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サバ節【読みサバ】10尾目

こんにちは。突然ですが皆サバは「サバ節」を知っていますか?
サバを歌った民謡・・・ではないですよ~。

サバを乾燥させて硬くし、保存性を高めた昔ながらの加工食品です。カツオを乾燥させたものは、ご存知鰹節(カツオ節)。
これに対し、サバを乾燥させるたものが鯖節(サバ節)ですね。
鰹節と同じく、主に削ってだし(出汁)をとるのに使われます。

「だし(出汁)」は、ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」の、基本中の基本。
和食のだしとしては鰹節、昆布、椎茸などが有名ですが、もちろんそのほかの魚介類からも旨いだしがとれますよね。最近よく見るのは九州に多い「あご(トビウオ)」や、讃岐うどんの汁に使われる「いりこ(イワシ)」などでしょうか。

地域や各家庭によって代々受け継がれ、また、料理によっても使い分けられ、和食の複雑で独自な食文化を形成しています。
そんな中、われらが「サバ」を使ったサバ節は、表舞台ではあまり見かけないような…?

皆さばのご家庭の台所には「サバ節」ってありますか?
サバやしの実家はサバ節を使う習慣はなかったため、正直に言うと今もサバ節は買いません(サバニストなのに…)。その存在は知っていたものの、これまで深く考えることはありませんでした。

実は、サバ節は単体で使われるより、他のだし食材と混合して使われることがほとんどで、また家庭用というより業務用としての利用が多いのです。これはサバ節最大の特徴である(他のだし食材に比べて)コクがある、ということが大きいと思われます。

サバには脂質が多いため(しかもEPAやDHDといった不飽和脂肪酸が豊富!)、乾燥させても魚特有の味が強めに残り、濃厚な旨味のあるだしがとれます。その半面、香りは鰹節に比べて弱いといわれています。なので、わりと料理を選ぶだしであるといえましょう。

そこで、プロの料理人は鰹節や昆布などと独自の配合で合わせだしにして、コク深さと香りを引き立て合わせています。たとえば、うどんやそばの汁・つゆにはサバ節を混合して濃厚な旨味を出すお店がとても多いのです。

うどんの画像
うどん(イメージ)

また、家庭用でも「削り節」にはカツオ、サバ、片口イワシ、ムロアジなどがMIXされているものが多いです。この場合、原材料名には「さばのふし」と記載されている場合も。
もちろん、だしパックやだしの素にも粉末にしたサバ節が入っているものもあります。
と、まあこのように、知らず知らず“サバのだし”を口にしている機会はわりと多いんですね。

ところで、サバ節の原料となるサバは、ほとんどが「ゴマサバ」です。
当コラムの「サバ3兄弟」でも紹介しましたが、日本近海で獲れるサバは「マサバ」と「ゴマサバ」。正面から見るとマサバより丸みがあり、お腹に斑点模様があるのが特徴です。

マサバの漁獲量が激減していることもありますが、なによりゴマサバの方が脂質が少ないからだといわれています。日本食品分析表によると脂質はマサバのおおよそ3分の1だそうです。
サバ節に加工するには脂が多すぎるとしっかり乾燥できず、また、だし汁が濁る原因にもなるため、脂質の少ないゴマサバが最適なのだとか。 

ゴマサバの画像
ゴマサバ

  製造工程は、鰹節と同様に、燻製した後で充分に乾燥させてカチカチに仕上げられます。丸ごと1匹のサバを乾燥した「丸さば」のほか、製造途中で割って中骨を取り除いた「割さば」があります。

サバ節の全国生産量は、8,992t(令和4年)。日本のどの地域で多く作られているかというと、今では熊本(4,939t)・鹿児島(1,605t)・静岡(1,183t)の3県で生産量の9割近くを占めています。昔は紀州(和歌山)や房総なども多かったそうですが。
ちなみに、同年の鰹節の全国生産量は、24,943t。さすがにだしの王者?といった数字ですが、なんかサバ節も思ったより健闘してません?!
やはり業務用の利用が多いため、ぼくたちはステルス的にたくさんのサバ節を摂取してるんですね(喜)!
            (農林水産省:令和4年水産物加工統計調査より)

  というわけで、ご家庭での和食の味にちょっとひねりを加えてみたい方は、サバ節を取り入れてみてはいかがでしょうか。
プロに倣ってうどん・そばの汁のほか、魚の風味やコクをより濃く出したい煮物などにおすすめです。

個人的には、風味の強い赤味噌(八丁味噌)や合わせ味噌の味噌汁、魚の練り物が多いおでん、鴨そばに鰹節と合わせてなど、とても合うと思います。
逆に、繊細な香りがほしいお吸い物や、素材そのものの味が強くない食材の煮物には、サバ節は存在感が強すぎてしまう気がしますね。

スーパーの乾物売り場だとやはり鰹節が幅をきかせてます(そもそも、鰹節以外は総じて雑節と呼ばれていて、サバ節というラベルで棚に並んでいるのはあまり記憶にないです。)が、ネット通販で見たらサバ節もけっこう色々売られています。薄削りのものから、ガッツリしただしがとれそうな厚削りまで。サバやしもこの機会にサバ節の可能性を探ってみたいと思っています!

サバ節の画像
サバ節


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