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JTCへのDXコンサル投入で子会社社員には「楽をする人」と「リスキリングする人」と「転職する人」が現れる件

はじめに

筆者は生命保険会社のCDOとして、社内のデジタル戦略や執行支援をする傍ら、顧問先やパートナー企業のDX支援、自治体向けのビジネス発想支援や官公庁のDX推進委員を務めており、日本全体のDX推進や人材育成のあり方を考える活動に携わっている。

DXを進める上で、多くのJTC(日本の伝統的企業)が最初は独力で進めることができず、外部の企業に伴走支援を依頼するケースが多い。筆者の会社もそうであった。伴走してもらう外部企業には世に知られた外資系のカタカナDXコンサル企業が多い。

「DXコンサル導入」はJTCにとっても、JTCがシステム子会社持っている場合には、親会社にも子会社にも「毒にも薬にもなる」ので留意が必要だ。筆者の勤務する会社でDXコンサルの伴走を導入したところ、システム子会社の社員の反応が三つに分かれた興味深い事例があった。(5年前の話)

子会社社員に起こる「3種類の反応」

今回は、これを通じて、DXコンサルの導入に伴うシステム子会社社員の3種類の反応と、JTCやシステム子会社経営陣の組織としての対応について考えたい。

①楽をしてしまう人

DXコンサル企業の導入により、DX関係の知識やスキル習得を止めてしまう人がいる。自身のスキルアップを目指すのではなく出入りするDXコンサルタントに任せきりになる。彼らは、DXコンサルタントの知識やスキルに頼り切ることで、自分自身の成長を止めてしまう。

それだけでなく打ち合わせの設定、会議の進め方、議事録の作成、など多くの業務まで任せてしまい、何も残らなくなってしまう。その結果、次第にDXコンサルタントに影響力を奪われ、最終的には取って代わられてしまう。

悲しい話だが実際に、DXコンサルタントに任せきりにした子会社社員が、徐々に業務から外されていったという事例があった。このような態度は、個人のキャリア形成にも、組織の長期的な発展にも悪影響を及ぼす。もちろん社員がそれを望むなら、個人としては、とやかく言う問題ではないが、システム子会社としては存在意義を考えるべきであろう。

②リスキリングする人

DXコンサルタントの知識や意欲の高さにショックを受け、危機感を感じ、自ら学ぼうとするシステム子会社の社員もいる。彼らは、DXコンサルタントの知識とスキルを吸収し、自身の成長に活かそうとする。リスキリングの対象は、新しい技術だけでなく、DXビジネスやDXプロジェクトマネジメント、データ分析といった分野にも及ぶ。

筆者の勤務する会社では、DXコンサルタントと積極的に交流し、新しい技術やビジネス手法を学ぼうとする社員が、1年でDXビジネスの新規事業立ち上げのリーダーになった事例がある。この積極的な姿勢は、個人のキャリアを大きく前進させ、組織内でのプレゼンスを高めることにつながる。コンサルタントの刺激を受けてコンサルタントに学ぶことで起こった「人財のリープフロッグ」である。

③転職してしまう人

コンサルタントから受けた刺激が強すぎて危機感が高くなってもっと厳しい世界に旅立つ人もいる。彼らは、自身のキャリアに正直に向き合った結果、転職を選択する。筆者の勤務する会社のシステム子会社からは、外資系のSaaS大手や世界的ECサイトのクラウド会社、日本系で厳しくて有名なコンサル会社などへ転職するケースがあった。

人材の流出は、組織にとって損失だが、同時に彼らをアルムナイ人材として大切にすることも必要だ。転職した社員とのつながりを維持することで、新たなビジネス機会の創出や、多様な視点の取り入れが可能になる。転職した元社員とのコラボレーションにより、新たなDXソリューションを開発したいと常に筆者は思っている。

システム子会社におけるDX推進の課題

DXコンサル企業の導入に伴うシステム子会社人材の反応を踏まえ、システム子会社を持つJTCは、子会社と一緒に人材の育成と活用について考えなければならない。

それには、子会社社員のモチベーション管理とスキル育成が重要だ。DXコンサルタントから学ぶ機会を提供し、社員のリスキリングを支援する体制を整えることが必要だ。全社的なDX推進体制の構築と、コンサルタントとの効果的な連携方法を確立することも欠かせない。

加えて、転職した優秀な人材とのつながりを維持し、彼らの知見を活用することも重要だ。アルムナイ人材とのネットワークを構築し、継続的な交流を図ることで、新たなビジネス機会の創出や、多様な視点の取り入れが可能になる。

DX時代に求められる人材像は、変化に適応し、絶え間ない学習を続けられる人である。そのような人材を育成するためには、組織文化の変革が必要不可欠。システム子会社の役割も、単なるシステム開発・維持から、DX推進の中核を担う存在へと変化する。これに伴い、システム子会社の社員のキャリアパスも多様化するのだ。

まとめ

システム子会社を持つJTCのDXコンサル伴走の導入は、子会社の社員に様々な反応を引き起こす。楽をしてしまう人、危機意識を持ってリスキリングする人、転職してしまう人など、それぞれの反応に応じた組織としての対応が必要だ。

DXの波に乗るか、乗り遅れるかは、個人と組織の意識と行動にかかっている。システム子会社を持つJTCは、子会社と一緒に人材の育成と活用について取り組まなければならない。それは現場の問題ではなく、JTCとシステム子会社の経営の問題である。

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