024: ある夜のオバケ騒動:つづき、『三船殉難事件の任務』

すいません、今回は約15,000文字の長文です。

 僕の任務を決めるのに大きな鬼の眼を持っていることはとても大事な事でした。僕が大きな鬼の眼を持っているので不動明王は一緒に悪霊退治をしようじゃないかと誘ってきていました。ですが、僕はオバケが怖いから嫌だとずっと断っていました。

(つづき)

「このガキ、やるじゃねぇか。おい!宇宙で俺と一緒に暴れまわらねぇか?な、な、どうだ面白そうだろ?」
不動明王は誘ってきた。しかし、僕には聞こえないので祖母が代わりに不動明王の言葉を僕に伝えた。
「やだ、誘われてもどこにも行かない。ずっと、ここ家の子がいい。」僕は誘いを拒絶した。冒険はしたくなかったのだ。
「ちっ、つまらん。」不動明王は僕にけんもほろろに誘いを断られたので面白くない顔をした。

ここで僕の記憶は小学生時代に飛んでいる。

 僕が小学3年生ぐらいの頃だったろうか、昼下がりの午後に家の近所で友達と遊んでいた。するとそこに別の友達が僕を呼び止めて、こう言った。
「お婆ちゃんが探していたよ。呼んできて欲しいって。」
「僕は、まだ遊んでいるんだけど、」と僕は言った。
「大事な用事があるからって、言ってたよ。」その友達は言った。
 普段は一緒に住んでいるのだから、余程の急ぎの用事でもない限り、祖母が僕を呼びだす事なんて無いのにと思いながら、「うん、わかった。」と僕は答えた。
 家に帰ると祖母が僕の帰りを待っていた。帰る早々、祖母は「大事なお話があるから、二階のお婆ちゃんの部屋に来てちょうだい。」と言って僕を部屋に連れて行った。いつもは大事な話なんて深刻な話はほとんどしたことがなかったので、なにか怒られるのではないかと緊張しながら祖母の後をついて行った。
「お婆ちゃん、僕、何か悪いことをしたのかな?」僕は恐る恐る祖母に聞いた。
「何か悪い、いたずらでもしたの?」祖母は不思議そうな顔をして僕に聞いた。
「そうじゃないけど、大事な話って言うから、怒られるんじゃないかと思って。」僕は答えた。
「大事な話って、お説教じゃないわよ。」祖母は笑いながら答えた。
 いつもは大体小言を聞かされているので、『大事な話』レベルになると余程のお説教が待っていると、僕は思ったのだった。
「お婆ちゃんはいつもそんなに怒ってる?」祖母はきょとんとしながら言っていたが、今でも祖母との思い出は、大体いつも怒られているイメージがある。
「お婆ちゃんとの大事なお話は二人だけの内緒話だから、近所の人にも聞かれないようにお部屋の中に入ってからするね。」
 お説教じゃなくって、僕とお婆ちゃんとの二人だけの大事な内緒の話ってなんだろうと思った。パパとママがお仕事に行っているから家にいないのは、いつも通りだけど、お爺ちゃんも外出していて居ない時に近所の人にも内緒の話だから何事だろうと、僕は想像もつかない事で不思議な感覚で祖母の話を聞き始めた。部屋に入って、まだ少し暑い季節なのに窓を閉めて扉も締め切ると唐突にこんな事を言い始めた。
「実は、お婆ちゃんはね、魔法が使えるんだよ。」
「ふうん、」僕は、気のない返事をして、状況がつかめない。お婆ちゃんの事を信じていないわけじゃないけれども、魔法を信じている小学生でもない。
「魔法を信じていないの?」祖母は僕に聞く。
「うーん、科学が魔法のような事をするとは思うんだけど、よく昔ばなしに出てくる魔法使いや魔女が杖を振って、ちちんぷいぷいって呪文を唱えて魔法が使えるとは思ってないなぁ。僕は小学校での理科の時間が面白くって、大好きなんだ。」
「魔法を信じてないのね。じゃあ、神様や仏様は信じている?神様や仏様を信じていれば、魔法は使えるのよ?」
「神様って、キリストの神様?」
「キリスト様もそうだけど、日本の神様や仏様。」
「仏像の彫刻は教科書で見たことがあるけれど、みんな人形みたいなものでしょ?」
「人形だって魂は入っているのよ。それに仏像じゃなくて仏様を信じてないの?」
「神様や仏様がいたらいいなって思うけれども、全部想像の産物じゃないのかな?」
