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モンゴルとゴビ砂漠⑧遊牧グルメ編その二

ラクダ

モンゴルにおける家畜は五畜とも呼ばれ、これは牛、山羊、羊、馬、ラクダを指す。
これらがどこでも飼育されている訳ではなく、エリアに寄って偏りがある。北部のエリアは牛や羊が多いが南部はそれらは少なく、ゴビに至っては山羊とラクダが多い。当然ながら気温や降水量、植生によって適応できる家畜が変わるのだ。
ゴビにいるラクダはフタコブラクダで昔は運搬用として活躍していたようだ。その昔、天竺を目指した三蔵法師は旅路であるゴビ砂漠のあまりにも過酷な環境に心が折れそうになり、般若心経を唱えながらやっとのことで渡りきったという話がある。そんな過酷な環境でも元気に動けるラクダは重宝されてきただろう。


ラクダに乗った視点
フタコブは乗り易い
筆者とラクダ達
マツエクは不要だ

現代におけるフタコブラクダは絶滅が危惧され、野生のものはまず食べることは憚られる。飼育されたラクダも乳製品の需要が高まっているが、肉を食べる事は稀のようだ。しかしながらラッキーな事に我々はラクダ肉を口にする機会を得られた。
ある日のゲルで晩御飯としてラクダの干し肉の炊き込みご飯が供された。

調理中
ラクダの炊き込みご飯

肉自体はクセがなく、干し肉の為か味がギュッと凝縮されていて美味しかった。
中央アジアから中東あたりで食べられている「プラオ」「プロフ」のようなものだと思われる。


山羊

モンゴルの遊牧民の食習慣は「夏は白食、冬は赤食」と言われ、白は乳製品で赤は肉の事だ。
気温が高い夏場は屠畜した肉類は傷みが早いのであまり食べない、代わりに栄養を含みつつ保存が効くようミルクを加工したものが多く摂取される。加工方法は様々な工夫や叡智が詰められており目を見張るものがある(詳細は割愛する)。
前述のラクダ肉は夏場に食べたが冬場に仕込んだと思しき貴重な干し肉であったはずだ。
しかし保存加工を施さない肉を夏場に食べれる機会がある。お祝い事や客人をもてなす時の様な多勢で食事ができるタイミングだ。
つまり短期間で食べ切ってしまおうという事だ。単純に保存の必要がない。
とあるゲル集落を訪れた際、そのチャンスは期せずして訪れた。

 長時間の移動の後、沢山の山羊たちが出迎えてくれた。幼い子供達もいて、心身が癒やされる。


山羊と戯れるMくん


山羊をさんざん愛でてからゲルに入ると晩飯を平らげた。
就寝した我々は翌朝の光景に唖然とした。



昨晩の山羊の内一頭があれよあれよと解体されているのだ。
しかも見た目が中学生ほどの男の子がナイフ1本で器用にサクサクと捌いていた。
どうやら客人である我々の為に一頭屠ってくれたようだ。

部位によって手のみで解体するのも特徴的だ
内臓の一部を犬にあげるドライバー
ゲルの屋根に干された山羊
あっという間にほぼ毛皮だけになってしまった

解体の手際の良さは見事としか言いようがない。
遊牧男子は馬を乗りこなすのみならずナイフ捌きも一級だ。恐れ入る。

この子も近い将来ナイフ捌きを習得することだろう



小籠包

解体した山羊肉はどのように食べられるのか。ガイドのOさんは通訳だけでなく自ら調理をしてくれた。
まず肉をミンチ状に切ると玉ねぎ、ニンニク、塩を混ぜる。続いて小麦粉に水を加えてせっせと捏ねると小口にちぎり分け麺棒で伸ばしていく。
肉の解体が男の仕事なら調理は女の仕事なのだろうか、これまたOさんの手際がとても良い。我々も一緒に包んだがとてもOさんの様には綺麗にならない。

肉の味付けはいたってシンプルだ
小麦粉の皮に肉を包んでいく
蒸して小籠包の完成

蒸し立ての小籠包を手で掴んでかぶりつくと肉汁が口に広がる。鮮度が良いからなのだろう臭みが殆どなく抜群に美味しい。肉は程よい弾力があり食べ応えがある。至福の時であった。

山羊の小籠包

解体された山羊はこの他どのように食されるのか。

続く。

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