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きさらぎ駅級の実力派ヒロイン(レビュー:『N号棟』)

オススメ度:★★★★☆

とある地方都市に、かつて霊が出るという噂で有名な団地があった…。女子大生の史織(萩原みのり)は、元カレの啓太(倉悠貴)が卒業制作に撮影するホラー映画のロケハンに、興味本位で同行する。啓太の現在の恋人・真帆(山谷花純)と3人で向かう先は廃団地。廃墟同然の建物を進む一行だったが、そこには今も住人たちがいた。不思議に思いながらもロケハンを進めようとすると、突如激しいラップ現象に襲われる。騒ぎが落ち着いたかに見えたその瞬間、優しい声をかけてくれていた住人の一人が、目の前でおもむろに階下へ飛び降り自殺を図る…。状況を飲み込めずに驚く史織達をよそに、住人たちは顔色一つも変えない。超常現象、臨死浮遊、霊の出現…徐々に「神秘的体験」に魅せられた啓太や真帆は次第に洗脳されてしまい…

 われわれホラーファンはAmazonレビューの星の数などアテにはしない。というのは、一般視聴者のホラーの楽しみ方とわれわれの楽しみ方は相当に乖離しており、彼らの言う「つまらない」を真に受ける必要がないからである。

 例えばだが、『Not Found』シリーズの傑作『いま、霊に会いにゆきます』などは一般人が見て楽しめるとは全く思えない。おっさんが歩いたり、居酒屋で酒を飲んだりするだけの内容だが、これでもちゃんとホラーなのだ。かなりメタ的な作風なのでこれを楽しむにはかなりの素養(ホラー映画に費やした時間)が必要となる。

 とはいえ、Amazonの星平均が2以下になると流石に警戒してしまう。素養の問題ではなく、そもそも作り自体が不出来な可能性があるからで、星2の『N号棟』にも相応の警戒心を抱いていた。地雷を踏むつもりでわれわれは視聴を始めたが、見終わった結果としては……

「やっぱ一般人の評価などアテになんねえな!」

 これである。

 本作で描かれているのは、いわば「社会型の呪い」「組織化する呪い」とでも言うべきものであり、これは呪い表現のバリエーションとして、かなりの新機軸であろう。

 本作では元ネタとして、2000年の幽霊団地騒動が使われている。

 あらすじにある通り、この団地が廃墟となっており、そこに映画撮影のロケハンに訪れた大学生三人組の話なのだが、そこにはなぜか

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