「あら、ずいぶん穢れちゃったわね。前にお不動様とお話したのを覚えてないの?ちょっと心の純度を調べさせてちょうだい。」
 僕の心は少し傷ついた事に祖母は気が付いているのだろうか?
「目を瞑って、心の中を真っ白にしていてね」
 僕は、目を瞑って心の中を浦島太郎の玉手箱のような煙で真っ白にした。
「うわっ、煙たい、ちょっと待って、そういうんじゃないの。」
「え?」僕は、何か間違えたかなと思った。
「真っ白って、何も考えないでって事なの。」
 そうなんだ、そう言ってくれれば良いのにと思った。そして、僕は心の中で何も考えずに空っぽにした。
「純粋に、神様や仏様を信じていないのね。」
「神様仏様って、本当にいるの?」
「ちゃんといるわよ。」
「会ったことも、話したこともないよ。」
「会ったり、お話したら信じてもらえる?」
「え、すごい。会えるの?お話もできるの?お話し出来たら信じると思う。」僕は興奮した。
「ええ、そうね、お行儀よくしていたら、お話し出来るかもね。」祖母は笑いながら言った。
「神様仏様を信じることが出来たら、僕も魔法が使えるの?」さらに、僕は興奮した。
「そうよ、修行をしたらお婆ちゃんたちが使う忍術が使えるようになるのよ。」
「忍術の修行かぁ、って、お婆ちゃんが使う魔法って忍者が使う忍法なの?」
「そうよ、お婆ちゃんは忍術を使う忍者なのよ。これは誰にも内緒よ。」
「え?お婆ちゃんの忍者って伊賀とか甲賀とかの忍者なの?」
 今まで、ニコニコしていた祖母の顔が突然曇り、ムッとしたようだった。
「伊賀とか甲賀は、どちらかと言えば敵方の忍者ね。」
「お婆ちゃんは、伊賀や甲賀と闘っているの?」
「伊賀も甲賀も、今は、いないけれど、甲賀とはそれほど争っていなかったけれど、伊賀には昔、お婆ちゃんたちの先祖の一族は滅ぼされそうになったのよ。」
 祖母は一族の昔の話を教えてくれた。
「どうして、伊賀や甲賀のことを知っているの?」祖母は僕に聞いてきた。
「マンガで『忍者ハットリくん』と言うのがあって、ハットリくんは伊賀の忍者で甲賀の忍者はライバルなんだ。」
「服部半蔵は最大の敵だったのよ。」祖母は言った。
「ハットリくんは服部カンゾウだよ、弟が確かシンゾウ君だったよ。」僕は答えた。
「歴史上、実際に服部半蔵という忍がいたのよ。」
「お婆ちゃんたちはなんて忍者なの?」僕は祖母に聞いた。
「『風魔一族』よ、風魔の忍者なの。」祖母は答えた。
「フーマ?風魔ってどんな忍者なの?」僕は祖母に聞いた。
「そうね、昔の日本には色んなところに忍がいてスッパとかラッパとかいて、沢山いたのだけれど、主な忍者の集団は風魔、火影、伊賀、甲賀が有名ね。その中でも、風魔が最強で『心』を武器に使うのよ。」
「心を武器に使う忍者が一番強いの?鉄砲や手裏剣じゃなくって?」僕は不思議に思った。
「そうよ、心が一番強いのよ、だから今でも生き残っているのよ。」祖母は誇らしそうに言った。
「どう言う事?」まだ僕は分からない。
「伊賀は鉄砲や手裏剣、刀などの武器を使ったの、それで甲賀も火薬や毒薬などを得意としたのよ。でもね風魔と火影は似ていて風魔は心を武器にして呪術を使ったの、そして火影は魔具を使って呪術を使ったのよ。」祖母は教えてくれた。
「呪術が使えたら、呪術が一番強いの?」僕は祖母に質問した。
「そうよ、呪術の前では鉄砲も刀も無力なのよ。」
「魔具を使う火影が一番強そうだけど、違うの?」僕は祖母に聞いてみた。
「魔具に込められている魔力も元々は純粋な心の力だから、心そのものを武器にしている風魔が一番強いのよ。」祖母は笑いながら答えた。
「お婆ちゃんたちは、忍術を使って何ができるの?」僕は疑問をぶつけてみた。
「何でもできるよ。」
「空も飛べる?」僕は、ちょっと無理かもしれない事を聞いてみた。
「出来るよ。飛行呪を身に着けるには何年か修行をしないとできないけれど、ちゃんと修行すれば空も飛べるよ。」
「何年も修行するのかぁ、、、」
「そりゃ、修行は必要よ。怠けちゃだめよ。」
 小学生の僕に何年も修行しないと忍術が使えないと言うのは気分が重かった。
「お婆ちゃん達は、忍術を使って何をしているの?もう、伊賀や甲賀はいないんだよね?」
