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もう1人の母を思って

バッグがこれでもかと、出てくる、出てくる。
こんなに押入れに詰め込んで、というほど、大量のバッグが出てきて驚いた。まだ新品同様のものもある。

先日、義母の遺品整理をする機会があった。
義母は家内工業の仕事をずっとしてきたので、出かける機会もそんなになかったに違いない。
昼間は義父と工場で働き、息子3人の子育てや家のことも一身に背負っていた。働きづめの人生のように見える。忙しくてあまり趣味もなかったようだ。

バッグを買うことで、気を紛らわせていたのかもしれない。素敵なバッグを手に入れてお出かけした気分になったり、いつか行くときのために買ったりしたのかな。
おしゃれな義母のことだから、洋服に合わせていろいろコーディネートを楽しみたかったのだろう。

家族に愛情深い人だったな。孫である、私の娘たちもすごくかわいがってくれた。孫の喜ぶ顔が見たくて、高価なメロンを買って食べさせてくれた。孫の言うことをニコニコと笑顔で受け入れ、「大丈夫だよ〇〇ちゃんなら」と、優しい言葉をかけてくれた。私の娘たちも、おばあちゃんのことが大好き。

義母が結婚した時代には、兄嫁にさんざん嫌なことをされたそうだ。そんな思いを自分の嫁には絶対にさせたくないと思っていたという。確かに、嫌なことをされたことがない。古風な面はあったけれど、いつも私の意見を尊重してくれた。

お茶の淹れ方や、洗濯物を畳む手付きがていねいで、学ぶことがたくさんあった。自分がいかに大ざっぱに家事をしているのか、恥ずかしくなったものだ。

毎年母の日には、実家の母と義母とで2人分プレゼントを用意していたけれど、今年は1人分。
人を思いやることを、その行動で示してくれた義母。
おかあさん、ありがとう。とてもすてきな笑顔が思い浮かぶよ。あなたの温かいぬくもりは、いつまでも心に残っているからね。

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