255 潮騒響く文学の島~鳥羽・神島へ
でかけたい病、発病。
5月20日土曜日は雲一つないいい天気になりました。
このところ5月とは思えない暑さに見舞われたんですが、それでも湿度がないだけまだまし。絶好の観光シーズンです。
こんないい天気の日はやっぱり海だな。なら離島に行きたい。
三重県での単身赴任ももう終わるかもしれない。ならば三重県でも離島が多い志摩に行こう。
というわけで、気がついたら鳥羽にいました。鳥羽市は近鉄志摩線でミジュマルトレインを走らせるなど、かなりミジュマル推しです。
鳥羽にはトーバくんとかいうゆるキャラがいるみたいなんですがね。見る機会がなかったです…
佐田浜港から晴れの離島旅へ
鳥羽駅から7分くらい歩けば佐田浜港に到着します。平置きされた本のようなデザインが特徴的です。
鳥羽市には4つの有人島があり、市営の定期船が運行されています。その船の発着場となるのがここ佐田浜港です。4つある島のうち今回は神島に行くことにしました。ある小説の舞台になったことで有名でかねてからずっと行きたいと思っていたからです。神島は鳥羽の港からは最も離れており、地理的には愛知県の渥美半島の方が近いです。
わたしの乗る船がやってきました。この船は牡蠣の養殖が盛んな答志(とうし)島の和具港を経由して神島に向かいます。
結構多くのお客さんが乗られます。和具で降りた方もいましたが神島まで向かう人も多くいました。ほとんどが釣り客のようです。
10:45出航。40分ほどの船旅です。今日は天気がいいので上階のオープン座席で潮風を感じながら船旅を楽しみます。
眩いほどの海の青。愛知県の伊良湖から来た伊勢湾フェリーとすれ違います。
2月に菜の花見に行ったの思い出しますね。このときはどんより曇っていました。やはり海の旅にはスカッとした青空がよく似合います。
20分で答志島の和具港に着きました。漁船がきれいに並んで停泊しています。ここもなかなか絵になる光景ですね。次はここに降りて歩いてみたいと思わせてくれます。
和具港を離れてしばらく進むといよいよ今回の旅の目的地、神島が見えてきます。
光る海の神島の集落が見えてきました。あそこが港。いよいよ到着です。
11:25到着!入港する際防波堤に多くの釣り客がいました。この乗客たちもほとんどが釣りをしに防波堤に向かっていきます。
神島は小説「潮騒」の舞台
さて、先ほどこの島がある小説の舞台になったとお話ししました。
それは三島由紀夫の「潮騒」。三島の作品のなかでは珍しいといわれる純愛小説で、何度も映画化されているのでそれで知っている方も多いと思います。この作品の舞台「歌島」は神島の古名であり、この島がモデルになっています。
わたしは釣りはしません。次の船が来るのは4時間後なのでゆっくり島を散策することにします。
港のすぐ近くには無数のタコつぼが並べられています。タコはこの島の特産品。この付近には三河湾に同じくタコが特産である日間賀島もあります。この辺りの海にはタコが多く生息しているようです。
神島の人口は400人あまり。港の周辺であるこの辺りにしか集落はありません。民宿や食事ができるお店が数件だけあるほかはコンビニやスーパーなどは一切ありません。車はありましたが車道がほとんどなく、島特有の狭い路地がほとんどとなっています。信号も1つもありませんでした。
それでは散策に参りましょう。この島は平地が少なく、少ない民家も坂や階段の途中に建っています。
こちらは時計台跡。かつては村でただ一つの時計がここにあり時を刻んでいました。
ここから階段を登って島一周の散策路を歩いていきます。
振返れば、海。
カラフルな屋根の色が海の青、空の青に映えて美しいですね。
階段を登ったところに白い鳥居が美しい八代神社がありました。小説「潮騒」の中でも公開の無事を祈り、良縁を祈る場として登場しています。
