今日の一福
2024/03/25
歯磨き粉で顔を洗う。
泡が立たない。
まあ立たないわな。
そんな当たりまえ現象に「?」となって脳停止。のち、そこはかとなく漂い来るミント臭に真実―――というほど大げさなものでなく、自分のただの一時的な状態をやんわり告げられるが、認められない。認めたくない。意地でも認めてやるもんかと、途端に岩のようになるこの頑なさの謎。
ただのうっかり。
そんなこともあるやんけ。
多少ゆるんでみたらどうでっか。
どんな自分もゆるすとか、なんとかかんとか、よく言うじゃん?
なんてな、当座の当人にとっちゃかえって惨めよ。トイレの水も流せなくなる。これ明日死ぬのか。もう死ぬ。いま死ぬ。世界も滅びる。むしろ滅びろ。とっくの前に全員終われ。わたしこんなに頑張ってるのに思い通りに報われないなら。ギブ&テイクの「テイク」をよこせ。
この無惨。
余裕なんてミリもないこれ、おい大丈夫か。どんなもんなん。何がいったいどうなったんじゃと大いに慌てるその裏腹、涙ぐんじゃってるから手に負えない。そんなわたしの向こうから、
「わくわくして待ちましょうよ!」
テレビ画面には桜の標本木を仰ぐひとびと。
気象予報士の真剣なまなざし。
つぼみの先は薄っすらピンク。ふくらみつつも未だ固そうか。
まだかまだか、今よ今よと、日本全国、固唾をのんで待つ春の訪れ。
「わるくないですよ。待ってるのも」
もうちょっとという感じですよね、そうですねとキャスターの声。咲いても咲かなくても口調ほがらか。いかにも楽しみで仕方なさそう。これは確かに「わるくない」。
と、カーテンを開ければ曇り空。
あんたの思い通りになんざいきませんよと、おもしろいでしょと、誘われるようにしてリードを手に取る。お散歩嫌いの犬にはわるいが、ここは少し、春をたのしみに参じましょうか。
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