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2013年、鎌倉市が行ったHPVワクチン接種後の聞き取り調査

4月23日に開催された鎌倉市議会で、「鎌倉市は自治体で初めて、子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)接種後の体調変化に関する調査を行った」と言っていたのが気になり、掘り起こしてみました。


鎌倉市が行ったHPVワクチン接種後の調査

4月23日の鎌倉市議会については、下記の記事で取り上げました。

2013年に鎌倉市が行った調査の結果については、公式のものは見つからなかったのですが、タウンニュースのサイトに記事が残っていました。


子宮頸がんワクチン 「体調に変化」45.6% 市が接種の影響を調査
公開:2013年12月20日
 鎌倉市は12月11日、子宮頸がん予防ワクチン接種後の体調変化に関するアンケート調査の結果を明らかにした。対象者3060人のうち、約6割から回答があった。市民健康課によると、このような聞き取り調査を自治体が行って公表するのは全国で初めてという。
今回のアンケート調査は、市が一部助成を始めた2010年9月から今年8月31日までの間にワクチン接種した市民3060人が対象。今年10月に市が該当者に調査票を郵送し、約6割の1795人から返答があった。市市民健康課によると、接種者全員に対して聞き取り調査を行って公表するのは全国に先駆けた取り組みだという。

 アンケートのほか、症状が続いていると回答した人について電話などで聞き取り調査も行ったという。同課は「今回の調査では歩行困難や学校生活に重大な支障をきたすような症状の人はいなかった」と話す。

痛み、腫れ、だるさ生理不順なども

 ワクチン接種後に「いつもと違う体調の変化があった」と答えた人は45・6%にあたる818人。症状は接種部位の「痛み・かゆみ」が最も多く659人、「腫れ、あかみ」が493人、「だるさ・疲労感・脱力感」は162人だった。また、頭痛や発熱、手足の痛みや生理不順などを訴える人もいた(複数回答あり)。

 症状が出た期間に関しては、「その日のうちになくなった」が72人。症状が続いたと答えた715人のうち、「1週間以内になくなった」が659人、「1週間から1カ月以内になくなった」が45人だった。

 現在も変調が続いていると回答した人は11人おり、生理不順が6人、接種部位の「痛み・かゆみ」が5人、「腫れ、あかみ」が4人のほか、頭痛(2人)、発熱、めまい、手足の痛み、吐き気(各1人)という答えもあった(複数回答あり)。

 同課は「今回の結果は神奈川県にも報告し、貴重なデータを活かせるように働きかけたい。不安を感じている市民も多いと思うが、情報をしっかり伝えていけるように努めていきたい」と話す。

 子宮頸がんは「ワクチン接種で予防できる唯一のがん」とされ、全国の自治体などで接種への助成が進んだ。鎌倉市では11年2月に市の全額負担となり、今年4月からは国の定期予防接種となった。小学6年から高校1年に相当する年齢の女性が対象で3回の接種が必要とされていた。

 しかし、厚生労働省は「因果関係が否定できない疼痛が特異的にみられる」などとして、今年6月14日に子宮頸がんワクチンの「積極的な勧奨を差し控える」との勧告を出した。これを受け市でも、通知はがきなどでの「個人勧奨をしない」対応をとっている。一方で「リスクを理解したうえで希望者が接種を受けることは妨げない」としている。

https://www.townnews.co.jp/0602/2013/12/20/217992.html

「現在も変調が続いていると回答した人は11人おり、生理不順が6人」と書かれています。昨日(4/28)、HPVワクチン訴訟の原告である倉上さんによる「おはなしの会」がありましたが(下記参照)、彼女は接種から13年経った今も、月経不順(過多月経、過少月経、周期の乱れなど)が続いていると言っていました。接種前は、そのような乱れはなかったそうです。この6人は、その後正常に戻ったのでしょうか。


世界日報にも詳しい記事がありました。上記の記事と重なる部分は除いて引用します。

神奈川県鎌倉市で副反応45% 全国初の子宮頸がんワクチン接種者調査 2013/12/12 世界日報 より一部引用

何らかの副反応があった818人(45・6%)のうち、「症状がその日のうちになくなった」「未記入」などの人数を除いた726人が症状が一定期間継続した人たちとなる。
 これから「1週間以内におさまった」と見なせる人数を除いた63人と、「今も症状が続いている」とする11人の74人が、1週間以上、症状が続いてきた人たちと言える。
 GSKのHPでは、重篤な有害事象発現率は同社のワクチン「サーバリックス」で4・2%と述べている。接種者1795人の4・2%は約75人で、鎌倉市の74人と酷似している。
 この問題を同委員会で追及し、松尾崇鎌倉市長を9月同委員会に招き、全接種者調査の実施を約束させた長嶋竜弘市議は、1週間以上、症状が続いている人たちを「重篤な副反応被害者」と判断。
 市の健康福祉担当者が同HPの内容を承知していたとの発言を踏まえ、これだけの発現率があることを承知でワクチン接種を進めてきた点を問題視。
 そのうえで、この結果を県や厚労省に提示し、被害者の具体的調査と必要な救済措置を取るよう訴えた。なお、11人の「現在も症状が続いている」との症状(重複回答あり)では、「生理不順」が最も多く6人だった。
 調査用紙の自由記入欄には、ワクチン接種を肯定する意見が13件ある一方、大半が同ワクチンに懐疑的で「子供たちはモルモットではない。厚労省はもっと安全性を重視してほしい」などの意見があった。

