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【 Care’s World case 09 弱さを受け入れ、病気とともに生き、明るい未来へ 〜エッセイ漫画家 つくし ゆかさん 〜 / -後編- 】

前編では、ゆかさんが強迫性障害と診断された前後の様子や
その経験をもとに本を出版された経緯等について伺いました。

後編では、その変遷を経た今の心境ついて深掘りしていきます。

前編はこちら
Care’s Worldについてはこちらから。


♢聞き手:山之内 せり奈(看護師/結庵-むすびあん-)
♢話し手:つくしゆか(エッセイ漫画家)
♢撮影・執筆・編集:上 泰寿(Care’s World / 編集者 )
♢インタビュー場所:あいなか~4丁目の家~

今の自分を受け入れ、ともに生きる

ゆか:私にとっての転換期は父の死でした。病気を打ち明けた時もあまりいい顔をしてくれなかったし、私の症状もあまり理解してくれなかったから、ずっと嫌いだったんです。

そんな父は癌になり余命宣告を受けて、亡くなってしまいました。病気に抗って一生懸命闘い続けたけど、別れは急に訪れました。どんなに抗っても、頑張っても、死ぬときは死ぬんだ。どんなに怖いと思っていても、起こっちゃうものは起こっちゃうんだって、そのときに気づきました。

だから、私が「ガスの元栓を閉めていなくて火事になるかもしれない」だったり「鍵が開けっ放しで泥棒が入るかもしれない」と、どんなに心配していても、父の死のように予期せぬことは突然訪れるかもしれない。その気づきがきっかけで確認するのを止めるようになり、自然に症状が良くなっていきました。

もちろん、急にハッくんが現れて不安になることもあります。でも、毎日が不安になることはなくなって、とても生きやすくなりました。

ゆか:まだお薬は飲んではいるんですが、病気と上手に付き合っていけてるのかなと思っています。それは強さではなくて、自分が楽に生きる努力をするというか。弱くてもいいし、楽でもいい。そんな自分を丸ごと受け入れて、生きていこう。そんな気持ちで日々を過ごしています。

今の世の中は一生懸命でいないといけない傾向があると感じていて。肩の力を抜いて、みんな生きていけたらいいのに…。講演会や個展を行うようになって「どうしたら、治るんですか?」と質問を受けるんですが、最近「治ろうと考えるから良くないのでは?」と思っていて。治そうとして肩肘張ってしまい、雁字搦みになるから、小さなことでもやりたいことを見つければ、そういったものが解けるのかなと考えています。

何でもいいんです。ゲームでも、野球でも、ボランティアでも。私自身、人が怖かったのに、今では人と接するのがとても楽しくなっています。だから、本当にやりたいことをゆっくりでもいいので見つけていくことが大事だと思います。

明るい未来へ繋げていくための情報を

ゆか:ただ、「見つけなきゃ!」とか「いついつまでにしないといけない」とやりたいことを意識しちゃうと、見つけられるものも見つけられないと思うんです。

ある友人と「落ち込んだときに何を話すか?」とたまに話すんですけど、少し先の未来の話をするんですよ。「こういう漫画を描いて、それを発表して、賞を獲って、有名な雑誌で連載されるんだ」とか。

それが周りから「無理だ」と言われることでもいいんです。大事なのは、とりあえず口に出してみること。すると、とても楽しくなってきて、明るい未来に繋がっていく感覚がするんです。

だから、親や周りの人は心配すると思いますが、まずはゆっくり話を聴いてあげてほしいです。そうすることで、その人にとって「やりたいことは何か?」を少しでも引き出せるきっかけになると思います。

でも、その人自身も苦しいけど、背中を押す人たちも大変です。他の大きな病気でも言えますが、特にご家族は第二の患者といえます。

ゆか:今いろんな場所で話を聴いてもらえるコミュニティスペースが増えてきています。強迫性障害といっても、理解してもらえるのは患者さん本人か身近でそういう症状を見てきた人がほとんどなので、そんな人たちに話を聴いてもらえたら気持ちがとても楽になると思うんです。

