足及び気候変動の影響がまずます顕在化している。多くは従来知られていなかったウイルスによる新型伝染病が拡散している。

24 経済プロセスにおける政治的要因の影響が拡大しており、個別の国家的な経済的措置、金融手段、通商・投資・技術的政策を自らの地政学的課題を達成するために 適用する企みが国際的な経済関係のシステムを弱体化させている。世界の経済・金 融システムの不均衡な構造、増大する国家債務、エネルギーの市場価格の変動により、大規模な金融・経済危機が再来する高度のリスクが残存している。

25 国際的な不安定性に対応するために国家はますます自らの域内における事象に責任を持つようになっている。地域的・サブ地域的な貿易その他の経済的合意が、危機的な現象から自国を保護する最重要の手段の一つとなっている。地域通貨の利用に対する関心が高まっている。

26 ロシア連邦の国家安全保障上の脅威を防止するために、ロシア社会の体内的な結束の強化、社会的安定の確保、民族間の合意及び宗教的寛容、経済における不均衡な構造の解消及びその近代化、国防力の向上が焦点となっている。

27 ロシアの国益を保護するため、代償を伴う対立(新たな軍拡競争を含む)を排したオープンで合理的かつプラグマティックな対外政策が実施されている。

28 ロシア連邦は、国際法の原則、諸国間の望ましく対等な関係の確保及び諸国民の相互尊重並びにその文化、伝統及び利益の多様性の保存の原則に基づいた国際関係を推進する。

29 国際安全保障の領域において、ロシアは第一義的に政治的・法的制度及び外交・平和維持メカニズムの利用に依拠する姿勢を維持する。国益保護のための軍事力行使は、用いられた全ての非攻撃的性質の手段が効果を発揮しない場合に限られる。


第 3 章 国益及び戦略上の国家的優先課題

30 長期的な将来における国益は以下のとおりである。
 国防の強化並びにロシアの憲法体制、主権、独立及びロシア連邦の国家的・地域的な領土の一体性の不可侵性。
 国民の結束及び政治的・社会的安定性の強化、民主的制度の発展、国家と市民社会の相互作用メカニズムの改善。
 生活水準の向上、国民の健康増進、安定的な人口発展の確保。
 文化、ロシアの伝統的な精神的・道徳的な価値観の発展の維持。
 国民経済の競争力向上。
 多極世界において戦略的安定性と相互のパートナー関係を助長するために活動する、指導的立場を有する世界的大国としてのロシアの地位の確立 。

31 国益の確保は、以下に掲げる戦略上の国家的優先課題の実現を通して実施される。
 国防
 国家的・社会的安全保障
 ロシア国民の生活水準の向上
 経済成長
 科学技術及び教育
 保健
 文化
 生態系のエコロジー及び合理的な資源利用
 戦略的安定及び対等な戦略的パートナーシップ


第 4 章 国家安全保障の確保

32 国家安全保障の状態は、戦略上の国家的優先課題の実現度及び国家安全保障の確保のためのシステムの効率性に直接依存する。

国防

33 国防の戦略的目標は、ロシア連邦の平和的かつダイナミックな社会・経済的発展のための環境整備とその軍事的安全保障の確保である。

34 国防の戦略的目標は、戦略的抑止及び軍事紛争の予防並びに国家の軍事組織、ロシア連邦軍・その他の軍・軍事編成・機関の行使の形態・能力の改善、ロシア連邦の動員準備体制及び民間防衛手段の向上を通じた軍事政策を実現することで達成される。

35 軍事政策の基本規定、国防の軍事・経済的保障の諸課題、軍事的危険・脅威は、ロシア連邦軍事ドクトリンが規定する。

36 戦略的抑止及び軍事紛争の予防のため、ロシアに関連した軍事力行使の予防とロシアの主権・領土的一体性の保護を目的とした相互に関連する政治・軍事・軍事技術・外交・経済・情報及びその他の手段を策定し、実現する。戦略的抑止及び軍事紛争の予防は、核抑止のポテンシャルを十分な水準に保ち、ロシア連邦軍・その他 の軍・軍事編成・機関の戦闘投入に関する準備体制を所定の水準に保つことを通じて実施される。

37 国家の軍事組織の改善は、現在及び将来の軍事的危険・脅威を適時に発見すること、軍事組織の構成要素を均衡的に発展させること、国防ポテンシャルを強化すること、ロシア連邦軍・その他の軍・軍事編成・機関に現代的な兵器・軍用装備・特殊装備 を配備すること、ロシア連邦の国防産業コンプレクスに革新的な発展をもたらすことを基礎として実施される。

38 ロシア連邦軍・その他の軍・軍事編成・機関の行使の形態・能力の改善は、現代の戦争及び武力紛争の性質に関する変化の傾向を適時に評価し、部隊(軍)の戦闘能力をより完全に発揮できる条件を整備し、戦闘の将来的形態及び新たな手段に関する要求を策定することによって規定される。

39 ロシア連邦の動員準備体制の向上は、ロシア連邦における動員準備体制・動員及びこれらを必要なだけ実現するための手段の計画を改善すること、国家の軍事組織の軍事技術的なポテンシャルを適時に更新し、十分な水準に維持することを通じて実施される。動員準備体制の改善に関する最重要分野は、戦時において国家的需要及び住民の必要を満たすべく事前に指定された所用の要求に対するロシア連邦・ロシア連邦構成主体・地方自体の経済の準備体制、政府機関・地方自治体の機関・諸機関・ロシア連邦軍・その他の軍・軍事編成・機関の準備体制である。

40 民間防衛用の部隊及び手段は、軍事紛争勃発時、それらの紛争の全期間、自然災害・人災の際に、ロシア連邦の領域内における住民及び物質的・文化的価値を危険から保護するための事前の準備体制に関する措置を実施することで確保される。

41 国防の確保は、非軍事的な対応の手法・手段の利用、外交・平和維持メカニズム、国際軍事・軍事技術協力の拡大、軍備管理及びその他の国際法上の制度を含む合理的十分性及び効率性を原則として実施される。

国家的・社会的安全保障

42 国家的・社会的安全保障の戦略的目標は、ロシア連邦の憲法体制、主権、国家的・ 領土的一体性、人・市民の基本的権利及び自由の保護、市民の平穏、社会における政治的・社会的安定の保存、自然災害・人災からの住民及び領域の保護である。

