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さんたんたる鮟鱇 村野四郎

♪ https://www.youtube.com/watch?v=dJv8-WwyCzY
    へんな運命が私をみつめている リルケ 

 顎を むざんに引っかけられ
 逆さに吊り下げられた
 うすい膜の中の
 くったりした死
 これは いかなるもののなれの果だ

 見なれない手が寄ってきて
 切りさいなみ 削りとり
 だんだん稀薄になっていく この実在
 しまいには うすい膜も切りさられ
 もう 鮟鱇はどこにも無い
 惨劇は終っている

 なんにも残らない廂から
 まだ ぶら下がっているのは
 大きく曲がった鉄の鉤だけだ


鮟鱇 アンコウ
顎  あご
吊り つり
稀薄 きはく
廂  ひさし
鉤  かぎ

さんたんたる鮟鱇
『抽象の城』(1954年…宝文館刊)

村野四郎 むらのしろう
1901~75
東京生まれ。慶大理財科卒業後、実業家の道を歩む。
『体操詩集』が実践的作品として注目された。
『亡羊記』で読売文学賞を受賞。

悲しい詩です。( ノД`)シクシク…

🌺読んで頂いて、どうも有難うございました。m(__)m🌻



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