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R&D担当の波乱万丈ノンフィクション

こんにちは!カルディオインテリジェンスのR&D担当の波多野です。
今回は、改めて私がこのカルディオインテリジェンスでR&Dを始めたきっかけと、現在進行中の事業についてお話してみようと思います。
山あり谷あり、波乱万丈ノンフィクションのはじまりはじまり…


「世の中にないなら自分で作る!」

カルディオインテリジェンス創業時に2つ目の事業ビジョンを描きました。それを実現するために新規事業開発の担当になったけど、どうも実現のために必要な基礎技術が世の中にないらしい…「だったら自分で開発するしかない!」これが、私がカルディオインテリジェンスでR&Dを始めた動機です。

私のこれまでのR&D経験で一番長いのは有機ELディスプレイ、とくに曲がるディスプレイの開発でした。「世界で一番きれいで曲がるディスプレイを開発したい!」と、100μmくらいの厚みのディスプレイを開発していました。信頼性試験のためにと、開発したディスプレイの1000回耐久曲げ試験をしたり、ハンマーでたたいてみたり、80度に温めてみたりもしていて、今思えば、ずいぶんディスプレイに対してひどいことをしたかもしれません。

胸を張って”R&D担当”と言えなかった当時

カルディオインテリジェンスは医療AIの会社なので、R&Dのためにプログラミングの知識や技術が必要です。ただ、プログラミングに関してはあまり経験がありません。
研究開発経験としては、大学の学部の卒論で、ニュートリノの暗電流の測定のためのデバイスドライバを開発したり、ニュートリノ振動のシミュレーションをしたことがあったのと、この会社を創業する前に勉強のために土日にプログラミングスクールに通ったりはしていました。しかし、それはだいぶ昔の話で、あまり得意な方ではなかったというのが自己認識でした。

なので、「誰もできないなら自分でやってみよう!」とは決めたものの、正直自信がなかったので、当初は、R&Dを自分でやりますとは言わず、「自分でも理解できるように、プログラミングの勉強をすることにしました…」と会社の他のメンバーに伝えていました。

参考書の熟読からスタートした私のR&D

そうこうして、Python の本など、勉強用の本を10冊買ってくるところからR&Dを初めたのですが、何に驚いたかというと、AnacondaとかJupyter notebookという最近の開発環境が優秀すぎて、私でもデバッグが簡単にできる!ということでした。5行くらい書いて結果をグラフ等で出力して、正しいか?を検証しながらコーディングできるので、「タイプミスが多い私でもちゃんと動くものができる…最新技術ってすごすぎる…!」と1人ですごく感動したのを覚えています。

そして、あまりに進化した開発環境と、Pythonの潤沢なライブラリーのおかげで、思い描いていた基礎コンセプトは、コーディングの練習を始めて3か月くらいで実現できました。

アルゴリズムを組み始めて約半年である程度形に


私が今開発に取り組んでいるのは、心電図波形を自動解析するプログラム医療機器です。なので、実際に医療現場で使っていただくことを考えると、いろんな心電図波形に対して、きちんと結果を出せる必要があります。昔ディスプレイに対して、いろんな耐久試験をしたなぁと思い出しながら、開発したアルゴリズムの評価用試験を組んでいきました。

AnacondaとJupyter notebookという素晴らしい仲間がいつつも、私のコーディング能力では、かっこいい試験系は組めませんでした…。有機ELディスプレイの開発のために、延々とボタンを押し続けた経験があったので、テストのためにボタンを何度も押し続けることは苦ではなく、何日も、何か月も、延々と、条件を入力してボタンを押しては、メモを取り、うまくいかなかったところは改善するという作業を繰り返しました。

その結果、私自身もすごく驚いたことに、最初に組んだアルゴリズムから、それほど大きな変更をせずに、手元にあった100個の心電図データに対応可能なアルゴリズムが開発できてしまいました。開発を初めて半年くらいたったころだったと思います。

論文化を目指して新たな仲間をゲット!

開発を始めて半年が経った頃、「彼女はプログラミングの勉強をしているらしいから、どうも研究開発をしているらしい」と社内で私に対する認識が変わってきました。そして、まずは論文にしないと!というアドバイスをもらいました。医療業界では、事業化するためには、論文に発表することが重要らしいということが、私も少しずつ理解できてきていたので、やってみようと思いました!

論文にするとなると、「手元にあるデータでやってみました!」では、受け入れられる気がしません…。なので、少なくとも医師のアノテーション付きの様々なバリエーションの公開データを用いて解析をやってみる必要があります。あと、私が手作業でボタンを押し続けているところもなんとかしないといけません…。

この時点で、2000行くらいのコードは書いていたものの、私のコーディング力では、さすがにこれ以上は無理ということ、また素人が作ったアルゴリズムで論文化を目指すのもどうかということで、1人外注のエンジニアさんをつけてくれることになりました!

このエンジニアさんがすごく良い方で、エンジニア経験のない私の実現したいことを、しっかりとくみ取ってくださる方だったのです。
私が絵にして社内で説明していたものだとうまく伝えられなかったコンセプトが、このエンジニアさんにお願いして、エンジニアさん用語に直してもらうと、社内で通じるものになる。しかもそれを、丁寧にコードに落として下さる。私としては、この外注エンジニアさんには感謝しかありません。この方の協力を得て、公開データベースの様々な心電図波形で、開発したプログラムの評価を行っていきました。

この評価にも、結果として1年程度かかったのですが、様々な形の心電図波形に対応可能なことが分かり、開発したアルゴリズムの頑健性が確認できました。公開データベースの心電図波形は見慣れない波形も多かったので、正直少し心配していたのですが、自分で言うのもなんですが、結構優秀なアルゴリズムだな~と思いました!

医学論文作成の難しさを痛感した後の達成感!

評価結果が出てきたところで、論文化せよ!という最初の指令を思い出して、論文原稿の作成に取り掛かりました。

有機ELディスプレイの研究開発をしていたときに、研究成果の国際学会の発表はしていたので、4ページくらいの英語原稿は書いていたのですが、それも見様見真似で書いていたのと、医療分野の医学論文の書き方には独自ルールがあるようで、プログラミングに引き続き、またもや手探り状態です。

論文作成の段階になると、CEO(医師で論文をたくさん書いている方でもあります)から直接アドバイスをいただくことが増えてきました。厳しいお言葉をいただくこともありましたが、今まで一人で黙々と作業をしてきた私に初めて指導教官ができた有難さもあり、戦々恐々の中でも泰然自若な心を持って論文作成に取り組んでいました。書き直すと指導教官から指導を頂き、また書き直すと指導教官から指導を頂き…を繰り返した結果、去年末にようやく英語の原稿が完成しました!
大変なことが多い作業でしたが、その後学会に提出した原稿はそれほど苦労なく書けましたし、レベルアップできたと思うと、今は感謝しかありません!

描いたビジョンが世の中に貢献する未来を夢見て

その後、簡易的なUIUXのプロトタイプも開発できて、お客様に見ていただける材料がそろってきました。
現在は、創業時に実現したいと志した2つ目の事業を、2025年か2026年には事業化できると良いなと、事業開発を進めています。
医療AIの研究開発経験がなかったけど、自分で描いたビジョンと事業戦略の実現のために始めたR&D。改めて思うのは、「やっぱり私は研究開発が好きだな~」ということです。そして、自分が研究した研究成果がお客様に使ってもらえて、世の中に貢献できたらすごく嬉しいので、事業化目指してこれからも頑張りたいと思います!