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【能登半島地震】支援で広がる関係性 炊き出し需要、いまだ高く

※文化時報2024年3月8日号の掲載記事です。

 石川県宝達志水町の日蓮宗妙法輪寺(大森教裕住職)が、能登半島地震で被災地支援を希望する人々をコーディネートする拠点となっている。物資の集積を行っていることが周知され、寺院関係者以外ともつながるようになり、被災地のニーズを的確に把握できる要因となった。大森教生副住職は「今後はがれき整理などのマンパワーが必要。断水が続く限り、炊き出しも続けなければならない」と話す。(大橋学修)

 震災から2カ月以上が経過し、物資の需要が低下する一方で、断水地域では炊き出しの需要が依然として高い。2月11日には、被災しながらもお寺を機能させている同県七尾市の妙圀寺で、炊き出しが行えるよう手配した。

 炊き出しを行ったのは、東日本大震災で被災した経験のある舞木勝さんたち。妙圀寺の堂内で、双方の地震の被災者が食事をしながら語り合った。教生副住職は「いいマッチングだった。公的支援の届かない自主避難所を中心に、このような機会を多くつくりたい」と手応えを語る。

 今後は、炊き出しのコーディネートを手掛け、物資の支援は紙皿や紙コップなど、炊き出しで用いる消耗品に切り替える方針だ。

七尾市の妙圀寺で行われた炊き出し=2月11日

 避難所によっては、2週間で5千個の紙皿を消費するという。紙皿の卸売りを手掛ける企業が1万個を寄付してくれたが、それでも避難所1カ所の1カ月分にしかならない。今後は全国日蓮宗青年会が集めた義援金で追加購入することにしている。

行けばつながった

 妙法輪寺が支援拠点となったのは、日蓮宗の地方行政拠点を仮移転することになったためだ。

 石川県内の宗門行政区分は、南部の第1部宗務所管区と北部の第2部宗務所管区に分かれる。今回の地震では、第2部宗務所を置く珠洲市の本住寺が甚大な被害を受けた。

 妙法輪寺は、昨年に堂宇を建て替えたことで、被害が軽微にとどまった。奥能登へのアクセスも良く、教生副住職が第2部宗務所の事務長を務めていることもあり、妙法輪寺に宗務所機能を仮移転し、災害対策の現地拠点とした。

 寺院関係者から支援物資が届くようになると、まずは被災寺院に配送。それが支援の届かない避難所の存在を知るきっかけになった。避難所に物資を搬送し始めると、今度は避難所関係者が会員制交流サイト(SNS)で周知。寺院関係者以外にも活動が知れわたった。県や自治体の集積所に物資を届けるには、物資の数がそろっている必要がある。このため規定数には満たないが、物資を届けたいと考えた人たちの受け皿に、妙法輪寺がなることができた。

 車2台が入る倉庫は天井まで物資で埋まり、さばいてはまた埋まるという毎日だった。

集まった支援物資について説明する妙法輪寺の大森教生副住職

 教生副住職は「とにかく行けば、いろいろな人とつながり、ニーズを聞いた。情報整理のフィルターになって現地の声を拾い、長い期間、支援ができるようにしたい」と語った。

「能登法華」再興の不安

 教生副住職は、被災寺院の復興にも気をもむ。「仲間の僧侶たちはお寺が倒壊して心が折れ、明日の食事を心配し、生きることに懸命だった」と地震発生直後を振り返り、「これからは生活が安定する。そして、お寺の復興を思ったときにもう一度、心が折れるのではないか」と心配する。

 石川県内の日蓮宗寺院は、篤信の信者たちに支えられてきた。

 日蓮聖人の孫弟子・日像上人の門下が教宣を広げ、「能登法華」と呼称されるまでになった。そんな伝統が失われる危機にひんしている。

 教生副住職は「檀信徒が被災し、復興への足掛かりが見いだせない中で、必要とされるのはお金」と断言。「宗門に集まる義援金は1寺の復興にも満たない。これから見えも外聞もなく、全国の檀信徒に支援のお願いをしていきたい」と拳を握りしめた。

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