43 国家的・社会的安全保障に対する主要な脅威は以下のとおりである。
 国益を毀損する外国政府の特殊機関・組織及び個人の展開及びその他の活動。
 ロシア連邦の憲法体制の強制的な変更、政府機関の業務の不安定化、軍事・産業施設・住民のライフライン・輸送インフラの機能の停止・妨害、国民の迫害を目的とするテロ組織及び過激主義組織の活動。その実現手段には、大量破壊兵器・放射 性物質・有毒物質・毒性物質・危険な化学・生物物質の入手、核テロリズムの実行、ロシア連邦の枢要な情報インフラの安全及び安定的機能の毀損が含まれる。
 ロシア連邦の統一及び領土的一体性の毀損、国家の内政的・社会的状況の不安定化のために民族主義的・宗教的な過激イデオロギーを用いる原理主義的な社会的連合体・グループ、外国・国際非合法組織、金融・経済組織、個人の活動。ここには「カラー革命」を惹起すること、ロシアの伝統的な精神的・道徳的価値を破壊する ことが含まれる。
 薬物質・向精神物質、武器、弾薬、爆発物の違法な流通に関わる犯罪組織及び犯罪グループ(国境を越えるものを含む)、非合法移民組織、人身売買組織の活動。
 ファシズム・過激主義・テロリズム・分離主義のイデオロギーを拡散・プロパガンダすること、市民の平穏・社会の政治的・社会的安定を毀損することを目的として情報通信技術を使用することに関連する活動。
 人間性、財産、政府、社会・経済的安全保障に対する犯罪的な侵害。
 汚職。
 グローバルな気候変動、インフラ施設の技術的な状態の悪化、火災の発生に関連するものを含む不測の事態・事故・災害。

44 国家的・社会的安全保障の確保に関する主要な方向性は、人間の安全保障及び財産権の庇護者としての国家の役割の強化、犯罪・汚職・テロリズム・過激主義・麻 薬流通の予防に関する法的規制の改善及びこれらの現象に関する対策(情報分野に関するものを含む)、国家的安全保障に関与する諸機関間の連携及び市民社会との法的関係の発展、ロシア連邦の法執行機関・司法機関に対する市民の信頼及び外国におけるロシア市民の権利・法的利益保護の改善、国家的・社会的発展の分野における国際協力の拡大である。

45 国家的・社会的安全保障の確保は、法執行機関、特殊機関、国家の監督(監視)機関の活動の効率性向上、犯罪(特に未成年に関するもの)及び法律違反を予防する国家統一システム(法適用慣行の効率性に関するモニタリング及び評価を含む)の改善、社会的関係の犯罪化の水準を低下させるための特殊手段の開発及び運用を通じて実施される。

46 ロシア連邦の安定的な発展と戦略上の国家的優先課題の実現にとって障害となる汚職を生み出す原因及び環境の撲滅には特段の注意を払う。このため、汚職対策国家戦略及び汚職対策国家計画を実現し、社会においてはこのような現象を受け入れない雰囲気作りを進め、汚職犯罪に対する責任を厳格化し、当該分野における法適用慣行を改善する。

47 国家的・社会的安全保障を確保するため、以下のことを行う。
 連邦行政機関の機構及び活動を改善し、ロシア連邦の国益に障害をもたらす外国政府の特殊機関及び諸機関の諜報活動その他破壊的な活動、テロ活動、宗教的過激主義・民族主義・分離主義・その他の形態の過激主義の発現、組織犯罪及びロシア連邦の憲法体制・人及び市民の権利並びに自由・国家及び個人の財産・公共秩序及び公共の安全に対するその他の犯罪的侵害を発見・予防・阻止するシステムを発展させること。
 社会紛争及び民族間紛争を予防・中立化するメカニズム及びロシア国民が外国で犯罪・テロリストグループに参加することへの対策メカニズムを設立すること。
 国防生産組織、国内の核・化学・燃料エネルギーコンプレクス、住民のライフライン・輸送インフラ・その他の死活的に重要または潜在的に危険な施設の安全操業体制を強化し、対テロ防護水準を向上させること。
情報分野における脅威を発見・分析し、対抗するためのシステムを改善すること。
 過激主義・テロ組織、外国の特殊機関及びプロパガンダ機構からの破壊的な情報感作に対する市民及び社会の防護度を向上させるための施策を採用すること。
 法執行機関及び特殊機関を複合的に発展させること、それらの職員の社会保障を強化すること、法執行活動に対する科学技術上の支援を改善すること、将来の特殊手段及び技術を武装として採用すること、国家的・社会的安全保障の確保の分野においてプロフェッショナルな専門家育成システムを発展させること。
 国家的・社会的安全保障の確保に関与する機関の社会的な責任を増加させること。

48 国境領域における国家安全保障の確保は、ロシア連邦の国境にハイテク・多機能の国境警備コンプレクス及びシステムを配備すること、国境警備活動の効率を改善すること、省庁間の連携及び政府間の国境警備協力を改善すること、国境を国際法で確立するプロセス及びロシア連邦の国境沿いの地域における社会・経済的発展のプロセスを活発化させることを通じて実施される。

49 自然災害及び人災による非常事態からの住民・領域の保護及び消防の分野における国家安全保障の確保は、非常事態の予防・除去に関する国家統一システム及びその地域的・機能的サブシステムを改善すること、外国の同種のシステムと連携すること、住民の生活に関する安全保障の領域における地方自治体の権限の実現効率を向上させること、潜在的に危険な施設及びライフライン施設に技術的装置・技術的製品を設置すること、非常事態のモニタリング・予測システムを発展させること、住民に対する情報提供・告知のための現代的な技術手段を導入すること、消防・救助部隊に必要な技術的装備状態及び準備状態の水準を維持すること、監視活動の改 善・予防措置・住民の生活における安全文化の形成を通じた非常事態及び火災の発生リスクを低減させる事前措置システムを発展させることを通じて実施される。