いきなり、公的機関や病院だとハードルが高いと感じていて。まずは「自分がこういう状態なんです」と話せて、それを受け入れてくれる場所に足を運ぶのが一番です。また、病気に応じた助成制度もたくさんありますが、それも案外知られていないことが多いです。

それで余計な支出を重ねて、経済的困窮に陥ったりする可能性もあります。結果、病院に行かなくなり、症状が悪化してしまう…。だから、病気で悩んでいる人たちが活用できる情報を共有する場も必要かと感じています。

そのままで大丈夫だよ

ゆか:鹿児島に引っ越してから、私の病気のことを理解してくれる人が増えましたし、こうやって誰かに話せるようになったのはとてもありがたいと思っています。

だから、強迫性障害になって、私と似たような境遇の人たちがいたら伝えたい。きっと、いつか報われる日が来るから、そのままで大丈夫。あなたのことをわかってくれる人が現れるからって。昔は、人に自分の病気や症状がバレないように、健常者と変わらないフリをして生きてきました。「変な人」って思われたくないがゆえに。

本の最後に「持ってる荷物を捨てなくていい」「とりあえず、ポンって置ける人や場所は絶対にあるから、心配しないで」とメッセージを載せています。不安や悩みって捨てたくても捨てきれないから、抱えて歩かないといけません。これからの長い人生の道のりも、それを抱えていかないといけないから、それをサッと降ろせる場所を見つけてほしいです。

私は本屋で漫画を買って、朝から夕方までカフェでずっと読んだりしています。そのときだけ、何も考えなくていいから。

ハンドメイド作家として制作した作品たち

ゆか:好きな本に「氷だとカチカチで、どんな枠にも収まらないけど、液体みたいになったらスルーと入っていくよ」と書かれているのですが、それを意識して生きています。以前は、自分が勝手につくった型があって、それにしっかりハマるようにしてきました。

でも、それだと、狭い世界に捉われてしまって、苦しみ続けるかもしれない。やり方は一つじゃないですし、いろいろあります。それを教えてくれたのも絵を描くようになってからです。

私自身、まだまだ世の中には知らない世界がたくさんあります。小さなことからでも、一見関係なさそうなことでも、幸せに繋がるきっかけはつくれるし、どんどんやってほしいし、疲れたら休めばいい。きっと大丈夫。それは、あなただけじゃないし、見守ってくれる人がいるから。

今回取材場所として提供してくださった“iがずんばいnishiishiki”の本田さんとゆかさんは友人同士 
本田さんも含めてのショット

(終わり)

(前編はこちら

●基本情報
屋号:つくし ゆか
URL:https://www.instagram.com/tsukushiyuka/
SNS:https://twitter.com/hrm_i0630
その他:『極度の心配性で苦しむ私は、強迫性障害でした!!』のお買い求めは以下のリンクから。
https://tsukusi.thebase.in

今回の取材場所となった"あいなか~4丁目の家~”(iがずんばいnishiisikiの活動拠点)は鹿児島市の北部・伊敷団地にあります。これから先の50年…100年と暮らしが続いていく中で、ひとりでも多くの人が安心して暮らせるように、きっかけづくりをしています。

●編集後記
初めて『極度の心配性で苦しむ私は、強迫性障害でした!!』を読んだ時に、私も同じような不安を感じたことがある!と思いました。強迫性障害と言わずとも、生活の中で不安や心配を感じることはあると思います。そんな時、私も「はっくんがやってきてな。」と思うようになりました。かわいい姿のはっくんを思い出すとどこか肩の力を抜ける気がします。
強迫性障害やうつなどの目に見えない病気は、周囲の方の理解を得られなかったり、誰にも相談できないという方もいらっしゃると思います。病気ではなくても、日頃のモヤモヤは吐き出せる場所へぽいっとしたいところ。ゆかさんや私がいます♬ぜひ少しでも荷物をおろせる存在になれたらいいな~
ゆかさん、貴重なお話をありがとうございました!また語りましょう。
(山之内)

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ご質問・ご要望は下記へお問い合わせください
Care's World事務局
E-mail: cares.world1518@gmail.com [玉井・山之内・上]

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