今日の一福

　2024/03/05

「今日は休みだ。たまご蒸しパンを食べたい！」
「なんですってリーダー！」
「聞こえなかったか軍曹。たまご蒸しパンだ。材料はこれだ」
「（ふむふむとクック〇ッドをながめながら）リーダーたいへんです！」
「どうした軍曹」
「肝心の小麦粉がありません！」
「なんだって？　米粉はどうだ」
「いつぞやのお好み焼きで使い果たしましたイエッサー！」
「仕方ない。じゃあ生米をそこのブレンダーにザザッとブッ込め。きっちり６６ｇ準備しろ」
「やること雑いくせに指示は細けぇ！」
「なにか言ったかね軍曹」
「いいえリーダー。あっ、そ、それは！」
「なんだ軍曹。トラブルか」
「いやそのフライパンはいけませんリーダー。テフロン加工がすでにお亡くなりになって使えたものじゃありませんてあんたが散々」
「なんだと。買い換えたはずだぞ軍曹。どういうことだ！」
「買い換えたのはフライパンのフタですリーダー！」
「先に本体を買えい！」
「ソウデスネ！」
「まあいい次だ。そこの卵と油と混ぜてくれ。牛乳もな。砂糖はどこだ」
「蜂蜜しかありませんリーダー！」
「甘いならよし！」
「じゃあこれグラムはどうしましょうか」
「とりま砂糖といっしょでええやろ軍曹。追い鰹ってやつと一緒よ。あとでどうにでもなるやつは全然放置で」
「あああっ、リーダー！」
「今度はなんだね軍曹」
「ちょ、なんでフライパンに油ひいてるんスか。それ焦げますって。あとでどうにでもなりませんてえええって、たまご蒸しパンですよね？！　蒸すんですよね？！　あれっ、ちがった？？？」
「なんかホットケーキが食べたくなった！」
「ヤメテ！」
「じゃあどうしろっていうんだ軍曹！」
「せ、せめてレンチン。レンチンでいきましょうリーダー！」
「あれムズい」
「ウソだろおい。どのへんが」
「焼きムラが出来るのがすごい嫌」
「ワガママか」
「わたしはたまご蒸しパンが食べたいんだ！　それだけなんだ…ッ！」
「だから蒸しパンつくりましょ！？」

　もうええわぁ～て。
　今朝のわたしの脳内劇場。その一コマ。
　料理中はまあこういう調子が、通常操業。五感および直感を駆使したこの時間がとてもスキだ。誰様の苦情も受けつけない。
　思いもしないアートの誕生。これに立ち会う奇跡が毎日。ゆるされるのなら日に三度。これにはいちいち感動、感謝せずにはいられない。
　結果、それが傑作かどうかなんざ野暮なことは言いっこなしで。

　「さて軍曹、明日はなにをつくろうか！」