「お婆ちゃん達は、日本の国の為に色々なお仕事をしているのよ。」祖母は答えた。
「お婆ちゃん達は、日本の国の仕事をしてお給料をもらっているの。」僕は聞いた。
「お婆ちゃん達は、お給料は貰っていないわよ。」祖母は言った。
「お給料をもらっていないのに、なんでお仕事ができるの?」僕は聞いた。
「お婆ちゃん達は、お給料を貰っていないけれど、魔法で願い事を叶えてもらっているのよ。」祖母は答える。
「お婆ちゃん達の現在の敵はね、アメリカよ、アメリカを出し抜いて、本を買い集めていたのよ。」
「え、本なの?」
「そう、本屋さんで買える本だけど、戦争が終わったらアメリカのGHQが禁書って言って、指定されると買えなくなる本を密かに買い集めて隠しているのよ。」
「アメリカが本を買えなくしてるの?」
「そう、だから、お婆ちゃん達は、日本がアメリカに戦争に負けても、アメリカを出し抜く為にお仕事をしているのよ。」祖母は誇らしげに言った。
「一か所に集めてしまうと、まとめて奪い取られてしまうから、お婆ちゃん達の仲間の家に分けて、一万冊も二万冊も買って術を掛けて隠したのよ。」
「アメリカ相手に大丈夫なの?」僕は心配した。
「お婆ちゃん達が、呪術を使って本を買っても誰に売ったか判らないように隠蔽して買うの。そして仲間に渡して隠すのよ。本を買った人と隠している人は別なの。風魔の草の人達が総動員で買い集めたわよ。」
「21世紀を少し過ぎるまで、隠すわよ。アメリカなんかに風魔の呪術は絶対に破れないんだから。」祖母は相当な自身である。
「お婆ちゃん達の世代は、アメリカにやられたけれど、孫、ひ孫の世代まではやらせない。お婆ちゃん達が逆転できる武器を残してあげる。」
「本が武器なの?」僕は不思議そうに言った。
「本はね、とっても強力な武器になるのよ。その時、お婆ちゃん達はいないけれど、○○ちゃん(僕)達の為に残してあげる。お婆ちゃん達の図書館戦争よ。」
「図書館戦争?」
「ふふふ、○○ちゃん(僕)が大人になったら解るわよ。」
「お婆ちゃんは何か知っているの?」
「それは、○○ちゃん(僕)が大人になるまでの秘密。」
「今度、呪術の魔法で願い事を叶えてもらう様に、○○ちゃん(僕)の願い事を決めようと思うの。そこでね、○○ちゃん(僕)の願い事はお嫁さんにしようと思うの。」祖母は話を進める。
「え?」驚いて僕は、正直に言って、頼んでねぇし、と思った。
「○○ちゃん(僕)のお嫁さんは女優さんが良いかなと思って。」
 小学生の僕は、再び、頼んでねぇし、と思った。
「女優さんと言っても映画とかに出てる人気の女優さんよ。」
「映画なんて見たことないよ。」僕は不服そうに答えた。
「気に入らない?」祖母は不思議そうな顔をして僕を見る。
 大人になった僕からすれば、素直に受け入れておけば良かったと思うのだが、小学生の僕は頑なに拒否をした。
「なんでも願いが叶うんでしょ?それが、映画女優のお嫁さんなの?」
 大人になった僕からすれば、充分に願いが叶っていると思うのだが、小学生の僕は頑なに拒否をした。
「その代わり、お仕事をひとつしてもらう必要があるのよ。」
「お仕事って何?」僕は聞いた。
「二十代で、決められた場所で死んでもらう事よ。」
「にじゅうだい、って何だ?」僕はわけが分からない。
「26歳か27か28歳までに死んでもらう事よ。」お婆ちゃんは、いったい何を言ってるのだ?
「小学生で残りの寿命が20年もないって、どういう意味なんだよ。」理不尽すぎるぞ。
「○○ちゃん(僕)が、そこで死んでくれないと他に大勢の人が死んでしまうのよ。」
「だからって、、、どう言う事か聞かせてよ。」僕は泣きそうである。
「事情を聴いたら、引き受けないわけにはいかないよ。」厳しい表情で祖母は言った。
「術があるんでしょ?僕の記憶なんか消せばいいじゃん。」僕は不貞腐れて言う。
「そうねぇ、」と言って祖母はなぜ僕が女優と結婚して若くして死ななければいけないのか経緯を話し始めた。
