渋谷 | ほっぺたいっぱいの夏。
ホテル朝食の記事でも述べたように、わたしは普段、朝ごはんを食べないひとです。
(200overのスキ!ありがとうございます!)
早めのランチ、といったていで、開店同時に入るお店がいくつかあるのですが(いずれまとめます!)、そのうちのひとつをご紹介します。
わたしにこだわりはないが、おいしいと思う。
渋谷のホテルを出たら、駅をまず目指す。
駅前のアイコン、スクランブル交差点で信号に、ずんずんの足を止める。
てっぺんに登る太陽を恨むように顔を上げれば、狭い空を埋めるよう情報量過多の広告・広告・広告。
しばしの静止から、わっと人が一斉に動き出すのを、毛糸の運針のようにスッスッと何度も抜けていく。コツは、目の前のひとの進行方向とは逆に進むことだ。
それで若干、遠くへ逸れることにはなるけど、べつに慌てない。西村のきらきらとした果物たちの陳列をちらっと横目が捉える。
どーんと立つ109を前に、そのまま道玄坂方向へ流れこむ。二股を左だ。
坂を一歩一歩、踏みしめながら、十数年前にここを通ったことを思い出す。混雑する週末の夜、道は2人せせこましく並んで長く連なり、ゆっくりと進む。そして、後ろのひとがキャリーケースを蹴り上げてきた。虫の居所が悪かっただろう苦みを思い出す。
パフェ研究家の斧屋さんがおすすめしていたのを見てから、ブリュレパフェが好きだ。それを置いているロイヤルホストのあるビルの角を、右手に曲がり、また更なる坂を踏みしめる。
しぶや、という音からは伝わってこないけど、漢字ではしっかりと「ここは谷だぞ」と示してくるように、駅周りはすり鉢の底である。
いつも煉瓦の壁が豪奢だな、と思っているお店はどうやら台湾料理をやっているらしい。
ひとりでご飯を食べる機会はいつでもあれど、まだまだ心理的なハードルを好奇心で突破するお店の開拓は進まない。
いつかサクっと入ってみたいものだな、と思っているうちに、お店の前まで来れた。
場所はヤマダ電機 渋谷LABI店の入り口向かいにある、そば処 福田屋だ。
黒っぽくて艶のある階段を登って、メニューを確認してから店内に入る。
このとき9月。
遅かっただろうか、と心配したけれど、あのメニューまだやってる。
2人掛けに通され、汗をひとふきしてからオーダーをする。
店内はまだ人は少なく、3人組のお客が談笑しながら酒と肴を楽しんでるよう。昼からいいね、ナイスぅ─!と思っているうちに盆が運ばれてきた。
福田屋の冷やしなすそば
白くてまるい器に、こんもりとまた大根おろしが山のように盛られて、くりんくりんとしたかつおの削り節がたっぷりと。
その下に、網目に切られ素揚げされたなすが、出汁を含んでごろごろっと転がり、油でつやめく冷たいつゆとそばが沈んでいる。
今日は、おなかすいてる。余裕があるから、だし巻き玉子も頼んじゃった。
まずは蕎麦麺。
細めで、しっかりした食感のする固めの茹で上がりは、わたし好み。
(富山だと、野花そば処 つるや本店の天ざる一択)
それから、なす。
かぶりついたそばから、口の中に出汁が流れこんでくる。どこにあった?というくらい、大量に。ほっぺがいっぱいになっている時、すごく幸福な気持ちになった。鼻で息をする。
次に、大根おろしと削り節を山からつまんで、なすにのっける。
出汁に香りが足されて、またおいしい。鼻で息をすると、かつおの匂いが通る。
忘れずにだし巻き玉子もひとくち。
今度は薬味をのっけてまた、蕎麦をすする。
ちいさいテーブル席から想う。
ほっぺたいっぱいに、んぐんぐと咀嚼してる間の目のやり場って困る。
凝視するわけにもいかず、しかし盆のどこか一点を見て、口のなかで噛まれ、解れてゆく食材の変化を喉に押しやるまで、ひと通り感じる。
無の境地のようで、でも必死な感じもするふしぎな時間だ。
店内は、時計の針が重なるときが近くなるにつれて、4人掛けから埋まっていく。
大通りの賑々しさとはまた違った、一食の楽しみがあって、いいなと思う。
なによりおいしいし。
このお店は自分で見つけたわけでなく、「食の師匠」とわたしが思っている食いしんぼうのかわいい方のTwitterがきっかけなのだけど、会ったこともない彼女のことを、少しだけ身近に感じることができるのだ。
これを食べたら、しばらくビルのなかを散歩しよう。
今日は暑いし、おなかに余裕があればパフェを食べてもいいかもしれない。
ブリュレパフェ? でも、西村もあるぞ。
慎重に胃袋のストレージと相談しなくては。
chicca
施設情報
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