ロシア国民の生活水準の向上

50 ロシア国民の生活水準の向上の分野における国家安全保障上の戦略的目標は、人的ポテンシャルの向上、国民の物質的・社会的・精神的要求の充足、主に住民の収入増を通じた社会・資産に関する不平等水準の縮小である。

51 ロシア国民の生活水準に対する脅威は、経済発展の好ましからざる動態、技術的発展の立ち遅れ、ロシア連邦に対する経済的制限手段の導入、目的の明確でない予算支出、所得水準における住民の階層化、消費財及び住民に対するサービスの質的低下である。

52 国民の生活水準の向上は、食料安全保障、快適な住居に対する良好なアクセス性、高品質かつ安全な商品及びサービス、現代的な教育及び保健、スポーツ施設、効率の高い職場の創出に加え、社会的流動性・労働の質及び相応の賃金・社会的な意義のある仕事への支援の向上、障害者その他の移動に困難を抱える住民のための社会・技術・輸送インフラシステムへのアクセス確保及び相応の年金保障に関する好適な条件によって保障される。

53 国民の生活水準の向上に対する脅威に対抗するため、政府機関及び地方自治体の機関は市民社会の組織と連携して以下のことを行う。
 法制度及び司法・法執行システムの発展により、人の権利及び自由の保護を改善すること。
 年金システムの発展、特定のカテゴリーの市民に対する社会的援助、社会奉仕システムの改善を含む法方法により、市民の福祉向上及び住民の収入水準格差の縮小に関して協力すること。
 住民の雇用を確保すること、労働者の権利遵守を監督すること、失業保護システムを改善すること、身体的能力に制限がある者が労働活動に参画できる環境を整備すること。
 出産率の改善、住民の死亡率の低下、健康的な生活及び大規模な児童・青年スポーツの発展のための条件を整備し、健康的な生活の宣伝を行うこと。
輸送及び日常移動用インフラを改善及び発展させること。
 住民を自然災害及び人災による非常事態から保護し、そのような事態がロシア連邦の領域内で発生した場合のリスクを低減させるための手段をとること。
 情報インフラの発展、多様な社会的・政治的・経済的問題及び社会の精神生活の問題に関する情報へのアクセス性、ロシア全土における国家サービスへの平等なアクセス性(情報通信技術の利用を含む)を確保すること。
 配分された予算の執行状況の監督システム及び国民の生活水準向上のための官民パートナーシップのメカニズムを改善すること。

54 食料安全保障は以下のことを通じて確保する。
 ロシア連邦の食料自給を達成すること。
 農業・漁業コンプレクス、食品産業及び国内市場インフラの発展及び近代化を加速させること。
 農産品製造業者に対する国家支援の効率性を改善すること及びそれらの製品の商品市場に対するアクセス性を拡大すること。
 血統証明・選別・育種・水産養殖(漁業)の発展、農業植物の種の十分な連邦備蓄の形成(種の保険的備蓄を含む)、飼料・ビタミン結合タンパク質及びミネラルを含む添加物及び混合物・獣医学(動物飼育術)用調剤の生産を発展させること。
 土壌の豊かさを向上させ、農地面積及び耕作好適地の枯渇及び減少を防止すること。
 環境中に暴露することを前提とした遺伝子組み換え有機組織及びこのような組織を適用された又は含有する製品の無秩序な流通を許さないこと。
 技術的規制、衛生・植物検疫監督、人の健康のための食品安全保障の領域における監督のシステムを改善すること。

経済成長

55 国家安全保障の確保に関する戦略的目標は、国家の経済的発展、経済安全保障及び人間の発展のための条件の確保、新たな技術的発展水準の経済への移行、ロシアのGDP上位国へのランク入り、内的・対外的脅威に対する効果的な対抗である。

56 経済の分野における国家安全保障上の主要な脅威は、競争力の低さ、資源輸出型の発展モデルの残存及び対外経済関係への高度の依存、将来技術の開発及び導入における立ち遅れ、非在住の投機的投資家の活動に対する国家金融システムの無防備性、その情報インフラの脆弱性、国家予算システムの不均衡、相当数の外国法人による所有権の登録、資源基盤の状態悪化及び枯渇、戦略的に重要な地下産出物の採掘量及び埋蔵量の減少、失業率の増加、相当の割合の闇経済の残存、汚職及び経済 金融関係の犯罪化の下地、不法移民、地域間の発展の不均衡、国家の人口再配分システムの安定性低下である。

57 経済安全保障に否定的な影響を及ぼすのは、ロシア連邦に対する経済的制限手段の導入、グローバル及び地域的な経済危機、不公正な競争の激化、司法手段の不当な適用、国家経済の熱・エネルギー供給当事者の安定性毀損であり、将来的には金属資源、水資源、生物資源の不足が顕著となろう。

58 経済安全保障の確保は、産業技術基盤及び国家的な技術革新システムの発展、国家経済の優先的セクターの近代化及び発展、ロシア連邦への投資呼び込みの拡大、ビジネス環境の改善及び良好なビジネス資源の確立を通じて実施される。経済安全保障の確保に関する最重要のファクターは、安定した経済成長を達成するための経済に対する国家規制の効率性増大、労働生産性の向上、新たな資源の開発、金融シ ステムの機能の安定性及び発展、その防護性の増大、通貨の規制及び監督、財政予 備の積み増し、財政の安定性保持、均衡のとれた予算システム、予算間関係の改善、資本及び高度の専門家の流出阻止、国内貯蓄の増額と投資への転換、インフレの抑 制である。このほか、汚職、闇経済、経済犯罪対策に関する活発な手段と、軍事・食料・情報・エネルギー安全保障の分野で活動するロシアの製造業者に対する国家的な保護が必要とされる。

59 経済安全保障を確保するため、経済的・地域的発展及び労働市場・輸送インフラ・情報・社会・教育インフラの発展における不均衡の除去、経済成長の新たな地理及び新たな経済領域並びに産業・科学・教育の中心の創設、基礎・応用科学研究の加速化、一般教育・職業教育・高等教育の質的改善、国家的な投資・金融機構の改善、外国からロシアへの移民の奨励に努力を集中する。

