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喉風邪/春風/豚のテーマパーク【雑談】

 喉が昔から弱い。ちょっとなんかするとすぐにヘタる。いっぱい喋ると翌日はガサガサになってる。カラオケなんか行くと終わる頃にはリッキー・ダディ・ダーティみたいな声になる。風邪をひくときは必ず喉からだ。

 高校の修学旅行の前日の夜に喉風邪をひいた。絶対治したかったから成田空港の薬局で風邪薬を手当たり次第に買ってフリスクのノリで飲みまくった。薬が胃の中で「あってはならない」ブレンドをされたせいか、当時の北京の空気(全盛期の四日市のようだった)のせいか、1日目の夜、喉が腫れ上がって常に白玉団子が詰まったような状態になった。

 音階で言うと「ド」の音以外全部裏返る。ちょっとテンションが上がると何言ってるか全然わからない。だから最初の数日間はほとんど黙って過ごした。がんばって喋っても聞き返されるだけだし、最終的には「あぁ、はは(笑)」と絶対聞き取れてないけどとりあえず相槌打ってるときの反応をされるだけだったからだ。

 今回も一昨日ぐらいからずっと喉が痛い。気づいた時にはもう遅い。このまま確定で風邪をひくだろう。もうオープニングテーマが始まっている。「ありったけーのー♪」がずっと聞こえてるぜ。オープニングテーマだけ流れて終わったことはまだ無い。そんなことがあったら神回なんだけどな。

 「ありったけーのー ゆーめをー かきあつーめー♪」
 ……
 「ウィーアー!♪」

 この番組は、ご覧のスポンサーの提供でお送りしました。

 ええっ!?

 今日は雑談をしよう。雑談だし思いついたことコメントしてくれていいんだぞ。コメント欄があるからな。コメント欄ってなかったか? いやあるな。どう考えてもある。いつだってコメントしてくれよな。コメント欄っていうのがあるらしいぞ。
 あ! ちょっと、しー。耳を澄ませよう。なんか聞こえる……。

 (コメント欄があるぞ)(小声)

 勉強になるなあ。そうなんだってさ。あるんだって。

■ 東風(こち)吹かば……

 東風(こち)吹かば にほひおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ

 現代語訳:東からの風が吹いたなら、風に乗せて香りを届けておくれ、梅の花よ。私がいないからといって、春を忘れてはいけないよ。

 「学問の神様」でおなじみの菅原道真の有名な歌だ。平安京で左大臣まで上り詰めた菅原道真が、藤原氏の陰謀で太宰府に流されることになる。そのときに子供の頃から慣れ親しんだ庭の梅の木に向けて詠んだ歌である。俺の大好きな歌だ。

 ちなみに「左大臣」というと今で言うと首相みたいなもので、当時は他の全ての閣僚が藤原氏みたいな状態だった。どう考えてもいつか失脚しそうだよな。

 子供の頃からの思い出が残る梅の木に向かって語りかけるなんて、1000年前にそんな情緒があったのがまず良い。「春の風に乗せて、香りを届けておくれ」なんて泣けるじゃないか。
 春先の季節風の吹く頃、太宰府で似た香りを感じた道真は「きっと今、京都から風が届いたんだ」と思ったことだろうか。

 俺は受験生だった頃、古文が一番好きだったんだが、そのきっかけのひとつがこの歌だった。歴史上の人物に過ぎなかった「菅原道真」に確かな血潮を感じた。感情のあるひとりの人間だったことに気付かされたのだ。モノクロの歴史の世界がカラフルになった。

 「飛梅(とびうめ)」の逸話をご存知だろうか。俺は最近、どなたかのnoteを拝読して偶然知った。まさしく道真が愛したこの梅の木についての話だ。

 道真の家の庭には、松と梅と、それから忘れたけどなんかの木があって、道真がいなくなって寂しいそれらの木はあるとき「スポーン!」と地面から抜けて、道真のいる太宰府へ向けて飛んでいく。なんかの木はすぐそこに落ちて、松の木は兵庫あたりで力尽きてそこに埋まる。そして梅の木は太宰府まで届いたのだ。ゆえに「飛梅」。太宰府天満宮で今も咲く「飛梅」とは、その梅の木だという逸話だ。

 この話みんなどう思いますか?

