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詩的な塵  我々は塵である 〜ある犬の飼い主の一日




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こんな記事を書いたこともあり

今 自分の中で 「 塵 」というものが 静かに
かつ、饒舌に それについて 語りかけてくる


今回 紹介するのは こちら




ある犬の飼い主の一日

著者 サンダー コラールト


タイトルから想起されるような犬の話は
それほど 物語の大部分を占めている訳ではない


主人公は ヘンクという 中年男
彼が 同年代の女性 ミアに恋をする


**


ヘンクは 読書を愛し 日々 それの齎すものについて
考えを巡らせている

本に対する愛と嫌悪

読書によって他人の考え、および感情の世界に入り込むと
エンパシーは 豊かになるが 自らの個性は稀薄になる

願望と不安 親密さと疎遠さの混じった居心地の悪さ
まさに結婚と同じだ


そんな、離婚歴のある ヘンクが ミアという女性に出逢い
自らを ボルヘスがいうところの 「塵」だと 認識しながらも

恋のなかにみる「 生気 」に 生きる喜びを感じていく


詩的な塵


『 恋をするという 不思議な能力が 塵に備わっているというのは
詩である 』


これこそボク自身が これまでに 幾つもの詩のようなものを
紡ぎ 塵のような ちいぽけな埃を携えながら 生きてきた
そのものを 指し示す 影像のようなものだ


ヘンクの話に戻ろう


彼は 自らの人生を < メメント モリ >

( 死を 忘れるなかれ )と

< カルベ ディエム <  今日を 楽しめ >    の二極 の あいだを
行ったり 来たりして追っている


彼は 見るだろう
自分が 生気を 渇望していること


楽しみや 喜び、
よい人生を 求めていることを


塵が 恋をする


それは ひとつの変換に 過ぎない


塵は 恋をする


真実と 美しさは 人生 そのものにある

いつだって、どこにだって


それを 探し 掘り起こすのは
我々が 望むか どうかに かかっているんだ


* *  


『  土から 取られた あなたは 土に帰るまで
額に 汗して 糧を 得る 
あなたは 塵だから 塵に帰る  』


創世記 三章 一九節


* *


ボクは これを とある病院の待合室で
書いていた


最近、振付師の夏まゆみさんが亡くなったり
先日、あげた 感想文の 西村賢太氏が 亡くなったことを
改めて 考えたりした


死は 他人事ではなく、
きっと 身近に 寄り添っているもの


人生は 短い


その危機感を持ち
今、自分が したいことに 真剣に向き合っている


そのひとつが 書くこと


自分の 生きざまを 取り繕うでなく
ありのままに 残すこと


誰かを 愛すること

愛されること


何に 惑う事なく まっとうする つもりである



* * *













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