日食なつこさんについて少し語る
こんちわ葦原です。
ついさっき、半年ほどちまちま読み続けていた本を読了しました。
「推し、燃ゆ」という芥川賞受賞作です。とても面白かったのですが、いかんせん私はものぐさ人間なので活字を積極的に眼に入れようとしてこず、そのずぼらと面白さがせめぎ合ったまま読了に半年もかかってしまったわけです。
純文学を「面白い」としか形容できないような浅はかな語彙力しか持ち合わせていないので詳しく語ることはしませんが、タイトルから分かる通り「推し」を題材にした作品です。私と同じ世代の人間なら少なからず共感できる部分があるかと思われます。ぜひ。
本題に入ります。
突然ですが皆さん、日食なつこさん知ってますか?
私は知ってますよ。
私の2023年Spotifyで聴いたアーティストランキング第三位が日食さんでした。
日食さんを知っている方なら言うまでもないことかも知れませんが、今年のM1グランプリ決勝が明日、12月24日に予定されています。
それに際し、12月19日、日食なつこさんの「ログマロープ」を起用してM1グランプリのプロモーションビデオが公開されました。
めでたい。
バチ格好いいので見てみて下さい。
凄いですよね。
初めて聴いた方々、これが日食なつこさんです。
「ログマロープ」、、、日食なつこと言えば、「水流のロック」と「ログマロープ」と言っても過言ではないほど、広く認知されている人気曲です。
御本人のMVもありますのでぜひ。
雪まみれの楽器たちがちょっとだけ可哀想ですね。
撮影時は−10℃だったそうです。
7年前の曲がまさか2023年になって、漫才とここまでのシンクロを見せるとは、すごいですね。
プロモーションビデオへの日食さんのコメントに、
「お笑いも歌唱も、目の前の人間を己の技術と感性で揺さぶることができるか否かの挑戦であるという点では本質的に極めて似通ったところで隣り合っているのだと思います。」
という文言があって、本質を捉えて普遍性を高めた楽曲とM1スタッフさんたちの編集技術と情熱の賜物なのだなと感じました。
私は漫才、、、というよりは芸能界というものを毛嫌いしているので、M1グランプリというものにも大した興味はなくて、せいぜい優勝コンビの名前をネットニュースで知る、くらいなものだったのですが、あまりにプロモーションが格好良かったので、今年のM1見たくなっちゃいました。
あと、今日ジャンプラで読んだ「息することすら許さない」っていうお笑いの読切がびっくりするくらい面白かったです。
脱線しました。今回は日食さんの記事を書こうと思っていたんでした。
私が日食さんを知ったのは高校に入ってからなので2,3年前です。
そして私が日食さんを知る切っ掛けになった曲は「水流のロック」です。
つまり、日食なつこにわかファンです。
なのでおいそれと語って良いのかは分かりませんが、好きな曲を幾つか紹介するくらいなら許されると思います。
誰に許してほしいのかはわからないですが。
せっかく紹介するのならYoutubeで簡単に聴ける曲がいいと思うので、そんなにマイナーな曲については書きません。
◯水流のロック
先程も書いた通り、私のファースト日食なつこであり、日食なつこさんの代表曲と言っても過言ではないでしょう。
見ての通り、この楽曲を構成するのはピアノとドラムと歌唱だけ。(後で知ったんですがベースもいるらしい)
というか、日食なつこさんの楽曲は基本的にピアノ、その他幾つかの楽器で構成されています。音の種類は少ないのです。
それでいてこれほど質量のある音楽を形作れるのは凄いことだなと、音楽がわからない人間ですが、思います。
確固たる質量を持っていながら限りない程の軽やかさと透明感も感じられる。
まさに、「水流のロック」というタイトルがぴったり。
◯ √−1
呪術廻戦が好きな方は一度聴いてみると良いと思います。
私も長文考察書くくらいには呪術廻戦が好きなので、この曲には興奮しました。
この間の秋のアニメの影響で再び話題になりました。
ラストの歌詞です。呪術読んでる人ならもうわかったと思いますが、そういう歌です。
なので、これは過去ばかり見て、それに執着して、後悔と葛藤に苛まれる歌詞です。
なのに、なぜだかその声と音楽には弱さや後ろめたさが感じられない。
どこまでも限りなく力強い、それでいて(いや、だからこそか?)、そこに静かで仄暗い後悔と羨望の感情が同居している。
日食さんの曲の中でも比較的アップテンポで音も多い曲なのだけれど、なぜだか静けさを感じる。