60 長期的な将来にわたっての経済分野における国家安全保障の確保に関する主要な方向性の1つは、標準的な品質のエネルギーの内部基準を安定的に確保すること、エネルギー効率及び省エネルギーの向上、自国のエネルギー企業及びエネルギー資源開発業者の競争力、燃料エネルギー資源の不足防止、戦略的燃料予備・予備エネルギーの設置、補完設備の製造、エネルギー・熱供給システムの安定的な機能を含むエネルギー安全保障の水準の向上である。

61 エネルギー安全保障を確保するために必要な条件は、燃料エネルギーコンプレクスに関する国家指導の効率化、消費者に対するエネルギー資源供給の信頼性及び継続性、世界のエネルギー市場における技術的主権の確保、将来の省エネルギー・高効率エネルギー技術の導入、エネルギー資源の処理水準の向上、海外市場 におけるロシアのエネルギー供給者及びロシア連邦の領域外で操業するロシアの化 石燃料採掘企業に対する差別の排除、政治的・非経済的思惑によってエネルギー資 源市場の統制を目論む一連の国家の試みへの対抗、将来型省エネルギー技術の開発及びその国際的な交流である。

62 経済安全保障上の脅威に対抗するため、政府機関及び地方自治体の機関は、市民社会の組織と連携し、以下に掲げる政府の社会経済政策を実現する。
 マクロ経済状況の安定性、経済成長テンポその他の国家的発展指標の促進、経済の実態部門に対する支援の確保。
 金融システムの強化、その主権の確保、ルーブル交換レートの安定性、通貨の規制及び監督の最適化、インフレの抑制、金融市場に関する国家インフラの発展、公定歩合の引き下げ、直接投資の増加、長期融資による資金調達へのアクセス性、国内貯蓄のインセンティブ、経済の非オフショア化、ロシア資本の成長及び海外への流出減少。
 均衡のとれた予算システムの確保及びロシア連邦の予算間関係の改善。
 ロシアにおける司法のインセンティブの向上、企業活動の条件の改善、競争の発展、組織の活動に対する国家的監督(監視)の新たなアプローチの策定、税・法的システムの安定性の確保、私有財産権の保護及び合意履行の保証。
 合理的な輸入代替の実施、外国の技術及び産業製品に対する致命的な依存の低減、農業生産コンプレクス及び製薬産業の発展の加速化。
 新たな高度技術領域の発展、宇宙開発・原子力エネルギー分野における立場の強化、伝統的産業分野(重機械産業、航空産業、機器製造業)における指導的立場の回復、電力・軽工業・造船業・工作機械産業・経済領域の技術水準に関する状態の統計的評価システムの再建。
 工業生産近代化のエンジンとしての国家の国防産業コンプレクスの発展、新たな技術を基盤とした国防産業コンプレクス構成組織の生産基盤刷新、その人的ポテンシャルの改善、国防産業コンプレクスによる民生品の生産。
 ロシア連邦の動員需要及び長期的な将来における国家の経済需要を確保しうる十分な金属資源の戦略予備の設置。
 効率的な輸送インフラの先進的かつ均衡のとれた発展及びロシア連邦内の連絡水準の向上を基盤とした統一輸送空間の形成、輸送回廊及び多様な形態の輸送・ロジスティクス結節の設置、道路建設の拡大及びその質的改善。
 経済発展に関する戦略的課題を解決するための官民パートナーシップ手段の利用拡大、北極・東シベリア・極東における基礎的な輸送・エネルギー・情報・軍事インフラの整備完了、北極航路及びバイカル=アムール鉄道・シベリア横断鉄道路線の発展。
 起業費用の低減、創業段階における税負担の軽減、ビジネスインキュベーター・ 産業パーク・テクノロジーパークの設置、中小企業の製品市場の形成、国家企業の調達に対するアクセス性の拡大、大規模プロジェクトの実現への参加を通じた中小製造企業の発展促進。
 非公式ビジネスの削減及び労働関係の合法化、ヒューマンキャピタルの発展に対する投資の増大。
 人種的、言語的、文化的、宗教的差異を考慮した現地住民と外国市民を含む労働移民の利益の均衡化の確保、移民審査の改善、各地域の労働資源需要を考慮した労働移民の地域的分布。
 国際的なビジネス交流の発展、外国の投資及び技術の呼び込み、共同プロジェクトの実現、ロシア製品の市場拡大、政治的・経済的利益による世界市場の統制に関する外国政府の目論見への対抗。

63 経済安全保障の強化は、ロシア連邦・ロシア連邦構成主体・拡大地域の戦略計画文書を基礎とした国家管理の改善を可能とする。

64 地域レベルにおける国家安全保障の安定的な状態は、均衡がとれ、複合的かつ系統的なロシア連邦構成主体の発展及びそれらの間の経済的関係の拡大及び強化を通じて確保される。

65 (中期的な将来における)地域レベルでの国家安全保障の確保に関する主要な方向性の1つは、国内各地域の均衡のとれた発展、インフラ不足の解消、すべてのレベルの輸送・技術・社会インフラの設置に関する調整メカニズムの導入、戦略的・ 地域的計画システムの改善、分野別・地域別の相互の合意形成、国家的な人口配分システム及びロシア連邦の各地域への生産力の配分システムの改善を通じたロシア連邦構成主体の社会・経済的発展に関する地域間格差を減少させるメカニズムの確立である。

66 長期的な将来においては、ロシア連邦構成主体における自律的な経済発展およびそれらの協調、投資・企業活動の増加、予算手当の増加、予算間関係の改善、先進的な社会・経済的発展地域を含む経済成長中心の数の増加を通じ、ロシアの各地域の発展の不均衡に関連する国家安全保障上の脅威を解消する。

科学・技術・教育

67 科学・技術・教育の分野における国家安全保障の確保に関する戦略的目的は以下のとおりである。
 国家経済の近代化、ロシア連邦の競争力ある資産の実現、国防、国家的・社会的安全保障、将来にわたる科学技術上の蓄積の形成を保障しうる科学・計画・科学技術機関のシステムを発展させること。
 社会的動員、一般教育・職業教育・高等教育の質及びこれらに対するすべてのカテゴリーの国民のアクセス性を向上させること並びに基礎科学研究を発展させること。

