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#シロクマ文芸部 こどもの日伝説

こどもの日伝説 これはこの村に三百年も受け次がれたある伝説から由来する
村の言伝えはこう書かれていた
皐月晴の穏やかなある日 村では田植えの準備に追われていた 子ども達は親の邪魔にならぬよう 下の子どもの面倒を見たり 赤子は背におわれ親のいない家を守っていた ところがある日 山を下り里にたどり着いた 旅芸人の一座が 鉦や太鼓を打ち鳴らし村の家々を練り歩き歌い始めた

「今日はよい日じゃ 集まりなされ
蛍も喜び甘い蜜 ふうわり ひいらり
舞いましょう ほうら ほうら 甘い蜜」
子ども達は 家から顔を覗かせ一座を見ていた 家から一人 また一人出て行くと 旅芸人は首から下げた箱から飴を取り出し子らに与えた 子ども達は珍しい飴欲しさに次から次に旅芸人の後に付いて行ったのだ 

そして 仕事を終えた親たちが家に戻ってみると 子供が 消えていた
村から子供が人っ子ひとりいなくなっていた
親たちは 狂ったように来る日も来る日も子どもを探して回った
しかし 五月五日を境に忽然と消えてしまったのだ
あるものは 山の民にさらわれ秘境の地で囲われているだとか 異邦人に売られていったとか ありとあらゆる噂が飛び交った それも一年経ち四、五年立つと人の口端にのぼらなくなっていた
それを憂いた親たちは あの忌まわしい過去を忘れまいと 五月五日をこどもの日とし 慰霊の日と定めこの日は我が子を家から一歩たりとも外出することを禁止した
暫くはこの教えは守られていたが この事件がはたして 真実が否か百年もたてば定かではなくなっていた
ある時この伝説に興味を持った若者が現れた 寺の過去帳や 昔 庄屋といわれた蔵からその当時の様子を書き留めた古文書を見つけたのだ 
「やはり村から子どもがいなくなったのは 本当なのか……いったいどこに消えてしまったんだ」
調べていく内に 一人だけ帰ってきた子どもがいたという事実を突き止めた
履いていたわらじの鼻緒紐がきれてあるけなくなり しゃがんで結び直している間に置いて行かれたのだと証言している
そして子ども達は川の方へ消えていったのだと
その年は異常に蛍が沸いて 村人を驚かしたとも 
家の中に入り込んだり 家から離れようとしなかったり 村人は子どもが蛍になって帰ってきたと噂した
若者は とてつもない闇を感じて古文書を閉じた
結局一人だけ取り残された子どもの手掛かりは得られなかった
村はずれにその当時立てられたであろう観音堂を見つけ 若者は手を合わせた「毎年現れる蛍があの時の子ども達の魂なのであれば 未だ成仏出来ず彷徨っているのであろうか」若者はもうこれ以上関わることを辞めた
三百年後の現代 こどもの日 親たちは子どものために 山や川 渓流へと出かけている どうか愛する子どもを見守り 目を離さないで頂きたい この村の伝説のようにいつなんどき 神隠しが現れあなたの子どもをさらっていくとも限らないのだから……



こどもの日こんな恐ろしい話書いて良いんだろうかと思いつつ  ホラー好きの変わり者です🙇💀
折角のゴールデンウィーク いたましい事故の起こりません様いつも祈っております

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