 大東亜戦争が終わって満州から沢山の日本人が民間の引き上げ船に乗って日本に向かっている時だった。ソ連の潜水艦が民間船に向かって魚雷を発射して沈没をさせた。北海道留萌沖の『三船殉難事件(さんせんじゅんなんじけん)』が発生した。その時に霊能力の強い風魔一族の男が妻子と乗っていた。その男は鬼の眼を持っていた。鬼の眼を持つ風魔一族の子が亡くなった場合、死後四十九日の間、護摩を焚いて誦経を昼夜唱え続けないとその風魔の子は成仏できず、悪霊と変化してしまう。悪霊となった風魔の子はその後、命を落としたその地に災いをもたらす。災いの最たるものは戦争。北海道沖の日本海を舞台に戦争が勃発して、多くの人々が命を落とす事になる。終戦当時は風魔も混乱をしていて手が回らなかった。風魔一族にとっての霊的な戦後処理として、留萌沖の霊を浄霊する仕事があった。なぜ、風魔の子はソ連の潜水艦に攻撃を受けたのか?それは、風魔一族と敵対する『悪魔崇拝者』の集団。風魔の子などの霊能力の強い子を惨殺することで、その地に悪霊を生み落とし戦争を起させる。それで、さらなる殺戮を求めている。戦争で武器や物資が必要とされ消費することで軍産複合体が金儲けができる仕組みがある。その為、風魔一族は悪魔崇拝者から狙われ続けた為に身を隠している。浄霊の仕事も妨害を受ける為に極秘に進めなければならない。初めの計画ではスプーン曲げで世間的に有名になった少年が青年になった頃に、留萌沖の事故で遺体が流れ着いた小平町の海岸沿いで失恋の末に自殺する計画だった。自殺したスプーン曲げの青年を成仏させるときにあの世から来る『お迎え』に風魔の子を一緒に逝かせる計画だった。しかし、悪魔崇拝者の手先のマスメディアによって『超能力:スプーン曲げブーム』が流行して、多くの風魔の子がスプーン曲げ少年として世に晒されて、インチキ呼ばわりされて心が穢れて使い物にならなくなっていた。スプーン曲げで世間的に有名になった少年が青年になった頃、テレビの特番で有名になった彼は銀座のクラブの女性にモテモテで童貞を失い霊力が枯れて、計画は破綻した。そこで、代わりの風魔の子が必要となり、白羽の矢が立ったのが僕だった。
「僕は死ぬしか、手はないの?」僕は泣きそうになりながら言った。
「御頭首が言うには、他にも手はあるけど、かなり困難を極めるっていうのよ。」祖母が言った。
「僕一人がやるんじゃなくって、風魔一族がみんな協力して術を使えば成功する確率は上がるじゃん。」
 風魔一族の御頭首が昭和55年の1980年から2000年までの計画を立て直してシナリオを考える事になった。祖母は昔から風魔が戦っている敵について教えてくれた。風魔は戦前から海外の戦争や犯罪で経済的利益を受ける正体不明の悪魔崇拝者集団で軍産複合体とも言われる集団と戦っている。悪魔崇拝者が戦争を引き起こす方法は、戦場にする場所で「鬼の眼」を持った心の純粋な幼い子どもを惨殺して悪霊にする。悪霊になった子どもの邪鬼が他の悪霊を呼び集めると、その場所に戦乱が起こるようになる。風魔の一族は悪魔崇拝者に命を狙われ続けてきたのです。大東亜戦争(支那事変)が引き起こされた霊的な原因は、風魔の青年の自殺と巻き込まれた呪術者の死が大きな原因でした。ある青年と結婚を約束した恋人が家の事情で遊郭に奉公へ出される事になりました。恋人は服毒自殺を図って死亡します。その後、恋人の自殺を嘆いた青年は能登半島の輪島にある「ヤセの断崖」から恋人の後を追い身投げをしました。青年が断崖から飛び降りることを察知した風魔の幹部は自殺を阻止に掛かります。鬼の眼を持った風魔の者が自殺すると成仏せずに悪霊になって人々に災いをもたらす場合がある。九人の有力な呪術者が緊急に招集された。作戦は飛行呪が使える呪術者を八人の呪術者が取り囲み能登半島の上空まで瞬間移動させる。そこから断崖まで飛行呪で急行して落下する青年を救う算段だったが、青年が落下中に飛行呪で近づく呪術者に向かって九字を切り気絶させた。飛行呪に集中していた呪術者は青年の九字を跳ね返すことが出来なかった。結局、この二人の風魔が崖の下に落ち命を落とすことになった。これも悪魔崇拝者が青年の恋人の家が没落するよう悪霊を差し向けて恋人を自殺に追い込む工作だった。その後、戦争に巻き込まれた風魔は次々と命を落とすことになり戦火は世界大戦へと拡大したのである。