68 科学・技術・教育の分野において否定的な影響を及ぼす要因は、高度技術の発展の不在、輸入された科学・実験用の設備・機器及び電子コンポーネント・プログラム・計算機器への依存、競争力のある自国技術の許可を得ない海外への移転、ロシアの科学・教育機関に対する根拠のない一方的な制裁、法規範基盤の不十分な発展、科学・イノヴェーション・産業技術の分野における非効率的な促進システム、教員・技師の職業的権威及び技師・教授・教員・教育・保育労働者の社会的保護の水準並びに一般教育・中等教育・職業教育・高等教育の質の低下である。

69 科学・技術・教育の分野における国家安全保障の確保に関する主要な方向性の1つは、情報領域を含む技術的安全保障の水準の向上である。このため、国家のイノヴェーション政策及び産業政策、高度な訓練を受けた専門家及び労働者の育成に関する連邦契約システム及び国家発注システムを改善し、基礎・応用科学及び教育の優先的発展を定め、科学技術の分野における官民パートナーシップを発展させ、科 学・教育・産業の統合に向けた条件を整備し、軍事及び国家的・社会的安全保障に関する戦略的課題の解決並びに国家の安定的な発展に資する体系的な研究を実施する。

70 科学・技術・教育の分野における国家安全保障上の課題を解決するためには、以下のことが必要である。
 科学的ポテンシャルを複合的に発展させること。ロシア連邦の社会経済・科学・ 科学技術上の優先課題に合わせ、基礎科学研究から、応用科学研究の成果の製造現 場への導入に至る総合的な科学・産業サイクルを再建すること。
 国家的なイノヴェーション・システムを発展させること。高付加価値の科学製品 を含め、イノヴェーション及び科学に関連する製品市場の発展を促進及び維持すること。
 国家の戦略的優先分野の実現に関する組織的・科学的保障により、基礎・応用科学研究システム及びこれに対する国家的支援を形成すること。
 将来の高度技術(遺伝子工学、ロボット技術、生物・情報・通信・認識技術、自然模倣技術)を発展させること。
 教育機関、科学研究センター、産業の相互連携を発展させること。長期的な科学研究及び実現に時間のかかるプログラムに対する国家及び企業主体の共同出資の実施を拡大すること。
 技術的イノヴェーションを基礎としてロシア経済の近代化に関する課題を解決し、科学・教育・競争力ある技術及び科学関連製品の開発並びに科学関連製品の製造を担当しうる研究職員、技師、技術専門家の育成の質を向上させること。
 世界的水準及び先進技術に即した高度の技能を有する労働者を養成するため、中等職業教育のシステムを発展させること。
 科学活動に公的な環境を整備すること。
 基礎数学教育、物理、化学、生物学、人文・社会学の分野におけるロシアの指導的な地位を保障すること。
 学問分野を横断する研究を発展させること。
 過激主義的・原理主義的イデオロギーを阻止するため、ロシアの伝統的な精神的・道徳的、文化的・歴史的価値を基礎として、若者を責任あるロシア国民として教育する学校の役割を拡大すること。
 ロシア語、祖国の歴史、世俗的礼儀、伝統宗教に関する教育の質を向上させること。
 才能ある児童、学校外での追加教育、児童の技術・芸術的創造性、社会的団体の不足に関する問題の解決に関する支援のシステムを発展させること。
 科学及び教育の分野における国際交流を活発に発展させること、特に独立国家共同体加盟諸国において高品質の教育サービスの輸出を強化すること、世界の教育サービス市場においてロシア語で教育を受けることのインセンティブを向上させること。

保健

71 ロシア連邦国民の保健及び健康の増進は、国家安全保障上の最重要の方向性である。 その実現は、国民保健の領域における長期的な国家政策によって実現される。当該政策の戦略的目標は以下のとおりである。
 寿命を延ばすこと、国民の障害者率及び死亡率を低下させること、人口を増加させること。
 医療へのアクセス性及びその質の向上。
 医薬品の質、有効性及び安全性に関する垂直的な監督システムの改善。
 保健の分野における人権の尊重及び当該の権利に関連する国家的保障。

72 国民保健の分野における国家安全保障上の脅威は、伝染病及びパンデミックの発生、腫瘍・心不全・内分泌疾病・ヒト免疫不全症候群・結核・薬物依存・アルコール依存といった疾病の大規模な拡散、心的外傷及び中毒症状のケースの増加、精神興奮物質及び向精神物質の違法な使用へのアクセス性である。

73 国民保健の分野において国家安全保障に否定的な影響を及ぼす要因は、医療に対するアクセス性の確保及びその住民に対する提供の保障に関連する国家政策の不十分な実現、現行の医療保険システムの不備、高度技術医療システムに対する不十分 な財政支出、医療従事者の質的水準の低さ、当該分野における不完全な法規範基盤の形成である。

74 国民保健の分野における国家政策の目的は、疾病の予防、環境に危険を及ぼす疾病の増大の阻止、医療に対する住民のアクセス性向上、医療サービスの効率性及び 質の向上、障害者率の低下、新たな医療技術及び医薬品の開発及び導入である。当該分野における国家政策を実現するためには、国民保健システムの長期発展戦略の策定、保健及びその指導に関する組織的基盤の改善、国民保健の分野における連邦 政府機関・ロシア連邦構成主体の機関・地方自治体の機関の権限及び責任の修正、社会的影響の大きい疾病の予防及び治療のための国家科学・実習医療センターの設置が必要である。

75 国民保健の分野における脅威に対処するため、政府機関及び地方自治体の機関は、市民社会の組織と連携して以下のことを行う。
 国民に対する無償医療を提供するための国家保障を実施すること、強制医療保険システムの財政的安定性を向上させること及びその保険方式への移行を完了すること。
 医療サービスの認証に関する法規範的規制の効率性を向上させること、医療機関の業務の質を監督すること、ロシア連邦構成主体及び地方自治体のレベルで予防・ 治療機関の業務を評価する統一的な基準を導入すること。
 予防医療及び初期医療・衛生支援を発展させること、農業地域及び交通が不便な地域において医療提供機関に新たな組織的形態を導入すること。
 高度技術を含む特別医療及び特殊救急医療を含む救急医療の提供に関する効率性を向上させること、医療疎開組織を改善すること。
 母子の保護業務を発展させること。
 児童向けを含む緩和医療の発展。
 保健に資する基礎・応用科学研究の発展を加速させること及びその成果を導入すること。
 現代的な情報通信技術を導入すること。
 製薬分野の発展、同分野における原料・技術の外国供給者への依存の克服、高品質・効果的・安全な医薬品へのアクセスのための条件を整備すること。
 ロシア連邦の領域内における生物学的状況のモニタリング・システムを発展させること。
 住民のリハビリ医療を発展させること及び児童向けを含む療養・保養医療システムを改善すること。
 国民保健の領域における専門家を十分な数養成すること、その養成の質を向上させること、一貫した医学教育システムを確立すること。
 慈悲の伝統を再興すること。
 国民保健の分野において、官民パートナーシップ手段を広範に導入すること。
 世界市場において、ロシアの保健の競争力を増大させること。

