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当科のカテの得意な癌腫と臓器

当科に来られる患者さんは、やはり標準治療で相当に困ってらっしゃるので
得意不得意関係なく、治療にチャレンジすることも多いのですが、

特に成績のよい癌腫と臓器を書いておきます。
(あくまで、後半戦での成績です)

まず、大腸癌。
特に肝転移の成績は、何度も学会発表していますが、類を見ないほどの奏効率と生存期間だと思います。
大腸癌に関しては、縦隔や肺、一部腹膜など、多種の臓器も経験しましたが、
うちの選択する動注との相性が最も良いがん種だと思っており、
毎年成績を報告しています。

癌腫で言えば、他には婦人科癌や乳がんなど、
女性のがんが成績が良いと思います。
いずれもしっかりと標準治療を実施された後でカテをしていますが、
それでも基本的にこの2つはタキサン系抗がん剤の動注への反応が良いです。
また婦人科癌は、最もいいのが卵巣がんですが、
抗がん剤は基本全ての婦人科癌で最初はTCと同様に
プラチナとタキサンを用いています。
この組み合わせは、全身投与でも、どの婦人科癌でもまずTCを考慮するのと一緒で、かつ両者とも、動注による腫瘍内抗がん剤濃度の上昇が治療効果によく反映されて、成績が良いです。
乳がんに関しては、他の癌腫よりも全身がんの性格が強いので、できるだけ全身薬物療法を勧めていますが、例えば肝転移がラッシュで増悪しあっという間に肝機能が悪くなってもう手がないと言われた患者さんに対して、何度も肝転移を改善して再び全身薬物療法に戻っていただいたことがあります。どちらかというと、短期間の救済的位置付けですかね。乳がんは、全身的がんなので、安易に局所治療を選ばず、ここぞというときのリリーフと思ってください。

希少癌も結構やってます。そもそも標準治療がほとんどありませんので、うちに相談にくるケースが多いです。GISTや神経内分泌腫瘍などの肝転移は結構やっています。これらは通常の動注が効かない腫瘍なので、塞栓主体で治療を組み立てるためか、肝動脈が比較的早く治療回数が大腸癌肝転移などと比べて少なくなってしまいます。ただ、ビーズでの塞栓で腫瘍の減量をしやすいタイプの悪性肝転移です。

肺がんは、喀血や呼吸苦など症状があるときに、そして、末梢型ではなく縦隔に近い原発や肺門リンパ節に対して実施します。肺がんは、薬物療法、遺伝子治療の進歩が目覚ましく、以前と比較しカテをする機会が減りましたが、それでもこれら先進的な治療後にでも症状緩和のための腫瘍減量を目指して実施しています。
ただ、カテは前半戦では絶対にやるべきではないがん種だと思っています。
肺がんは、遺伝子をしっかり調べて、まずは薬物療法をひとつずつやっていきましょう。

なかなか成績が芳しくないがんの代表が膵癌です。
原発は、膵炎を合併するのでできませんし、肝転移も他の癌腫と比べて明らかに成績が悪いです。膵癌は、カテうんぬんではなくどの治療法でも最も難渋する癌腫であり、今後抜本的に癌治療が変わり、膵がんの制御ができる時代になるといいなと切に願います。あと、効果に差がありすぎるのが胃がんですね。肝転移を主にしますが、胃がんはスピード感が患者個人間で全然違います。カテの相性が良い方もいるのですが、他の癌腫よりも少数で、かつリバウンドも早い印象です。こちらも、肝転移のみ急激に悪化し、他の薬物療法が難しい時のリリーフ的に実施する場合がほとんどです。

忘れてました、原発性肝がん。
そもそも、肝がんは肝炎から肝硬変となり、それを母地として発生することがおおかったのですが、今では肝炎関係なく発生することもあります。
僕が研修医の時は非常に患者さんが多かったのですが、今は肝炎がほぼ撲滅されたので随分と治療機会が減りました。さらに、ガイドライン的にも、カテより先に薬物療法が推奨されるようになり、カテと抗がん剤治療の両方ができる自分としては、後者の方を先に実施することがほとんどで、その後の最初にカテをしたりします。ただ、患者数は激減しており、新規で治療するケースは年にほんと数人だけになりましたね。


他、がん以外にも、がんと名のつかない悪性腫瘍を含めれば
皆さんがお困りの悪性疾患は山ほどあります。

当科では、ガイドラインをまず推奨していますが、
ガイドラインだけで完治する早期発見例はよいものの、
進行して見つかった患者さんはまだまだガイドライン治療だけでは
最後は癌死します。
当科は、その最後の結論は覆せなくても
そこにいたるまでの人としての生き方、QOLの改善
最終的には生存延長を目指して、
癌治療の後半戦で、解剖の条件がカテにあった方を治療しています。


タイミングと解剖が、カテするべきかどうかのポイントとなり
これは、癌治療全体を理解している執刀医でないと判断できません。
そういう意味で、肩書きに腫瘍内科のついた放射線科専門医、IVR医の僕は
変わり者だと思っています。


カテを考えてみたい方は、迷わず外来に相談にきてください。
迷っていても、実はそもそも適応でない場合は、
適応でないカテのことを、ずーっと考える無駄な時間になってしまいますし、
将来適応になりそうな患者さんが、全身状態が悪化して来院されても
時すでに遅し、以前ならカテが有効だったと思われるが今はカテさえできない
そんな方も多くいらっしゃいました。

まずは受診。

聞いちゃった方が速いですよ。



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