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光明 第10章

第10章
発信

「ねえ、ミランダ、地球温暖化についてどう思う?」と、エミリ。
「うーん、今から約四十億年前地球上に生命体が誕生して以来、あらゆる天変地異を経て、寒冷期(氷河期)、温暖期を繰り返しているの。地磁気も今分かっているだけでも十数回逆転しているのよ。地球環境に大きな影響を及ぼす可能性があるわ。
温暖化のみを考えていては何の解決にもつながらないわ。おそらく地球は温暖期に入ろうとしてるのだと思う。
ただ、今、人類がやっていることは大いに地球環境を悪化させていることは事実ね・・・
私も何とかしようと思っているわ」
「聞いた私が馬鹿だった」
ミランダは「私も何とかしようと思っているわ」と言う。
エミリは、その言葉を笑えなかった。ミランダの眼は本気なのである。

ミランダはインターネット上に驚異的なスピードで発信し始めた。
最初は、老若男女、誰を対象にしているのか判然としないものだったが、一度読むと、どういう訳かすらすらと読むことができ、驚き、感心し、感動し、最後は涙するような内容になっている。
そして、その文章は
「アイ ラブ ユー   ミランダ」で終わる。

それが、やがて読み手を意識したものになる。
男性、女性、さらに、老、若、政治家、学者、医者、軍人、農、工業従事者・・・留まることを知らない。特別にタイトルに、それを掲げているわけではない。読者も、それを微塵も感じることは無いであろう。しかし、それぞれの立場で心にせまってくる衝撃が違うのである。
カチンスキは最初から感ずるところがあり、それを体系的に整理し、いつでも書籍として出版できるよう指示している。中間報告で、既に数千ページになっているらしい。
ミランダは英語で発信しているが、カチンスキは地球上で使用されている言葉のほとんどに翻訳させ発信させた。
こういった思想的なものについては、各国当局の監視対象になり、ネット上から抹消されるのが普通であるが、不思議とそうはならなかった。
時間が経過するにつれ、各国メディアがそろって取り上げ、出版依頼が殺到した。
カチンスキはミランダと話し合い、余計な解説、解釈等々を加えないことを条件に、厳重な契約書を作成し許可した。
独占契約ではないので、各出版社は装丁などを凝らし出版した。
一巻を千ページ程度になるよう設定し、既に十巻を越えている。
何と発売即完売といった有様である。

その内容は、まさに筆舌に尽くしがたい、読む人の魂の琴線にふれ、心が洗われ、いつまでも余韻が残るのである。説教じみたところは微塵もなく、ただひたすら心の内に入って来るというものである。

「奇跡の書」
「未来に向けて人類の大いなる遺産」
「聖書以来の奇跡」・・・
各国メディアの見出しである。
それに歩調を合わせるように、各国政府は、その解釈をめぐって研究機関を設ける・・・


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