 僕にはこれとは別の記憶があるのである。僕のミッションの設定をやり直しをしたようだ。

 祖母は邪鬼というオバケをイジメて遊んでいないか、僕に聞いた。身に覚えのない僕はそんなことしていないと言うと、お婆ちゃんが両手で印を結んで念じると部屋の隅の邪鬼を掴んで持って来た。普段は家の中や近所に邪鬼がいると追い払っているのだそうだ。しかし、今日は僕を試すと言って、僕の目の前に持ってきた。祖母が目の前に邪鬼を持ってきたと言う。祖母は見えない何かを掴んでいるようだが、僕には全く見えない。祖母はどこかの誰かと話をしている。邪鬼を見る事が出来なくても触る事が出来るかもしれないというのだ。僕は目の前に出された何かを掴むようにしてみた。すると祖母は、ちゃんと掴んでいると嬉しそうに言った。
 僕は何かを握ったであろう手を少し揺さぶってみた。祖母はあんまりイジメると仕返しされるよと注意した。僕はイタズラ心が湧き、ガムの包み紙を左の手のひらに載せて、その時噛んでいたガムも載せて一緒に包んだ後に、右手を叩きつけた。祖母は邪鬼が飛び散っちゃったと言ってびっくりした。僕は邪鬼の肉片が飛び散って浴びたのではないかとびっくりして、見えない何かを払いのけた。祖母は、そんなもの既に消えちゃってるよと呆れて言った。祖母は僕が叩き潰したガムと包み紙を調べたいから貸して欲しいと言われた。祖母は集中して、額にうっすら汗を浮かべながら調べてみたけれども、微塵も邪鬼の気配は残っていなかったそうだ。祖母はどこかにいるおじと話をしている様だった。おじに言われて、祖母は僕の手相を見てみた。僕の手相には両手に神秘十字も仏眼もあったのを驚いていた。祖母のおじは、僕は九字を切る力があるだろうと言ったそうだ。
 祖母の話によると、僕は大きな鬼の眼を持っているそうだ。鬼の眼は心の眼とも第三の眼とも言いうらしい。風魔忍者の持つ鬼の眼は神様から授かった特別な眼だそうです。風魔忍者の一族は鬼の血を引く子孫なのだそうです。風魔一族は守護神の鬼(不動明王)から鬼の眼を授かったのだそうです。

 関ヶ原の戦いの後、風魔一族は徳川家康の命令で服部半蔵に追われ滅亡しかけたそうだ。服部半蔵の探索で風魔の里が暴かれる前に風魔の術者が鬼の眼で未来を見通して伊賀者に見つかる前に逃げ出したそうだ。その後、元・豊臣方の家来にかくまわれて明治維新まで逃げ延びたそうだ。
「お婆ちゃんも、未来が見えるんだよ。○○ちゃん(僕)の願いの未来をなんでも叶えてあげる。」
 僕は祖母が本当に未来が見えるのか疑っていました。すると、祖母はジャンケンをしようと言い出しました。そこで、僕と三回ジャンケンしたら、三回ともお婆ちゃんがジャンケンに勝ったのです。祖母は鬼の眼を開くと未来がはっきり見えてました。祖母は、この話をすると祖父が機嫌を悪くするけれども、と言って祖父を救った話を教えてくれました。祖母は毎晩少しずつ未来をぼんやりと見ていくのだそうです。あんまりハッキリ鬼の眼で未来を見て悪い未来だったら、その未来が確定してしまうそうです。鬼の眼で見た未来は時系列ではなく見た順番に過去になっていくために未来は未定で変えることが出来るけれども、過去は変えることは出来ず、鬼の眼で見た未来も過去なので一度見た未来は過去になり変えることが出来ないのだそうです。だから、身近な人の未来を見ることは危険なのだそうです。なぜなら、身近な人を心配すればするほど悪い想像をしてしまい、悪い未来を見てしまうので失敗して身近な人の悪い未来を鬼の眼で見てしまうと悪い未来が確定してしまうのです。ですが、戦争中は祖母は祖父の安全の為に細心の注意を払って未来を見て行きました。祖父が鉄砲の弾に当たりそうになると、外で石ころを拾って中国の奥地に石を瞬間移動させて弾をはじき祖父を守ったのでした。ですが、ある時失敗して、祖父が弾にあたってしまいました。祖母は祖父の命と引き換えに、ほとんどのお金と土地が無くなっても構わないからという条件で、祖父は一命をとりとめて帰国することになりましたが、戦後は財産のほとんどを失う事になりました。
「未来をなんでも叶えてあげるから、なんでも言ってごらん。」
祖母がそういうので、兄弟が欲しいと言いました。
「弟が欲しいのかい?」祖母が言いました。
「いや僕は、お兄ちゃんが欲しい。」と言いました。
でも、祖母はお兄ちゃんは過去を変えなきゃならないから無理ねと言われました。一度、僕が死んだらすぐ兄が生まれて、次に僕が生まれてくればお兄ちゃんができるよと言われましたが、そこまでしなくていいと僕は言いました。
「苦しまずに、すぐに死にたい。そのままずっと、天国で暮らしたい。」矛盾しているけれども、こう祖母に言いました。
「え、どうして、誰かにイジメられているの?」と祖母は驚いて僕に聞きました。
「大人になって、病気とか仕事とか辛いことばっかりじゃ嫌だから、その前に苦しまずに死にたい。」と僕は答えました。
「穢れも、欲も無いのね」祖母は少し困ったような顔をしています。
 祖母は心の中に欲も穢れの欠片もないとそれはそれで、命も惜しくないから自殺して短命になってしまうのはよろしくない。自殺してしまうと僕が悪霊に変化する危険性があるから少しの欲望と穢れを意図的に植え付けることにすると祖母は言いました。そこで、人生にあまり悪影響が出ない程度に性欲を宿すと言ったのです。
 そこで、すぐに死ぬことは出来なくなった僕の次の願いは祖父母の様に年金生活まで長生きして、平均寿命か祖父母の年まで『普通の人生』で寿命を閉じたいと言いました。祖母は寿命はわかったけれど、どんな大人になりたいの、と言われましたが、別に普通で良いよと答えました。僕は特に何になりたいとか夢を持っていなかったのです。やりたい職業も特には希望を持っていなかったのです。祖母は社長とかにはなりたくないの、と聞かれましたが当時の僕はそれほど社長になりたいわけではなかったのです。普通に学校行って会社に入って普通に働いて、定年を迎えて平均的な寿命で人生を終える。怪我も病気の借金もしたくない。そう思っていたのです。今考えると、つまんない小学生だなと思うのです。『お仕事』があるなら鬼の眼もいらないお不動様に返したいと言ったら、不動明王が業を煮やして怒ったのです。
 生まれつき両目が見えない人は両目が見えない人生を生きるのだから、そこから逃げることは出来ない。手や足がない人は手や足がない人生を生きる。そこから逃れることは出来ない。鬼の眼を授かって生まれたものはその人生を生きるのだ。そういわれて、僕は生まれつき指のない同級生を思い出して落ち込んでしまいました。鬼の眼を持って生まれれば凡人が経験できないような刺激的な人生を送ろうと思えば送れるのに、それが嫌なら相当な調整をしなければならない。平凡な人生を送るには御利益を色んな人に分け与えなければならない。
「ねぇ。○○ちゃん(僕)いっそのこと総理大臣にでもなるかい。」祖母はニコニコしながら僕に言ってきた。
「総理大臣って、何?」僕は総理大臣を知らなかった。
「日本で一番偉い人だよ。」祖母は言った。
「無理だよぉ。」僕にはとても荷が重すぎた。
御利益は分け与えることが出来るけれども、業とカルマは僕自身でクリアしていかなければならないそうだ。死後に天界に行きたいのなら大変多くの善行と悪行をこなさなければ行くことは出来ない。そこで、まず、中学高校ではイジメられることになった。大学受験を志望しても大学には受からない。まず、英語が出来ない。しかし、『お仕事』の為に28歳で地方の大学に編入する。業とカルマの法則で良いことと悪いことを沢山やる為に不動明王が悪霊を10万匹、掻き集めてくるから、それと九字を切って闘え。ちゃんと修行をしないで九字を使いまくるのは仏法の上では悪行になる。また、浄霊をすることは善行になるので、これで帳尻が合うらしい。

