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方程式11 量が質を生む〜高宮浩之さん後編〜

新卒採用をガンガンこなし、2年連続全国ナンバー1チームに選ばれた神戸チーム。1年間の面接数は1000人を超え、人を見る目にはちょっとした自信も芽生えつつあった。


そして内定式を終えた11月。実績が認められたのかどうかわからないが、次年度の会社パンフレットの企画メンバーに選ばれた。

自分が大学生の頃に感じていた

「6時起床。7時に家を出発、会社到着8時。そこから朝礼があって、プロジェクトの進捗確認会議が1時間、来客と商談して、ランチはコンビニで済ませ、昼から外回り・・・というような具体的な過ごし方を知りたい」とか、

「アルバイトとは違って、仕事は何が面白くて、何がツライのか、難しいのか」

「会社の未来だけではなく、個人の未来つまりキャリアの行く末マップのようなものが知りたい」などを企画書に書き列ねていった。

ライターさんやデザイナーさんと打ち合わせを重ね、先輩の見よう見まねでパンフレットの制作は進んでいく。校正を重ね、色校があがり、最終のミーティング。
 

「この青は、この青じゃなくて、もっとゴッホっぽい青でいこうよ。」
「北野ブルーの方がイメージ合うと思うんですけど」
「いや、カルロ・ドルチの『悲しみの聖母』のような深みが買った青がいいなぁ」

まったく何を言っているのかわからかった。みんな同じ「青」なんじゃないの? そこにこだわるほどの違いがあるの?

その会議では一言も話すことができず、終了後に悶々としながら高宮さんに相談に行った。

「高宮さん、あの青の議論、意味あるんですか? まったく違いがわからないのですが。まして大学生に違いがわかるんですかね?」

「あのな。樫野も毎日多くの学生を面接していると、似たような学生でも違いがわかるやろ? コイツはちょっと気になるなとか、口では良いこと言っているけど、どうも本心は怪しいとか、感じることないか?」

たしかに。面接の時、微妙な言い回しや表情、目つき、態度で、細かな違いを「匂う」ようになってきている。

だから、みんなが「この学生はOK」と言っても

「少し気になるので、ペンディングにさせてください」とか、

取締役が「彼はダメだろう」と言っても、「もう一回見させてください」と食い下がったりできたのだ。

この嗅覚。微細な違いを感じる力。この力は数をこなすことで養われていく。

デザイナーさんたちは圧倒的な色数を見てきているから、僕とはまったく違う見え方をしているのだろう。

だから、その違いが気になって仕方ないのだろう。           そんな色じゃ、世の中に出せないと。

絶対量をこなしたものだけが質感の違いを認識し、           その積み重ねがセンスにつながる。

そのセンスは美しさに通じる。スキがない。

色も、文章も、写真も、紙質も、サイズも、デザインも。

そんな何十年もやってきている人たちにかなうわけがない。

と言うことは、仕事って数をこなすために長くやらないと         身につかないってこと? 

年功主義をバカにしてきたけど、そこには意味があったということ?
僕はこの先続く仕事人生の長い道のりを想像して、           なんともいえない憂鬱な気持ちになった。

楽しんでもらえる、ちょっとした生きるヒントになる、新しいスタイルを試してみる、そんな記事をこれからも書いていきたいと思っています。景色を楽しみながら歩くサポーターだい募集です!よろしくお願いします!