ひぃひぃ息を切らしながらようやく本殿に到着します。
ここの鳥居は東を向いており、海の向こうの日本の起源となる三社、伊勢神宮、橿原神宮、伊弉諾神宮に向かって建っています。
ハイキングしながら灯台、さらに小説の舞台の地へ
ここからはハイキングコースのような場所を歩いていきます。何回か蚊に刺されました。虫よけは必須でしょう。
時折海が顔を出し、ここが海に囲まれた小島であることを思い出させてくれます。向こうに見えるのは渥美半島。5キロしか離れておらず、14キロ離れた鳥羽よりも圧倒的に近いです。少ないですが渥美半島の先端、伊良湖岬からもここまで船が出ています。
しばらく歩くと灯台が見えてきました。神島灯台は日本屈指の海門である伊良湖水道を照らす灯台として重要な役割を果たしています。
ここにはベンチもありますので、渥美半島や行き交う船を眺めながらゆっくり時間を過ごすことができます。
しばらく山道を歩くと突然現れたこの廃墟のような建物。監的哨(かんてきしょう)と呼ばれ、伊良湖岬から放たれた大砲の試射弾の着弾地を確認するための建物として建てられました。戦後打ち棄てられ、今もその姿をとどめています。
伊良湖水道を行き交う船もその向こうの渥美半島も一望できる、島一番のビューポイントです。
三重県側、志摩半島も一望することができます。
小説「潮騒」では主人公の新治と思いを通わせる初江が愛を確かめ合う重要な場所として描かれています。2人への思いを馳せながらここを訪ねると胸の熱くなる場所です。
監的哨を抜けると、これまで幟の多かった道は下りがメインに変わってきます。島の少し突き出た部分、弁天岬方面に向かう道の左手に開眼が見えてきました。
ここはニワの浜と呼ばれる海岸。初江と新治の母がアワビ採りの競争をした場所として描かれています。
小説の舞台となった場所であることのほか、ここは市の天然記念物となるカルスト地形が残る場所としても有名です。露出した石灰岩が二酸化炭素を含んだ雨水に晒されてとかされ、このような塔上の形になって残りました。
ニワの浜から少し歩くとまた海岸に出ました。こちらは古里(ごり)の浜と呼ばれ、大きな岩が転がっているのが特徴です。
ニワの浜まではハイキング客も多かったのですが、ここまで来たのはわたし一人でした。みなさんはどこに行ってしまったのか… 灯台方面に戻ったんでしょうかね。
これまでは島の東から南海岸を歩いてきました。西海岸は観光資源は少なめ。港に向けて潮風を受けながら戻ってきました。
港に戻り食事そしてお約束の猫との遭遇
2時間ほどで島を一周してきました。あれ?さっきここ来たような…。2時を回り、唯一営業している食事処に入りました。
島の食事処といえば、海の幸かな!と思ったんですが意外に豚の生姜焼やパスタなどのメニューでした。季節にもよるのかな?でも、赤だしの中身はもずく。思い切り潮の香り。これだけで充分島に来たことを実感させてくれました。
船の時間まで時間があったので集落を散歩してたらいました、猫! 島といえば猫でしょう。生姜焼きを食べた後に見つけたginger catです。
ただ島は猫が多いイメージですが、今回であったのはこの1匹だけ。島にもよるのかな?でも出会えてよかった!
そんなこんなで15:50。帰りの船の時間が来ました。
散策も2時間で終わり、少々時間を持て余しましたがそれも島旅の醍醐味というもの。そんなにあくせくしても仕方ありません。
小説の舞台となりましたがそれを前面に出して観光地化しているわけでもなく、何事もなかったかのように生活を続ける普段着の島でした。
忙しなく、社会の軋轢にもまれ疲れたらまた心をリセットしに訪ねたいと思いました。
この記事が参加している募集
サポートいただけたら小躍りして喜びます! 今後一層フットワーク軽く旅先に向かい、情報提供に努めたいと思います。 よろしくお願いいたします!