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わたしの好きな「はやみねかおる」

たとえば世界がひとつの球体だったとして。それが硬い鉄かなにかで覆われていたとする。しかしその表面をまさぐっていくと、たった一つだけ、あたかも温い海のように柔らかい箇所があることに気づく。

突然なんの話だろうと思われるかもしれないが、上記の感覚がわたしにとってのはやみねかおるである。

はやみねかおるという人は、児童作家である。また、元は小学校の先生でもあった。
小学生の頃、教室のロッカーの端に、この先生の本が置かれてあった。本って面白いな、と思い始めたわたしはそれを貪るように読んでいた。『名探偵夢水清志郎シリーズ』である。このシリーズを全て読み終え、次に手に取ったのが『怪盗クイーン』シリーズである。

あれから20年ほど経った大人になってもまだ読み続けているわけだが、わたしはむしろ、はやみね作品は子どもよりも大人が読むべきなんじゃないか、と考える。

この先生の作品を前にすると、すべての大人は「生徒」にならざるを得ない。それは、作品に威圧感があるとか、そういうことではない。ただ自然と、わたしは先生の小説を読むと「教室の中にいた生徒」に戻っている。

この世で一番大切なものはなんだったか。
愛とは何であったか。
人を導くというのはどういうものであったか。

そういった目には見えない、けれども、大人として、子どもを導く者として大切な心そのものが、直接的な言葉ではなく「物語」として描かれている。キャラクターの台詞に馴染んでいる。

『摩天楼は燃えているか』を読み終え、これを書いている。あらためて素晴らしい作家であり、先生であることを実感した次第である。以下は、インタビュー記事である。興味を持たれた方は気軽に読んでほしい。先生の人柄の良さが伝わるはずだ。

https://toyokeizai.net/articles/-/727160?page=5

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