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表現してもしなくても。ここにいる理由なんて探さなくても、いいよ。

昨日、書くために書かないようにしたいと

つぶやいて、noteをお休みした。

この「書くために書かない」問題ってわたしの

なかでいつも渦巻いている。

書きたいのに書けないとかでもなく。

書けそうなのだけど、その書きたいは

ほんとうに今言わなければいけない

ことかなって思うと、後ずさってしまい

たくなるようなそんな気分だ。

無理に書いてしまうと、ぼやけるのだ。

たぶん、書いているものの輪郭が。

わたしのnoteを「書く」スタイルというか、

やり方はたぶん、なにげないことしか

いつも書けないのだけど。

ふつうの日常しか書いてこなかった。

人の気持ちを動かす、揺さぶる人の

文章はやはり、心の扉がいつのまにか

開いていて、そこに染み入って入って

ゆくようなそんな質感を持っている

気がする。

憧れる、ついでに嫉妬もするけど。

そこにわたしは近づけない。

その熱量が凄いと思いながらも

その熱量に気圧されてしまう。

読んだ後はちょっとお腹がいっぱいに

なって書けなくなる。

表現については文芸学科で小説の創作を

している時も、教授に言われた言葉がある。

焦点がぼやけてるって。

ほんとうにここで言いたいことが見え

ないって。

あれもこれもいいたくなって収集が

ついていなかった。

風呂敷を広げすぎて回収できてなかった。

写真学科に通っている由美ちゃんと

その頃親しくしていた。

彼女は写真学科だったけど広告のコピー

ライター養成講座で一緒になった人だった。

偶然隣り合わせた由美ちゃんが同じ大学に

通っていることを知って仲良くなった。

のちに彼女は養成講座の課題の嵐について

いけなくなって、そこは辞めてしまうのだけど。

彼女は、わりとなんでもずかずかっという

タイプだった。

グループでチームになって広告制作物を

創る課題の時にも仕切ってくれた。

いろいろ采配することが得意なタイプ。

でも、写真となるとちょっと違うみたいで。

彼女はジャーナリストになりたがっていた。

すごいね、ってひたすらわたしはエール

をおくっていたけど。

卒業間近だった。

彼女と大学の食堂で偶然会った時。

ちょっと浮かない顔をしていて。

今のままじゃ報道カメラマンじゃなくても

写真とか無理らしいんだよって。

なんで?

彼女が、今までとりためた写真を教授が

みながらひとこと言ったらしい。

何を撮りたいの? って。

何をってこの被写体ですって答えたら

きみには決定的な致命的な理由があるよって

畳みかけられたという。

被写体ってどれ?

って返されたって。

君は、カメラが引いてしまってる。

被写体と撮影者、つまり君の距離が離れてる。

遠慮してるんだよって。

撮るってね、獲物を獲るの獲るなんだよって。

写真学科の教授にかなりお説教されたらしい。

畳みかけるように言われると、頭こんがらがる

よって、ちょっと不貞腐れていた。

わたしは、写真を撮るよりも眺めることの

方が多かったので、写真学科の教授の仰る

考え方が新鮮だった。

由美ちゃんには悪いけど、

撮るって獲るなんだよって言葉に惹かれた。

きみの写真は、一歩いつも引いている。

写真にそれが出てるんだって。

これは、写真の技術とかじゃなくて

撮りたいという気持ちが負けているせいだって。

凹んだぜっていう。

でもね、なりたいんだよねってフォト

ジャーナリストの夢を由美ちゃんは語っていた。

なんでなりたいの? って聞いたら。

存在価値だよって言った。

存在価値?

わたしがそこにいてもいい理由のために

なりたいんだよって。

わたしはそんな理由なら、ならなくても

いいよって内心思った。

由美ちゃんは、写真を撮らなくたって

いまも存在してるよって言いたかった。

そのじりじりとしたいらだちは本当は

わたしにもあったけど。

じぶんを差し置いてそう言いたかった。

由美ちゃんの撮る写真をあらためてみると

確かにそうかもしれないけれど、被写体の

触れてほしくない所はそっとしておくような

そんな撮り方だった。

わたしは嫌いじゃなかった。

そしてわたしの文章にも似ている気がした。

でも、これじゃだめなんだって。

もう捨てちゃいたいよって、彼女は自分の

撮りためていた作品集、黒い表紙の

ポートフォリオのページをみながら言った。

それはだめだよ、捨てちゃだめだよとしか

わたしは言えなかった。

大学の食堂の西日があたるその椅子に座って

由美ちゃんは沈んだ表情をしていた。

どんな西日だったかな、もうすこしオレンジ色
がかっていたかもしれない。

こんな時に感動していちゃいけないのだけど

彼女のすべすべの肌に差している西日の

オレンジめいた光がきれいだなって思った。

その情景はずっとわたしの中に残っている。

今世界がこんなになってしまって、わたしは

時々由美ちゃんのことを思い出してる。

あの後ひどい鬱になって撮っていないんだって

教えてくれた。

でもさ、写真を嫌いになったりはしちゃ

だめだなって思うのって言っていた。

なんで?

もし子供ができたらさ、いっぱい撮ってあげ

たいんだよ。

そのために、写真を一度嫌いになったことから

また好きになれるかが、わたしにとっての

課題だねって笑っていた。

また好きになれるよって無責任に

わたしは、いったけど。

いまもどこかで、なにげない風景を指の

眼差しの赴くままに撮ってるといいなって

思う。

写真を嫌いになって写真を卒業してまた

好きになっていたらいい。

でも今撮ってなくてもぜんぜんいい。

わたしも四苦八苦しながら書いてるよ、由美ちゃん。

由美ちゃんが憧れていた報道カメラマンの

沢田教一さんを今日ググってたらみつけたよ。

由美ちゃんが、好きだった沢田教一さんが

生きているかのようにここにいた。


(昨日書けなかったわたしにコメントくださったみなさんありがとうございます!とても励みになりました。)

西日の中で琥珀のように輝く水滴のフリー素材 https://www.pakutaso.com/20210106027post-32663.html

ぱくたそさんに素敵な画像を拝借いたしました。
ありがとございます!

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