こないだカラオケ行ったらなかったので残念な気分になりました。
◯音楽のすすめ
日食なつこの音楽論、ひいては創作に対する心構えみたいなものを示した曲だと思っています。
MVの概要にある御本人のコメントを読むと、ある音楽イベントでの鮮烈な体験を起点としてサビ部分を書いて、その後コロナ禍で「音楽の価値」を見つめ返したときに、溢れ出た感情を曲にしたそうです。
私の最も尊敬するアーティストである米津さんがいつぞやのインタビューで「コロナ禍においては自身の積み上げてきた音楽や芸術の分野は”不要不急”とみなされるものになった。」語っていて、それが自身の音楽が持つ価値や意味を再考するきっかけになったと仰っていたので、やはり、コロナ禍によって音楽業界が完全に停止した時期というのはアーティストにとってはよくも悪くも甚だ大きな影響を与えていたのだなと思いました。
個人的には「六つ、あんまり大事にしまい込まないこと 空に放り投げてみたっていいんだぜ」という歌詞が響きました。
放り投げていいの!?って。
上でも書いているように私は米津玄師を崇拝せんばかりに好いているきらいがあるので少し耳が痛い歌詞でした。
今世間に溢れる多くの楽曲が3分から5分程度の、ほんの短い時間で視聴できるものばかりです。
しかし、背後に居るアーティストや多くの関係者たちがその5分間を作り上げるために掛けた時間というのはその何十倍、何百倍にもなります。
「音楽」は、他と比べても突出して濃度の高い芸術体験だなと思っています。
まるで「短い夢」かのような。
◯ vapor
もう、、、ほんとにリリックが好きすぎる。
とんでもなく綺麗で洗練されたワードセンス。
日々につきまとうような形容し難いブルーな感情をこんな美しく言い表すのか、、、。
日食なつこさんはとても言葉を大切にしている音楽家だと思っています。
というか、私は音楽知識を持っていないので楽曲の切り口がどうしてもリリックによってしまいがちになるので、私が好きなアーティストはだいたい紡ぐ言葉も私好みです。(もちろんメロディーも好きですよ。)
逆に、歌詞に全然共感できないのに「いいな」って思える曲に出会ったら自分にも音を聴いてそこに価値を見いだせるくらいの耳はついてるんだ、って嬉しくなります。
あと、この楽曲のMVはとんでもない鬱展開で視聴者の心を美しく叩き割ってくる凄い破壊力を持っています。
静かな曲なのに恐ろしいです。
◯エピゴウネ
日食なつこさんの曲で一番好きな曲です。
この曲を聴いてから日食なつこというアーティストにドはまりしました。
そのアーティストに出会ったきっかけの曲とそのアーティストにハマったきっかけの曲は別であることが多いです。私の場合。
一度聴いて、すぐに2、3回聞き直して、そのまま歌詞を深く解釈する前に衝動的に長文コメントをつけた記憶があります。
めちゃよかった、不気味で、でも綺麗、みたいなことを書いたとはず。
とても恐ろしい曲。
大袈裟だけど、初めて聴いた時、MVの少年に殺されたと思ってしまった。
すべての歌詞に殺される勢いで叱責されている気がしました。
曲が刺さった、という表現が実に相応しいです。
発表から7年越しでの動画化らしいのだけれど、曲だけでなく動画の構成も素晴らしいと思います。とても不気味。
夢を持つだけで素晴らしいことだと思っていました。今も思っています。
もちろん、それだけじゃ夢は叶わないことも分かっています。
既知の事実であるはずの物事なのに、ここまで厳しい意志を持って現れると、自分のものだと思っていた現実も諦観もすべて利己的な甘えだったのかも知れないと疑わざるを得なかったです。
お前は悟ったふりして全部から逃げてるだけなんじゃないの??って。
だからこの曲を聴くと自分がちょっと嫌いになります。
好きだけど嫌いな曲です。
MVの少年こわい、、、。ころさんといて。
コメント欄に、「一言も”届かない”とは言っていないんだよね、、、愛のある歌詞に感動した」というコメントがあって、秀逸だなと思いました。
この曲に勇気をもらえるような人間になりたい。
ちなみに「エピゴウネ」とは、「学問、思想、芸術などで、先輩のまねをするばかりで独創性のない人。模倣者。追随者。」という意味らしいです。
以上です。
書いていたら24日になっちゃいました。
ま、皆さん時間があったらM1グランプリ見ましょーね。
私も時間が許す限りは見ます。
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