留萌沖で僕が10万匹の悪霊と決闘するまで、僕の心の水晶が穢れないように不動明王が切り落として、布袋さんと毘沙門天が水晶が穢れないように仕掛けを作って保管する事にした。そこで、不動明王が10万匹の悪霊にケンカを売って来るために僕の水晶の端っこを切り落とすことになった。ただ、絶対にしてはいけないことは、水晶を切られる瞬間はわずかでも僕は不動明王の事を考えてはいけないと言う事だそうだ、考えたら不動明王が危ないのだそうだ、切り落としてもらう瞬間、祖母に僕の顔に手拭いを被せてもらって何も考えないようにした。不動明王は宇宙全域に水晶をもって、これだけの水晶の持ち主がケンカの相手をするから怖くない奴はいくらでもかかってこいと言い触らしてくるのだそうだ。全体を切り落とすには不動明王でも2週間ほどの修行が必要になってくるらしい。そこで、僕がその2週の間に万が一でも死ぬようなことが無いように不動明王の有力な家来である四天王の四匹の鬼がボディーガードとして就くことになったのだそうだ。その間、僕は不死身になるらしい。
 2週間がたち、不動明王は僕の心の水晶を切り落とすことになった。絶対に切り落とす間に不動明王の事を考えないように近所を一周してきて祖母に手拭いを顔に被せてもらうことにした。一周してきてもまだ、考える余裕があったので、もう一周して来てから、手拭いを被せてもらった。走っている間に友達に見られて、何で走っているのと言われたが、適当にごまかして走った。やっとのことで水晶を切り落としてもらうのを成功した。
 最終的に心の水晶を切り落としてもらった時の心の純粋さで、僕の未来は何でも思いのまま願いが叶うと言われたが、結局はぐちゃぐちゃになって全宇宙で最強の貧乏くじを引いた感じになってしまった。最後には御頭首から僕には恐ろしい未来が待っているから記憶を消して一切何も教えるなとさえ言われてしまった。しかも、鬼の眼で未来を見ているので確定した未来なのだと言う。なんでこんなことになってしまったのだろう。ちなみに人気女優との結婚話は無かったことになっているだけでなく、普通の人との結婚も恋愛もない事になった。それを入れると人生が波乱万丈になりすぎて心が穢れ過ぎるのだそうだ。留萌沖での命懸けの浄霊ミッションはキッチリはめ込まれていた。

