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私の青春時代を取り戻したような時期

「偏愛」の意味がずっと一つのものが好きなことだとしたら、私には今偏愛しているものがない。
物事に熱しやすく冷めやすい私。そんな私でもマイブームが何度か訪れたので、その一つを書いてみよう。

休日に、娘がK-POPアイドルのDVDをテレビで観はじめた。
私はそのころ、Webライターではないが、在宅で仕事をしていた。

はじめはその映像を横目で眺めていた。
そのグループをテレビで見かけたことはあっても、何の関心もわかない。派手な衣装やメイクに、派手なパフォーマンス。
ふぅ~ん。冷めた目でいたが、途中いい曲だなと思えるものがあって、いつのまにか画面に見入っていた。

さらに、曲と曲との合間の、メンバー同士のわちゃわちゃしたトークが面白い。
日本語が上手くしゃべれないメンバーが、つたない日本語をしゃべるのも可愛く思えた。
いつしか、テレビの前に正座し、夢中になって画面にくらいついていた。

そのDVDを観てからというもの、娘と一緒に、グループの情報をいろいろあさるようになった。
Twitterやブログで、メンバーについて発信している人の記事をひたすら読むのが日課。
昔のオーディション映像まで探し出しては、娘と大騒ぎしていた。

なんであんなに夢中になったのか。決して皆がイケメンではないが、それぞれ個性的なのだ。身のこなしがおしゃれ、バラードやラップがしびれる、日本語が達者、お調子者、演技がうまい……。
メンバー同士のじゃれあいも、微笑ましくていつまでも見ていられる。
娘と情報交換をすることが毎日の楽しみに。
「Gがパリコレに出るんだって、Tちゃんのラップ素敵だよね、Sの髪型笑える~」
情報収集は終わるところがない。

DVDを借りたり、YouTubeを観たりするだけでは飽き足らず、とうとう東京ドームのライブにも行った。
大阪のライブへ、東京から夜行バスで行ったことも。炎天下の中グッズを買うのに何時間も並んだり、ペンライトで応援したり。

何もかも初めてのことばかり。
それまで、アーティストに夢中になったことはない。
青春時代を取り戻したように、娘と思いっきり推し活を楽しんだ。

夢中になりはじめたのは、娘が受験期で、イライラしながら毎日を過ごしていた時期だ。私も在宅ワークで、日中人としゃべらない日々なのでちょっと鬱々としていた。娘が学校から帰ってから2人でアイドルの話をするのが楽しみだった。友達同士のように話が尽きないのだ。

そのうち娘は高校へ進学し、私は近所の薬局で働くことになる。
娘は新しい友達と学校生活をエンジョイし、私は私で慣れない仕事を覚えるのに必死。
さらに、メンバー周りのスキャンダルが発覚してがっかりすることが重なり……。だんだん、あんなに夢中だったグループの情報も追わなくなってしまった。
それでも、夢中になった日々に後悔はない。素敵な歌声に心震わせ、メンバー同士の絆にほっこりしたり、涙したり、十分楽しませてもらったから。

友達のように一緒に盛り上がっていた娘も、就職で一人立ちした。
あれは、K-POPアイドルへの偏愛というよりも、娘との蜜月の時期だった。
毎日娘と話せたから、よけい熱中できたのだ。

今でも、娘が置いていった机には当時のポスターが飾られ、クローゼットの片隅にペンライトやDVDが大切にしまわれている。

Discord名:たーこ(瀬崎貴子)
#Webライターラボ2405コラム企画




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