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筆で手紙を書くということ

学生時代の同期宛てに、筆で手紙を書いています。

当然ペンで書くよりも時間がかかり、紙幅も必要になります。
間違えたら書き直しになるので、鉛筆で原稿を用意し、何度か推敲します。

しかも筆で書く手紙は旧字体を使いたいという自分なりの拘りがあって、自信がない字に関しては字書を引くところから始まります。
もはや書作と同じことをやっております。。

デジタル化、ペーパーレス。紙の高騰。そんな時代。
その上、手紙は届くまでに時間もかかるし切手代もいる。こんな時代錯誤なことをする人は一体どれくらい居るものでしょうか。


しかし、墨と文字があったからこそ歴史が紡がれ、国としての礎もできたのではないかと思います。大袈裟かもしれませんけれど。

今なお「木簡が発見された」とニュースになったりしますが、それも墨書ぼくしょされたからこそ。

墨の原料になっている煤の主な成分は炭素です。この自然界のなかでも安定した炭素という物質が使われたことにより、長い年月を経た今になっても肉筆の字が残ることに繋がったんですね。
過去を振り返ると墨の持つ力は大きいもの。




墨が売れない

そんな話をずいぶん前から耳にします。
人口が減れは自然と需要は減る。それにこの時代背景もあるし、墨の代替品となる液体墨も豊富。

でもね、今まで墨が担ってきた役割を考えると、この産業は守っていかなくてはならないと思うのですよ。

奈良に行くたび、いつまでも墨匠さんたちのお仕事が続いてほしいという気持ちが強くなります。



話が逸れましたね。

原稿が完成すると、墨を磨って清書していきます。
私が筆で手紙を書く時に意識するのは軽やかに書くこと。転折で押さえつけすぎず、爽やかに。要所要所で墨継ぎをして、一枚の中に遠近感を出す。
墨が濃いときつい印象になるので、濃度は程々に。

そんなところでしょうか。

本文を書き終えたら、相手や季節を考え切手を選び、宛名を書く。その際、私は目上の人や年上の人には楷書を使います。
楷書は最も丁寧な書体です。一点一画を正確に書きますので「正書」「真書」ともよばれます。

楷書が最も難しい書体だと思います。


手紙は時間がとてもかかる。

でも、その相手を想う時間こそ、手紙の価値ではないでしょうか。

そろそろ文香も作ろうかな。

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