 時と場所は2000年8月の稚内に移動する。

 28歳になった僕は7月の下旬から瞑想をしながら聖水を作る修行を独りでしていた。座禅を組んで手には金属のボトルキャップを乗せて少しずつ毎日、水に霊力を貯めてはペットボトルに注いでいっていた。8月6日だったろうか、急に何かを感じて札幌の実家に車で移動する。一日か二日、実家に滞在した後に突然、広告の裏の白い面に「何も心配はない」と書き残して、母からもらった稚内で食べる食材を車に積み、札幌を出るときにコンビニで、ロールパンと北海道の天然水の2リットルのペットボトルを購入して再び稚内に向かいだした。僕は何かから逃げていた。いつもは高速で旭川から内陸の国道40号線を通って稚内に行くのだが、今回は下道で留萌方面に出て日本海側のサロベツを通ることにした。留萌を過ぎて小平町の道の駅でトイレ休憩を取った。なんとなく、この辺に何日か身を隠そうと思って車を止められそうな草むらを探すため来た道を800メートルほど引き返した。敗れたカレンダーかポスターの紙が散らばっているところがあったので、そこに車を隠すことにした。サイドミラーをたたんで、エンジンを止めて日が暮れるのを待った。トイレに行きたくなったらそこから道の駅まで歩くことにした。食欲もなくなり、あまり水もガブガブ飲まなくなっていた。たまにエンジンをかけてラジオを聞いていたが聞かなくなっていた。深夜の1時半過ぎに人がいなくなったころにスポンジとハンドタオルを持って道の駅のトイレに向かって歩き出した。田舎の海沿いの道を深夜にひとりで外灯もないところを歩き出したのである。今思えば異常としか言いようがない。道の駅のトイレに入って洗面所でペットボトルに汲んだ水で体を拭いていった。洗面所の水は飲めないと書いてある。だが、体を拭くことは出来るはずだ。体を拭いた水はみるみる汚れていった。水を何度も変えて脇の下や股間を拭いていった。お風呂やシャワーが浴びれなくてもこれだけで大分違うことが分かった。災害時の参考になるかもしれないと思った。体が拭き終わって服を着こんだところでトイレの個室の外で人の気配がした。ここにいることは誰にも見られたくなかった。トイレのドア越しに九字を切ることにした。無言で剣印を結びドア越しにドーマンを描いた。そうすると男性はむせ始めてトイレを出て行った。個室から出るとトイレの床に水が滴り落ちている。何の水だろうかと思って辿っていくと男性が手を拭きながら青ざめて僕の方を見ていた。その男性は、お漏らしをしていたのだ。まずい、オバケと間違われたかなと思い、愛想笑いをしながらその場をやり過ごした。そのまま、自分の車に戻ることにした。駐車場を斜めに横切ると若い女の子達がこっちを見て、やだー、あそこに人が歩いてるー、と驚いていた。人ぐらい歩くだろと思って前を向き直った瞬間である。

