手術(カテ)の上手い、下手


最近、同じグループの若い外科の先生が
サブスペとしてIVRを勉強したいと、週2で
吹田にカテを手伝いにきてくれている。

もう50超えると、若い医者と話す機会も激減して
特に自分は部下を持たないフリーランスなので
彼との話は、自分にとっても楽しいし勉強になる。

内科医に教えるのと違って、外科の先生に教えるのは初めてだが
かれの能力が優れているのか、外科医だからか
とにかく飲み込みが速い。

そんな中、僕が彼にいくつか教える中で特に重点を置いているのが
無駄にカテを動かさないこと。

カテって、1m50cmくらいあるんですよ。
そのカテの先端を、いろんな角度で分岐する血管の中に進めていく。

僕が研修医のときは、田舎で医者が少なくて、
2年目からは自分が上司になって1年目を指導するような状態だった。
そんな状態でも緊急カテもなんでもやった。
やらざるをえなかった、医者がいなかったから。

だから、positiveに言えば、今の先生方の10倍、いや50倍くらい
カテを若い時にやれたと思う。
誰も教えてくれない、ちょっとしたコツ、テクニック。
全て、患者さんの治療を通して自然と身につけていった。

いま、癌治療は薬物療法が主体。
カテは、もはや僕のようなマイナーな医者ががん治療として実施するか
緊急の出血、骨盤骨折などでERで実施するくらいに激減している。
当然、若い先生方に修行の機会はほとんどない。

今、教えている彼も、僕のように癌治療としてカテを覚えたいのではなく
ERで、緊急カテをするために実力をつけたいと。

それでもいい。
培ってきたこの、まあ、どんくらい上手いか正直わからんけど
自分の25年のカテ人生で習得した何かを誰かに教える、伝えることは
おもしろいなあ、そう思った。

そして、下手くそなカテ。
これは、とにかく、カテやワイヤーをがしゃがしゃ動かす人。
入ったらラッキーくらいにとにかく早く動かしている
血管で、繊細なんだよね。そんなに乱暴に動かして、結局カテはなかなか入らない

彼に今教えているスタイルは
狙ったところに、そのまままっすぐ入れるカテ。
余計なことは一切しない。どんなに曲がった血管でも
それに合わせて、そっとカテとワイヤーを置きに行くだけ。
だから、(殺しはしませんが)、ほとんどの血管は瞬殺で挿入できます。

他の施設で、カテをめっちゃがしゃがしゃ動かしている先生みると
言葉にはしませんが
あ〜あ、ちゃんとした指導を受けてないんだな、と思います。

もう、彼もうちに通うようになって、外科医で忙しいのでいつもこれるわけではないのですが、3ヶ月目になります。
うちのスタッフたちとも随分と慣れて、もうカテ室のメンバーの1人として活躍してくれています。

嬉しかったのは、僕がどんどん、カテや口を挟まなくなっても
ちゃんと血管にカテをひとりで入れることが多くなりました。
みていても、過去にちょっと教えたことのある複数の先生方より
圧倒的に上達が速い。

これは、単純です、理由は。

素直なんです。
そして、探究心がある。
疑問があったら、すぐに質問してくる。

こういう先生方がいまの医療界にどれだけいるかわかりませんが、
自分が若かったとき、これではだめだと放射線科の医局を辞めて
がんセンターにいって、その後フリーターになって
自分の信じるがんカテをやり続けている、当時の前向きだった若かりし頃を
思い出させてくれます。

あと、徳洲会はいいですよ。
病院が違っても、同じ徳洲会の仲間。
困ったら手伝い合いますし
教育もします。
うちの先生も、離島の応援とか結構いかれてます。

大学だと、科が違うだけで大きな壁があるのに、
徳洲会は病院の間の壁がない。
こういうところが好きですね。

ちなみに、僕と同じような仕事をしている僕の親友は
今、南部徳洲会にいて、飲み友達であり、かつ、良き相談相手です。
骨折したとき、毎週、僕の患者のカテを沖縄からやりにきてくれました。


そんな感じで、まとまりがないブログでしたが
教える楽しみを久しぶりに噛み締めています。
面白い。



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