文化

76 文化の領域における国家安全保障上の戦略的目標は以下のとおりである。
 ロシア社会の基礎としてのロシアの伝統的な精神的・道徳的価値観を保存・増進し、児童及び青年の国民意識を涵養すること。
 ロシア連邦国民としての全露的なアイデンティティ及び国家の統一的な文化空間を保存・発展させること。
 世界の人文学的・文化的空間におけるロシアの役割を増大させること。

77 ロシア連邦国民としての全ロ的なアイデンティティは、精神的・道徳的及び文化的・歴史的価値観の統一的体系の歴史的総体並びにロシア文化の不可分な一部であるロシア連邦の諸民族人民の独自文化を基礎とする。

78 ロシアの伝統的な精神的・道徳的価値観に関しては、精神的なものが物質的なものの上位に置かれる。すなわち、人命の保護、人権及び自由、家族、創造的労働、 祖国への奉仕、倫理的・道徳的規範、ヒューマニズム、慈悲、公正、互助、集団主義、ロシア人民の歴史的結束、我らが祖国の歴史の継承である。

79 文化の領域における国家安全保障上の脅威は、外国の文化及び情報の拡散(低品質なマスコミ文化の流布を含む)、無政府主義、暴力、人種的・民族的・宗教的不寛容のプロパガンダ、世界におけるロシア語の役割とロシア国内外におけるロシア語学習の質の低下、ロシア史及び世界史を歪曲する試み、文化的対象の不当な侵害により、ロシアの伝統的な精神的・道徳的価値観が浸食されること及びロシア連邦の諸民族人民の団結が弱体化することである。

80 文化の領域における国家安全保障上の戦略的目標を達成するため、国家的な文化政策及びロシアの伝統的な精神的・文化的価値観の強化・増進、民族的・宗教的・人種的寛容の確保、ロシア連邦人民の相互尊重の涵養、民族間・宗教間の文化交流の発展に向けた国家的政策を実現する。国家的な文化政策の実現に関連するロシア連邦の行政機関及びロシア科学アカデミーの活動調整を強化する。

81 ロシア語は、ロシア連邦の国語、国家的統一性及びロシア連邦の諸民族の交流を保障する手段、旧ソ連空間における統合プロセス発展の基礎、在外同胞の言語的・文化的要求を満たす手段であり、その機能を強化するための国家政策の実施は、文化の領域における国家安全保障の強化に関して特別な意義を有する。

82 文化の領域における国家安全保障の強化は、以下のことによって可能となる。
 ロシアの伝統的な精神的・道徳的価値観の保存・増進における文化の最重要の役割をアピールすること、ロシア連邦の多民族人民の団結を強化すること。
 外国の思想・価値観の伸長及び破壊的な情報・心理的影響からロシア社会を保護し、情報領域における監督を実施し、過激主義的な内容の製品の拡散、暴力のプロパガンダ、人種的・宗教的・民族的不寛容を許さない施策を採用することにより、ロシア連邦の文化的主権を確保すること。
 国民の精神・道徳・愛国心涵養の体系を確立すること、教育システム・青年・国家政策に精神的・道徳的原則を導入すること、文化・啓蒙活動を拡大すること。
 文化組織の物質的・技術的基盤を改善すること、余暇の組織化・国民の創造的発展及び芸術教育の促進に関する条件を整備すること。
 国内の文化に親しむツーリズムを発展させること。
映画、印刷物、テレビ・ラジオ番組、インターネットリソースに対する国家発注を形成すること。
 文化遺産施設(歴史的・文化的記念物)の状態に関する国家的管理を強化すること、その保存・利用・規則違反に関する責任を厳格化すること、国家的警備を強化すること。
 歴史及び文化の領域における専門家の養成システム及びそれらに対する社会保障のシステムを改善すること。
 独立国家共同体諸国及び隣接地域において公共の人文的媒体・情報通信媒体を発展させること。
 多様な国際協力に資するため、ロシアの文化的ポテンシャルを活用すること。

生態系エコロジー及び合理的な自然利用

83 エコロジー安全保障及び合理的な自然利用に関する戦略的目標は以下のとおりである。
 自然のシステムを保存及び回復すること、人間の生活及び経済の安定的発展に必要な環境の質を確保すること。
 経済の活発性が増大し、グローバルな気候変動が発生する条件下において、経済活動がエコロジーに及ぼす損傷を除去すること。

84 エコロジー安全保障の状態に否定的な影響を及ぼすのは、非効率な「収奪的」資源利用による金属資源・水資源・生物資源の枯渇、採掘・資源製品への経済の依存、天然資源利用の分野において闇経済が大きな比重を占めること、高度の汚染及び自然環境の悪化によりエコロジー上の悪影響を受ける領域が生まれることである。エコロジーの分野における諸問題は、エコロジー上危険な製造物の相当数の存在、大気排出物質・産業廃水・都市廃水の浄化能力及び製造・消費に由来する固形廃棄物の処理・無力化・廃棄・保管・再処理能力の不足、外国から国境を超えて運ばれてくる毒性物質・感染症源・放射性物質による環境汚染に関連して先鋭化している。このような諸要因の働きを可能とするのは、国家による環境管理の効率性及び経済的主体による環境基準の遵守が不十分であること、エコロジー教育及び住民のエコロジー文化の水準が低いことである。

