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鬼太郎の存在こそが怨念の中の希望『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』【映画レビュー】

★★★★★
鑑賞日:2月3日
劇 場:ミッドランド名古屋空港
監 督:古賀豪
出 演:関俊彦(声優)、木内秀信(声優)


1月に、めでたく再々創刊された雑紙「映画秘宝」の中の「三留まゆみの猫目映画時評」が興味深い劇場映画ルポだった。


●「君たちはどう生きるか」「ほかげ」「ゴジラー1.0」「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」「あの花の咲く丘で、君とまた出会えたら。」「窓ぎわのトットちゃん」この6本の作品は太平洋戦争から敗戦にかけての日本が描かれている。
●戦中・戦後の映画が一つ波を作っている。

それぞれの作品の戦中・戦後の描き方を評論している。

読んでいて以外だったのは、ファミリー向けのアニメ映画だと思っていた「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」「窓ぎわトットちゃん」が高評価だったこと。

「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」が、面白そうだと調べてみると昨年の11月公開、口コミでどんどん観客を増やし現在も公開中である。
すかさず劇場に行き、開演の30分前にチケットを購入しようとしたら、満席でソールドアウト。

「すごいな鬼太郎!」

翌週、ネットで、前日にチケットを買って鑑賞しました。


メチャクチャ面白かったです。

映画製作者達の水木しげるへのリスペクトが伝わります。
昭和31年の話なのですが、水木しげるにとって戦争は昭和31年になっても終わってなかったのだと思います。戦争を終わらせる為に漫画を描き続けた人だと思います。

この作品では、今回のストーリーに、傑作戦記漫画「総員玉砕せよ」という実際にあった生き残り兵士たちに玉砕を無理にやらせたという壮絶なエピソードを重ね合わせて作品の世界観が出来ています。
決して美化しないありのままの戦後日本を描いています。戦後日本の時代背景に妖怪というフィクションの要素がうまく混ざりあい、何か大きなものを感じる特別な映画になってます。

私は昭和35年生まれです。
鬼太郎とほぼ同年代です。
私が子供の頃、大人は戦中派の人達でした。大人の人達は戦争の事をあまり語りませんでしたが、戦争のない今の時代は素晴らしいことを力説しました。

そんなことを思い出させるような懐かしさを感じました。
人間性への絶望に支配されていないのが本作の美点だと思います。

鬼太郎の存在こそが怨念の中の希望だったのです。
子供の声を聴いたら大人はがんばります。


(text by NARDAM)


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