新しいスニーカーとパンツに浮かれる春の日

「おしゃれはガマン」だなんて、随分とレトロな雰囲気を帯びる言葉になって久しい。
まだまだ寒さの厳しい２月に、薄手のスプリングコートに春色のサマーニットを着てみたり、靴擦れで泣きそうになりながらつま先の尖ったハイヒールを履いて歩いたり……。
以前は“季節の先取り”こそおしゃれだったアパレルショップでも、“今着たいもの”を買うのが主流になってきているし、足元はみんなスニーカー。日常でハイヒールをはくなら、上手なさじ加減で“外し”を入れつつコーディネートしないと、なんだか古臭い“オバスタイル”になりかねない。
スポーツやアウトドアウェアを日常着として着るのも当たり前だし、日常着の機能性も上がっていて、オフィスで着られるキレイめなブラウスやパンツ、スカート、ときにはスーツさえも自宅で洗濯できる。なんとラクチンにおしゃれできる世の中になったことよ。

さて、そもそも私は靴が好きで、ハイヒールも大好きだった。だって、ハイヒールを履くだけで、150センチ台の私の身長でもスラリとスタイルアップして見え、ややずんぐりと見えていたコーディネートも、一発でアカ抜けて見える。それに、ハイヒールって、そのものの形が美しくないですか？　
かかとからヒールの先に向かうくびれたカーブや、浮いた土踏まずのあたりから地面に着地するライン、つま先のゆるい三角形……。

いっときは毎日のように履いていたハイヒールも、ここ数年はめっきり出番が減り、ついに一昨年にはお気に入りだったペリーコを２足手放した。残ったハイヒールは、黒いショートブーツと、冠婚葬祭用の黒いパンプスのみ。あ、夏のサンダルも１足だけありました。ショートブーツは結局この冬履かなかったので、手放すべきか悩み中。

代わりに今年に入ってから、スニーカーを３足買った。２足はこの２年間履きまくったスニーカーの摩耗が激しかったための買い替えの意味で、そして１足をプラス。
最後に買った１足は、流行りの「HOKA」。これが感動ものだった。雨の日にも履ける黒のゴアテックスのスニーカーがほしくて、店頭で最初に試したのは「SALOMON」。クールなデザインがかっこいいな、と憧れがあったのだが、私が持っている服に合わせるにはクールすぎるかしら…という印象だった。
あれこれ試して、店員さんがすすめてくれた「HOKA」は履き心地抜群、シンプルなデザインで手持ちの服に合わせやすそうだし、ゴツすぎない厚底でスタイルアップ効果も、ということでやや値段は高かったものの、購入を決めた。

雨の日用にと思って買ったゴアテックスだけど、ピーカンに晴れた翌日、嬉しくて早速履いてみた。これがもう、本当に快適だったのだ。ふわふわに感じるくらいやわらかい履き心地で軽いのだが、ただ厚底のクッションがついているだけではない。底が微妙にカーブのあるつくりで、自然と次の一歩が進む。前を歩く学生さんたちをグイグイと追い越し、ほんのちょっと意識すれば、かかと、母指球、小指球の３点をちゃんと使って歩ける感じだ。自然と背筋も伸びる。伊達な厚底ではないと思った。

ちなみに、少し前にアウトレットで買った「PUMA」（右）は、伊達な厚底がついていた（笑）。
クラシックタイプで、ソールにやや厚みがあるデザインが気に入ってはいるけれど、履き心地という意味では、重くて、かかとがズレやすいのが難点。
購入価格は、「HOKA」（左）の4分の１ぐらいだったことを思えば、仕方がないか。

もう１点、私が最近すごく気に入っているのが、サイクリングウェア「rapha」のトレイルパンツだ。そもそも自転車が趣味で、自転車専用のウェアとして「rapha」を愛用しているのだが、サイクリングウェアは風の抵抗をなくすためにピタピタが基本で、なかなか女性が日常着として着られるものは少なかった。けれど、このトレイルパンツは、サイクリングウェアとして優秀なのはもちろん、普段着としてもなかなかイケるデザインなのだ。

マウンテンバイクに乗ることを想定したパンツなので、とにかく脚は動かしやすく、ひざをしっかり曲げてもつっぱらないし、両サイドについたファスナーつきポケットは、スマホや小さめのお財布を入れても自転車を漕ぐときにじゃまにならない。ウエストやヒップ回りはぴったりしているけれど、曲げやすくカットされたひざ回りと、ペダルやチェーンにひっかからないようすぼまった裾に向かってほどよくゆとりのあるラインで、モタつかず、脚がすっきり見える。
男性の店員さんが、ゆったりめのスウェットのトップスと合わせていたのがかわいなと思って、手持ちのビッグシルエットのシャツやスウェットと合わせ、前ファスナーのスプリングコートをバサッと羽織ってみたら、街着としてもいいじゃないと思い、嬉しくなった。

健康的なライフスタイルを目指しつつ、おしゃれも満喫できる時代。それはなかなかいいよな、と「HOKA」を履いた足取りは軽く、ウキウキした気持ちになる春の日だ。