https://vpoint.jp/feature/cervical_cancer/7916.html

名古屋市の調査(下記参照)もそうでしたが、数字だけでなく、自由記入欄にも目を向けるべきだと思います。

上記は2013年の記事ですが、松尾市長と長嶋議員が登場しています。長嶋議員はHPVワクチンのときから、声をあげ続けていたのですね。

2021年の議事録にも、この件について語られている部分がありました。以下、12月6日と17日の議事録から引用します。

2021年12月定例会 第4号12月 6日

調査後のフォローについて

○5番(井上三華子議員) 厚生労働省が僅か2か月で勧奨の中止を決めてから、鎌倉市としての対応はどうだったのかお聞きします。

○田中良一 健康福祉部長  市としましてはHPVワクチンを接種した市民のその後の体調状況を調べるため、平成25年10月にワクチン接種後の体調の変化に関する状況調査を実施いたしました。調査の中で実際に体調不良を訴えた市民16人のうち、連絡を取ることができた13人に対しましては、保健師が電話をかけ、その後の体調状況を確認するなどのフォローを行い、必要に応じて医療機関の受診などについて案内を行いました。

○5番(井上三華子議員)  その後のその方たちの健康状態の変化など把握しているのか、継続してサポートしているのかを教えてください。

○田中良一 健康福祉部長  保健師がフォローいたしました13名に対し、フォローアップからおよそ1年後に当たる平成26年12月に、再度アンケートを実施いたしました。そのうち数名から継続して体調不良を訴える声があり、しばらくの間対応させていただいておりましたけれども保護者からのこれ以上の対応は必要ないとの申出があったため、その後の対応はしておりません。

http://www.streamingsystem-i.jp/minutes/kamakura/viewday.php?id=R031206A

1年後の調査でも「そのうち数名から継続して体調不良を訴える声があり」とありますが、どのような症状だったのか気になります。「これ以上の対応は必要ない」というのは、回復したから必要ないのか、特に何もしてもらえないので意味がないと感じたからだったのか。その人たちが回復したかどうか、市として気にならないのでしょうか。


2021年12月定例会 第6号12月17日

健康福祉部の数字と実態調査のギャップ

○22番(長嶋竜弘議員) 2013年鎌倉市議会9月定例会、観光厚生常任委員会の陳情第20号「子宮頸がん定期健診の推進と、ワクチン接種後の調査を求める」についての陳情審査において、実態調査を求めた私の質疑の答弁で、松尾市長が今日から始めると答弁したことで、全国初の実態調査を鎌倉市が行った。

当時の世界日報の記事には、以下の記載がされている。ワクチン接種後の体調変化に関する状況調査結果によると、全接種者3,060人のうち、回答者は58.7%の1,795人、何らかの副反応があった818人、45.6%のうち、症状がその日のうちになくなった、未記入などの人数を除いた726人が、症状が一定期間継続した人たちとなる。これから一週間以内に収まったと見なせる人数を除いた63人と、今も症状が続いているとする11人の74人が一週間以上症状が続いてきた人たちと言える。

当時、大きく報道されたことにより、その後多くの自治体が調査を行い、同様の比率で被害が広がっている実態が明らかになっていったわけである。
私は事前に被害状況を健康福祉部に確認していたが、副反応が継続している被害者は2名とのことであったので、実態調査とのギャップは非常に大きなことが分かる。行政は、実態を隠そうとしますし、それなりの実態調査を行政側が行わないと本当の実態が分からないということであるが、この事実はほかならぬ鎌倉市での事例であり、その当時を思い出して再び調査を行うべきである。

長嶋議員は、健康福祉部が把握していた数字と実態調査の数字にはギャップがあったと言っています。そうであるなら、厚労省が把握している数字も、現実とはギャップがあったはずです。こういった調査を受けて、国はさらなる追跡調査をして実際の被害を把握して公開するべきではなかったのでしょうか。

厚労省が行った「祖父江班による全国疫学調査」をもとに安全だと言う人も多いですが、この調査だけで安全といえるとは思えません。なぜさらなる調査をしないのでしょうか。メディアによるミスリードの影響も大きいです(下記参照)。

そして、2022年4月から積極的勧奨が再開されました。成分が変わったわけでもなく、さらなる調査が行われたわけでもなく、接種と症状の因果関係がないと証明されたわけでもないのに再開したのです。

国は、接種後の症状に苦しむ人たちの治療法を見つけようともせず、「心因性」だというストーリーまで作り上げました。再開した背景には、WHOの意見と製薬会社からの「警告文書」があったことがわかっています(下記参照)。