85 エコロジー安全保障及び合理的な自然利用に関する安全保障上の戦略的目標は、ロシア連邦の自然・エコロジーポテンシャルの保護・回復、エコロジー教育及び住民のエコロジー文化の水準向上に向けた長期的な国家政策の策定及び実現によって達成される。

86 エコロジー安全保障及び合理的な自然利用の領域における脅威に対処するため、政府機関及び地方自治体の機関は、市民社会の組織と連携して以下の方向性の施策を実施する。
 革新的技術の導入及びエコロジー安全性の高い製造業の発展を促進すること。
 製造・消費に由来する廃棄物の処理産業及び再利用産業を発展させること。
 製造・消費に由来する固形廃棄物の保管・廃棄・再処理のための現代的なエコロジー水準を満たす施設を建設すること。
浄化施設を建設・近代化すること、有害物質・汚水の排出量を低減する技術を導入すること。
 人災その他の非常事態によるエコロジーに否定的な影響を防止及び除去する活動に参加する部隊のポテンシャル及び配備状態を改善すること。
 軍事的活動を含めた人為的活動による環境への悪影響を除去すること、当該の活動によって汚染された領域及び水域を回復させること。
 有用資源の探鉱及び採掘に関連する環境負荷を最小化すること及び破壊された農地を回復すること。
 国家エコロジー監督・監視システム及び国家環境・動物相・植物相・農地モニタリングシステムを発展させること、危険な放射性・化学・生物廃棄物に関する監督を実施すること、飲料水・大気・土壌に関する疫学的・衛生学的基準を遵守させること。
 エコロジー基準の要求を引き上げること及びエコロジー基金制度を設置すること。
 海洋を含む特別自然保護区制度を発展させること、希少もしくは減少しつつある植物種・動物種及び独特の風土及び生態系を保護すること。
 ロシア連邦の国境沿いの地域におけるエコロジー上のリスク低下を含め、環境保護の分野における国際協力を発展させること。

戦略的安定性及び対等な戦略的パートナーシップ

87 国益の保護を可能とするのは、国際法に依拠し、平等性・相互尊重・内政不干渉・ 互恵的協力・グローバル及び地域的危機状況の政治的規制の諸原則を基礎として安定的な国際関係システムの構築を目指すロシア連邦の活発な対外政策である。ロシア連邦は、国際連合及びその安全保障理事会をこのような国際関係システムの中核 的要素と見なす。

88 ロシア連邦は、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)、RIC (ロシア、インド、中国)、上海協力機構、APEC、G20、その他の国際的機構の枠組みにおいてパートナーとの連携を強化する。

89 独立国家共同体加盟諸国、アブハジア共和国及び南オセチア共和国との 2 国間・多国間関係の発展は、ロシア連邦の対外関係上における最重要分野のひとつである。 ロシアは、独立国家共同体加盟国の空間において、同共同体・集団安全保障条約機構・ユーラシア経済同盟・連合国家の枠組みを用い、域内及び独立国家共同体加盟諸国・アブハジア共和国・南オセチア共和国の国境地域において安定化をもたらし、地域的・サブ地域的統合及び協調のポテンシャルを発展させる。

90 ロシア連邦は、集団安全保障条約機構が質的に発展し、域内の事態・軍事政治的及び軍事戦略的性質の脅威(国際テロリズム・過激主義、違法な麻薬・向精神物質流通、不法移民を含)・情報領域の脅威に対処できる普遍的国際組織へと成長するよう行動する。

91 ユーラシア経済同盟の結成は、ユーラシア空間における新たな統合の段階を開いた。 ロシア連邦は、同盟のさらなる統合、安定的な発展、全方位的な近代化、協調、グローバル経済の枠内における同盟加盟国の経済競争力強化、加盟諸国の国民の生活水準向上、商品・サービス・資本・労働資源の自由な往来、共同インフラ・投資プロジェクトの実現に全力で貢献する。

92 ロシア連邦は、上海協力機構の政治的・経済的ポテンシャル強化、中央アジアにおける信頼醸成とパートナーシップの強化に資する実務的措置の促進、同機構の加盟国・オブザーバー国・パートナー国の連携の発展(対話フォーラム、二国間協力を含む)に関して重要な意義を有している。同機構に完全資格で加盟する意向を有する諸国との作業には特に重点が置かれる。

93 ロシア連邦は中華人民共和国との幅広いパートナーシップ関係と戦略的連携をグローバル・地域的安定性を維持するキー要素であると見なし、これらを発展させる。

94 ロシア連邦はインド共和国との良好な戦略的パートナーシップが重要な役割を担っていることを確認する。

95 ロシア連邦は、アジア太平洋地域において、望ましい地域安定化メカニズム及びブロックを基礎としない安全保障メカニズムが設立され、域内諸国との政治的・経済的協力の効率が改善され、科学・教育・文化の領域において連携(地域統合機構の枠組みを含む)を拡大するために行動する。

96 ロシア連邦は、南米諸国、アフリカ諸国、同地域における国家連合との政治・貿易・経済・軍事技術協力、安全保障領域の連携、人道・教育上のコンタクトを発展させる。

97 ロシア連邦は、欧州諸国及び欧州連合との互恵的協力を強化し、欧州と旧ソ連空間における統合プロセスを調和させ、条約と法を基礎とする開かれた欧州大西洋地域集団安全保障システムを形成するために行動する。

98 ロシア連邦は、経済分野を含む利益の調和を基礎とし、露米関係が国際情勢全般に与える核心的影響を考慮して、アメリカ合衆国との真のパートナーシップを整えることに関心を有している。このようなパートナーシップの最重要分野は、国際条約で規定された軍備管理メカニズムの改善、信頼醸成の強化、大量破壊兵器の拡散に関する問題の解決、テロ対策分野における協力の拡大、地域紛争の規制である。

99 北極における対等かつ互恵的な国際協力の発展は特別の意義を有する。

100 長期的将来にわたるロシア連邦の安定的発展に好適な条件は、グローバルな戦略的安定性に影響するすべての要因を考慮し、統一的かつ公正な国際法原則に基づき、望ましく対等な共通の安全保障が強化された上で、核兵器のない平和な世界への段階的前進によって戦略的安定性を確保することで形成される。