 俺はね、なんかガッカリした。なんだろうなこの世界観は。そんなの求めてないじゃん。そんなんじゃないじゃん。じゃあ「春の風に乗せて……」じゃないじゃん。最初から「飛んでこい!👊笑」っつう話じゃん。野球部の先輩じゃん。情緒ゼロじゃん。台無しだぞ。取り消してくれ。

 なんかあるんだよこういうジャンルが。古文って。世界観が全く統一されてないからさ。突拍子もない話がそのまま残ってることがある。

 京都に「一乗寺」っていうお寺があって、あるときその歴史を調べてた。
 「一乗寺の開祖とされる法道上人は、天竺から紫の雲に乗って飛来したとされる伝説的人物である」と書いてあった。そんなわけねえだろ。

■ 豚のテーマパーク

 埼玉県の「日高市」という市があって、すっごくマイナーだ。俺も長らく埼玉県民だったが、うっすら存在を知ってるに過ぎなかった。ボイラー室みたいな存在だ。

 おばあちゃんと孫が住んでいて、人口は2人だ。孫が市長をやっている。

 半年ぐらい前、俺の会社にまさしくその日高市在住の若者が入ってきた。理屈から言えば市長ということになる。「市長?」「違いますよ」。つまり彼はおばあちゃんだ。

 新人研修で何日か1日中一緒にいた。埼玉の同志だから埼玉トークに花が咲く。「埼玉トーク」っていうのは「免許センターが最悪な立地にある」ことを何回も語り合うことだ。それ以外に話すことなんてひとつも無い。無言になると「そういえば免許センターってさあ!」と切り出す。

 「鴻巣(こうのす)ってどこだよ!」
 「ギャハハ!」
 「……」
 「……」

 「そういえば免許センターってさあ!」

 「日高市ってなんかオススメのスポットある?」と聞いた。
 「いやあ、無いですねえ……」
 「……」
 「……」

 「そういえば免許セン……」「サイボクぐらいしかないです」
 「ああ、サイボクか」
 「はい」
 「サイボク」
 「サイボク」

 サイボクってなんだろうな。なんでもいいんだけどな。聞く必要なさそうな感じがする。「埼玉牧場」的なことだろうな。新鮮な牛乳が飲めるとかそんなだろう。なんか知ってる感じで返事しちゃったし。もういいか。山田うどんの好きなメニューでも聞こうかな。

 「豚のテーマパーク サイボク」
 「豚のテーマパーク サイボク!?」

 なに!? 聞いたことねえテーマパークだ。おいおい、急におもしろそうじゃねえか。なんか新鮮なハムとかソーセージとかが食えるらしい。「めちゃくちゃうまいですよ」。そうなの!? おいおいなんだよ。あるじゃねえか良いのが。

 最近行ってきた。本当においしかったから他に言うことが無い。オススメです。

 近くに住んでる学生時代の先輩が、先週の3連休前、「旅行に行きたい」と言い出した。例の「豚のテーマパーク サイボクに行きたい」とのことだった。

 宿を取ってくれたんだが、ちょっと地図を描こう。

ちば(笑)

 サイボクは埼玉(無敵)の左寄り、俺の家は板橋区という埼玉寄りの場所にある。日帰りで行けるが、せっかく休みが合うならと一泊することにした。
 先輩が取ってくれた宿は青丸で、茨城県だった。遠ざかっている。
 なんでだろうな。なんでだ。なんで?

 結局なんでか最後までわからなかった。なんでだったんだろう。なんでだ。

 せっかくなら筑波山にでも行くかということで行ってきた。梅が満開だった。

なんかもやもやする写真


 もう品種によっては桜が咲いてるらしい。俺は梅と桜を咲いてる時期でしか区別してないから、この時期に咲いてる桜を「梅の一種」と考えるようにしているが、詳しい人に言わせると違うらしいな。

 俺の会社の先輩がそういうのに詳しい。15歳ぐらい上だ。ちなみに関係ないけどその人は以前こんなことを言っていた。

 「うちの社長ってほんと良い人だよね」
 「そうですか?」
 「だって社員に人権があるんだよ?」

 社員に人権があることをありがたがっていた。あるに決まってるだろ。

 気づけばまた春が来る。悲喜こもごもな季節だ。俺の会社も3月末で何人か辞めてしまうらしい。人権があるのに。逆に入って来る人もいる。安心してくれ。あるからな。

 見送る側も見送られる側もこれまでたくさん経験したが、今度も笑って見送りたい。新しい門出、暖かい春一番はいつでも背中を押してくれるはずだ。

 電気グルーヴの名曲「March」でお別れ。
 また次回!

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