26自治体の調査結果を検証した論文

鎌倉市の調査を含めて、26自治体の調査結果を検討した論文がありました。2013年~2017年に26自治体が行った調査の結果をもとに、HPV ワクチン接種後の体調変化について検証しています。2023年5月に公開されていたようですが、メディアは取り上げていなかったと思います。子宮頸がんの予防効果が少しでもあったという論文は大げさに報じるのに(下記参照)、このような検証は埋もれていきます。


やはり、政府が作り上げたストーリーからはみ出すものは、都合が悪いということなのでしょう。

薬剤師の方たちにも、ぜひ読んでいただきたい論文です。

HPVワクチン接種後の体調変化に関する調査について -26自治体のデータから- 公開日 2023-05-09 (論文全文のPDFより)  

以下、考察から一部を引用します。

しかし、有害事象の発現頻度は、違いが見られた。われわれの調査の特徴として、局所的な有害事象が高頻度で発生していることが明らかとなった。
これらの有害事象発現機序は不明であるが、HPV アジュバントとして用いられているアルミニウム化合物が、ワクチンにおいてこれまでのワクチンより多く含まれている点に注目した報告がある 28,29)。われわれの調査でも 3 種類の HPV ワクチンは、他のワクチンと比較してアルミニウム化合物が 2 ~ 5 倍の含有していた 30)。

HPVワクチン接種後の体調変化に関する調査について -26自治体のデータから-  より

これまでの HPV のワクチン被害者の中には、検査値の異常が無いとして複数の医療機関を受診したにもかかわらず、その原因は特定されず、第 10 回審議会 31) の結論をうけ、接種による「心因性反応」との結論に至っている例もある。しかし近年、被害者と健常人との比較において、脳血流量の低下、内分泌機能検査の異常、髄液中の自己抗体の検出などが報告されている 32,33)

HPVワクチン接種後の体調変化に関する調査について -26自治体のデータから- より


これらの事から国や医療機関そして製薬企業が認識している有害事象の頻度と、接種者への直接的アンケート結果に差があることが明らかになった。これは、ワクチン接種とその後に出現した症状との因果関係を証明することが難しく、不明瞭なことが多いことが要因であると思われる。

HPVワクチン接種後の体調変化に関する調査について -26自治体のデータから- より


これまでに、名古屋市調査 38) が発表され、HPV ワクチン接種が重大な有害事象を引き起こすという説を否定している。この調査は、第 69 回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会 37) でも参考にしており、HPV ワクチンの安全性を述べる上で良く引用されている。しかし、この研究に対して 「ワクチン接種で健康になる」というデータや 「健康でない方がワクチン接種をしない」 というセレクションバイアスを軽視しているなどの批判的な報告 39) もある。従って、現時点ではこれらの有害事象と HPV ワクチンとの因果関係については明確に示されておらず、今後新たな安全対策や調査・研究が必要である。この様な状況にも関わらず、審議会は、「定期接種の積極的な勧奨を差し控えている状態を終了させる」ことを了承している。

HPVワクチン接種後の体調変化に関する調査について -26自治体のデータから- より


HPV ワクチンの被害者とその家族は、「副反応による苦しみ」 に加えて、「未だに治療法がわからない苦しみ」、「国や製薬企業がその副作用を認めない苦しみ」、「医療機関や社会の中で、差別や偏見にさらされている」 という四重の苦しみの中にあることをわれわれ薬剤師は、受
け止めなければならない。

HPVワクチン接種後の体調変化に関する調査について -26自治体のデータから-  より

「国や医療機関そして製薬企業が認識している有害事象の頻度と、接種者への直接的アンケート結果に差があることが明らかになった」と書かれています。これは、長嶋議員の発言とも重なります。

26自治体の調査はどれも、積極的勧奨が再開される前のものです。再開された後こそ、実際に起きている健康被害を知るために、このような調査を大々的に行う必要があるのではないでしょうか。


<関連資料>

ヒトパピローマウイルスワクチン接種後の神経症状は,
なぜ心因性疾患と間違われるのか 髙嶋 博

(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 神経病学講座 脳神経内科・老年病学)

厚生労働科学研究費補助金 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業 子宮頸がんワクチン接種後に生じた症状に関する治療法の確立と情報提供についての研究 平成 29 年度 分担研究報告書
子宮頸がんワクチン接種後に生じた症状と病態の解析、治療法の検討
研究分担者 髙嶋 博 鹿児島大学神経内科 教授

「子宮頸がんワクチン接種後に神経障害を発症した患者の病態の本態は自己免疫脳症と末梢での自律神経障害と考えられた」

2019年8月6・7日 第60回日本社会医学会総会
「HPVワクチン接種後の「痙攣」関連症状の発生報告と、接種との因果関係判定の実態:厚生労働省公表の「症例一覧」表のまとめからの考察」 片平洌彦、榎 宏朗(臨床・社会薬学研究所)
日本の医師判断:「関連あり」とした医師が多数

2019年9月15・16日 日本社会薬学会 第38年会
「HPVワクチン接種後の副反応疑い症状と、接種との因果関係の判定の報告実態 (第2報)「記憶障害」の場合」
片平洌彦、榎 宏朗(臨床・社会薬学研究所)
日本の医師判断:「関連あり」が6割