 突然、心臓が止まるかと思うほど、びっくりした。

 胸に何かが当たったわけでもない。何者かが突然目の前に現れたわけでもない。大きな音を聞いたわけでもない。何も見てない。聞いてない。触ってもいない。ただ、心臓が止まるほどの『びっくり』が飛んできたとしか言いようがない。死ぬかと思った。少しの間、僕は呆然と突っ立っていた。次の瞬間、僕は直感で攻撃を受けていると感じた。
 呪術で反撃しなければ危ない。そう思った僕は、剣印を結んで体の芯から龍が湧き上がって上空に上るイメージをして、強く念じた。その時である。
 「違う、我々は敵じゃない。そのまま、海岸へ行け。」森の茂みの中に五・六人の山伏の装束をした術者がいる様な気配を感じた。その一人は子どものような、または、せいぜい中学一年生ぐらいの少年がとても怯えているような気配を感じた。
 「さては奴がやったな。お前だろ。」すると、再び年配の術者の声が頭の中に聞こえてきた。
 「忘れているのか、我々はみんな仲間だぞ。」
 「そうか、わかった、風魔一族のミレニアムイベントを成功させましょう。」森に向かって剣印を少し傾けて、キザにカッコをつけるポーズをして海岸へ向かった。海岸には何があるのだろうか。
 海岸に向かうと石碑が立っていた。そこには『三船殉難事件遭難者之慰霊碑』と書いてあったように思う。三船殉難事件に関してはWikipediaに書いてあることぐらいしか知らないが詳しくは検索して調べてもらいたい。そこには4桁の被害者が出たとされ、ソ連軍の潜水艦の非道さを感じた。僕はそこで、何かしなければならないと思い、九字を切った。
 また、年配の術者からの声が聞こえてきて、
 「九字なんか切っちゃダメだ、お経を上げなきゃダメだ」と聞こえた。
 「お経と九字は違うのか。」
 「全然違うぞ。」
 「ごめんなさい。お経なんて知らないぞ?」
 「なんでもいいんだ。」
 「南無阿弥陀仏なら知っている。」
 「それでいい。」
 「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。」僕は、合掌をして、その場を立ち去ろうとした時に何かがまだ足りな様な気がした。
 年配の術者の声が頭の中に聞こえてきて、
 「何か大きな術を使え、なんでもいい。」と聞こえた。そこで僕は、北の国の二代目の首領がまだ生存していた時代であるので、北海道の海岸から日本海越しに北の国のピラミッドに向かって、
 「くたばれ○○〇!」
 1999年に亡くなった祖母が晩年苦しんだと同様の病を二代目の首領が侵される様に願って。脳梗塞と認知症、失語症、左半身不随になるような未来を鬼の眼で見るように念じた。祖母を見ていた経験から具体的でリアルな未来を念じて見るように努めた。九字を切った後に最後に、咄嗟に内獅子印を結んでいた。内獅子印は一説によると、不動明王の印であるということを後日知る事となる。
 帰りの途は身の回りに九字を切りながら車へ戻り、車中泊をした。三日三晩何も食べずに、たまに水でのどを潤すだけで寝ることもせずに、深夜に体を拭きに行き、石碑でお経を上げて、北の国に呪いをかけて、往復の道は九字を切りながら歩くことを繰り返した。車に泊まっている時に、悪魔崇拝者に反撃するために何かしたいと思い、年配の術者にアドバイスをもらった。
 「敵の術者も僕のことを監視しているのだろうか?」
 「それはしている。」
 「どうやって?」
 「お前の視覚に侵入して位置を探ろうとしている。」
 「ところで、術者が相手の視覚に侵入している時に見たくない嫌いな色ってどんな色?」
 「個人差はあれど大体蛍光色かな。」
 「蛍光色のMDのディスクが何枚かあるんだけれどどれがいいかな?」
 「さあ?」
 目を瞑って適当なものを選んでみる。僕は目を瞑ってMDディスクのケースの蓋を開けて二枚選び出した。
 「これはかなり気持ち悪い蛍光色だな。」
 「よし、やってみよう。」
 目を瞑って、カシャカシャと音をさせながら敵の興味を引き、目の前にMDを持ってきて、突然目を見開いた。寝不足の僕にはギラギラとした蛍光色が目の前に広がった。
 「これはかなり効いたぞ。」敵の術者がびっくりして、ひっくりかえった映像が頭に浮かんだ。
 気が付くとMDのケースが歪んで蓋が閉まらなくなっていた。このMDケースは後で友達と物議を引き起こす。超能力のような霊能力が引き出されている時に、触ったプラスチックのMDのケースが歪んでいた。しかし、スプーン曲げをよくやる友達の意見としては、超能力でプラスチックなどの樹脂が曲がることはなく、金属しか曲げることは出来ないそうだ。プラスチックのスプーンなど何度も挑戦してみたが、出来なかったそうだ。だから、MDのケースは熱による変形ではないかと言う意見だった。しかし、熱の変形であったとしても疑問は残る。僕の手からMDのケースが変形するほどの熱が出ていたとは思えず。車の中が日光で熱せられて変形したとしても夜中には太陽は上がっておらず。夜中に開くまでは開けて、閉じるときに変形していて閉じれなくなったのである。開くときに既に変形していたのであれば、歪んでいてもまた閉じればピッタリと閉じるはずである。深夜に蓋を開いたときに歪んで、閉じなくなったとしか思えないのである。

 その後で、霊力を使い切って、僕の鬼の眼をあの世に逝かせる時に、小平にいた風魔の子の霊を一緒に天に上げる。これで、ようやく風魔の子は悪霊にならずあの世へ成仏することが出来る。日本海を舞台に戦争も起こらなくなるが、僕にはいつ鬼の眼が外れて天に昇って逝ったかはわからない。三日目にようやく眠くなり、昼頃に小平の道の駅で潮汁を食べて稚内に向かった。その時に、日没までに稚内のアパートについて布団に入らないと、次の寿命を繋ぐことが出来ずに、僕は死んでしまうぞと不動明王に言われて、急いでいるのだけれども、罪を犯すと寿命も縮んで辿り着く前に死んでしまうからスピード違反もできずハラハラしながら車を運転していると、日没を迎えてしまい、もうだめだと思ったら、目の前が真っ白になり何も見えなくなった。そうしたら、日本海側のサロベツを走っていたはずなのに、次の瞬間、内陸側の国道40号線を走っていて、時刻も日没の1時間前になっていたことがあったから、その時に天に上って逝ったのかもしれない。アパートについて来てもらってから、霊感の強いスプーン曲げをできる友達に眉間の第三の眼の部分を霊視してもらったら鬼の眼は外れてしまっていって、アーモンドのような跡しか残っていなくって、彼には驚かれた。だが、僕はパンピー(一般ピープル)万歳と叫んだのだった。

その後、数か月後に精神病院に二度、僕は間をおいて入院することになる。

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