101 国際社会との関係において、ロシア連邦は、戦略攻撃兵器の分野における安定性及び予見性の保持の原則に依拠する。このような関係性を実際に実現することにより、戦略攻撃兵器の削減及び制限に関する国際条約の達成状況を監視し、必要に応じて当該分野における新たな合意を形成することが可能となる。

102 ロシア連邦は、特に核保有国、次いで共通の安全保障に関心を持つ諸国を戦略的安定性の保障プロセスに巻き込むために協力を行う。

103 ロシア連邦は、核兵器・その他の大量破壊兵器・それらの運搬手段・関連物資及び技術の不拡散並びに国連憲章に違反する軍事力行使の阻止に関する国際的メカニズムの強化に諸外国とともに参加することについての不変の立場と、軍備管理及び軍事力建設における合理的十分性に忠実な立場を国際的アリーナにおいて表明していく。

104 戦略的安定性を維持するため、ロシア連邦は以下のことを行う。
 国際法システムの安定化と、その分裂・弱体化・恣意的運用が不安定状況及び紛争に繋がらないよう貢献すること。
 軍縮及び軍備管理の分野における現行の国際条約及び国際合意を履行すること、国益にかなう新たな合意の策定及び形成に参加すること。
 二国間合意及び多国間フォーマットに基づく核ポテンシャルの削減問題について更なる協議を行う用意がある。また、国際安全保障及び戦略的安定性を損なうことなく核兵器を削減しうるしかるべき環境に整備に貢献すること。
 通常戦力の削減及び制限プロセス及び軍事分野における信頼醸成措置の策定及び実施への参加を通じ、地域的安定性の強化に関して協力すること。
 国際平和維持活動を、軍事紛争を規制する実効的な手段と見なし、これに参加すること。国連憲章に厳格に則ってこれらの手段を強化するよう支持を表明すること。
 国際的な情報安全保障システムの確立に関して協力すること。
 国際連合及びその他の国際組織の後援で実施される自然災害・人災・その他の非常事態の復旧に関する措置及び被災国に対する人道援助の提供に参加すること。

105 ロシア連邦は、戦略的安定性及び対等な多国間関係を維持するため、戦略攻撃兵器の分野における抑止ポテンシャルを必要最低限の水準に維持するうえで必要な全ての努力を国際的アリーナにおいて講じる。

106 NATO との関係を規定するファクターは、国際法に違反する形で行われている当該同盟のロシア連邦に対する受け入れがたい軍事的活動の強化、その軍事的インフラのロシア国境への接近、ミサイル防衛システムの配備、当該同盟の機能のグローバル化である。

107 ロシア連邦は、欧州大西洋地域における全般的安全保障を強化するため、対等性を基礎として NATO との関係を発展させる用意がある。当該同盟が軍事・政治的計画の実行に際してロシア連邦の正統な利益を考慮し、国際法規範を遵守する用意を示すことでこのような関係は深化及び充実化する。


第 5 章 本戦略の実現に関する組織・法規範・情報上の基礎

108 国家安全保障の確保の分野におけるロシア連邦の国家政策は、ロシア連邦大統領の指導とロシア連邦国家安全保障会議の調整機能の下、すべての構成要素が調和して機能することにより実現される。

109 本戦略は、国家機関及び地方自治体の機関の努力及び資源を結集し、これら諸機関と市民社会との連携を発展させ、ロシア連邦の戦略的計画の枠内で策定された政治・組織・社会・経済・法・情報・軍事・特殊その他の手段を複合的に活用することにより実現される。本戦略の規定はすべての国家機関及び地方自治体の機関が実行しなければならないものであり、ロシア連邦の国家安全保障及び社会経済的発展の分野における戦略的計画及びプログラムに関する文書と、国家機関及び地方自体の機関の活動に関する文書を策定・修正する際の根拠となる。ロシア連邦中央銀行は、戦略的計画の参加者として国益の確保及び戦略上の国家的優先課題の実現に関して活動を実施する。

110 本戦略の実現過程の監督は、国家的安全保障の状態に関する国家的モニタリングの枠内で実施される。その結果は、国家安全保障の状態及びこれを強化する方策についてのロシア連邦国家安全保障会議書記によるロシア連邦大統領への年次報告に記載される。

111 本戦略を実現するため、ロシア連邦大統領の指導の下で、ロシア連邦の国家安全保障の確保及び社会経済的発展の分野における国家運営及び戦略的計画のシステムを改善し、戦略的計画文書を策定・実現し、国家安全保障の確保及び戦略的計画の分野における高度な専門家を養成するための施策を実施する。

112 本戦略の実施に関する情報上の基礎は、国家機関及び地方自治体の情報資源を含む戦略的計画のための連邦情報システム、各地域のシチュエーションセンター及び国家的科学機関のシステムによって構成される。

113 本戦略の実現にあたっては、戦略上の国家的優先課題を踏まえた情報安全保障に特に重点が置かれる。

114 本戦略の実現に関する情報・情報分析による助言及びその修正は、本戦略の実現及び国家安全保障に実際的な影響をあたえる変化に関するモニタリング結果を踏まえ、ロシア連邦国家安全保障会議の調整の下で6年に1回実施する。


第 6 章 国家安全保障の状態に関する主要指標

115 国家安全保障の状態を評価するために必要な指標は以下のとおりである。
 国民が、自らの憲法上の権利及び自由、個人・財産上の利益が犯罪等から保護されていると考える度合い(満足度)。
 ロシア連邦軍・その他の軍・軍事編成・機関における現代的な兵器・軍用装備・特殊装備の割合。
 予想寿命。
 1 人あたり GDP。
 所得格差(人口中もっとも所得の多い 10% に対するもっとも所得の少ない10%の比) 。
 インフレ率。
 失業率。
 科学・技術・教育に対する支出の対 GDP 比。
 文化に対する支出の対 GDP 比 。
 エコロジー基準に合致していないロシア連邦の領域の割合。

116 国家安全保障の状態に関する主要指標のリストは、そのモニタリング結果を踏まえて変更される場合がある。

本戦略の実現にあたっては、国家経済の発展、国民の生活水準の向上、社会における政治的安定性の強化、国防及び国家的・社会的安全保障の確保、ロシア連邦の競争力及び国際的威信の向上が求められる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?