グラデーション

大人になってからの感情は複雑だ。
学生の頃は、もっと単純だったように思う。

してみたい事をする、気が合う人と関わる、行きたい所に行く、やりたくない事はやらない。

お金はないけど、時間があって、怖いものなんてなくて、従わなきゃいけないものもなくて、何も知らないくせに変に強気だった。

大人になるとそれは変わった。
会社ではやりたくないなんて言ってられない。気が合わない人とだって仕事を円滑に進めるためには普段からコミュニケーションを取っておかないといけないし、逆に、気が合う人とだって仲良くなりすぎてしまったら仕事はしにくくなってしまう。
自分の感情を優先してしまったら、あっという間に仕事は回らなくなるだろう。

自分の立ち位置を、求められている事を、客観的に見て、それがあたかも自分が心から望んでいる事かのように行動する必要がある。

恋愛だってそうだ。

学生の頃は、好きだから付き合った。信じていたから怒った。上手くいかなくて別れた。
全部単純だった。

社会に出てからの恋愛はそうじゃない。

好きだなぁ、と思ったって何か一つのきっかけで好きじゃなかった事に出来るし、その逆にあんまり好きと思えなくても、この人に賭けてみよう。と思うことがある。
ある程度信じていた人にだって、信じてはいるけど期待はしていないから、怒る事はない。そこには明確な違いがあるのだ。
2人の関係が上手くいかない事を深く考え出す前に、必要な距離を保って自分の人生を充実させる方がいいと知った。結果、上手くいく気がする。


学生の頃の自分の考え方は分かりやすく、はっきりしていた。
今はグラデーションみたいだ。
いろんな考えが重なって色が見えるけど、そこに新たに考え方を足せば違う色になるし、見る場所を変えれば色も変わる。

自分でもそうだと分かっているから、いろんな事柄に対して決定を下さずにふわふわしている。
それもグラデーションみたい。

これは成長か?
ずるい大人か?



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