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初めての道

開通してからすでに30年近く経つ東京湾アクアライン。

先日、初めて自動車で横断する機会があった。

最近、自動車そのものに乗らない生活をしているので、仕事とはいえ久しぶりに自動車に乗るというだけで子どものように嬉しくなった。

後部座席に座り出発。

通り過ぎる街を眺めているうちに高速道路へ。

数ヶ月ぶりに乗った高速道路を一気に駆け抜ける。

以前は100キロ近いスピードで走り続けることが快適だった。

かつて自分で高速道路を運転したことはほんの数回。
ほとんどが乗せて貰っていた。

行きは時間に追われていたせいもあり、何台もの自動車を追い抜きながら、右に左に空いている方の車線に変更しながらのドライブ。

壁に当たるのでは…と、しばしヒヤヒヤしていた。

他人の車に乗っていて恐いと思ったのは初めてだった。

やがて東京湾アクアラインにさしかかり、視界に海が広がった。

けれど天気が悪かったせいもあり、あまり開放的な気分にはならなかった。
船も鳥も見えない、くすんだようななまり色の海。

それはまるで白黒映画のように、今まで見た中で一番寂しいと感じた海の景色だった。

小雨が降りそうで降らない、気持ちまですっきりしない空虚な午後。

この日通った道は、私にとっては未知の道。

所用の後の帰り道は、恐かった行きとは異なり、落ち着いた安全運転でのドライブ。

窓外には、行きとは異なる景色が広がる。
初めて通る道からの景色は珍しく、写真の代わりに目に焼き付ける。

やがて街中に降り立った時、つい先ほどまで、海という大自然に包まれていたことに気づく。

一見寂しそうに見えた海に、実は知らず知らずに癒されていたのかも知れない。

往復で約2時間。

初めての道での薄曇りのドライブは、一期一会の思い出の旅となった。


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