しきから聞いた話 185 竹の春秋
「竹の春秋」
旧市街の奥、山を背にした竹藪に囲まれるようにして、その家はあった。
以前はもっとひらけた雰囲気だったのだが、竹藪を手入れするのがたいへんで、家人があまり気にかけないたちでもあり、家より竹が目立つようになってしまった。近所のひとが気安く筍掘りに来たりして、喜ばれるから余計そのままになる。そのうち裏山の狸やら穴熊までが来るようになり、人やら何やらの寄合所のようになってしまった。
家には老夫婦と、その孫が住んでいた。
働き盛りの息子夫婦は、仕事の都合で遠方